公開日: 2026/09/28
更新日: 2026/09/30
いまから30年前、二輪販売店として創業したティーズ。当時は主に国産を扱っていたが、新商材として扱い始めたロイヤルエンフィールドが2020年頃にブレイク。現在では同店の屋台骨に成長し、全販売台数の50%を占める。販売車両に関する情報発信はブログとSNS。SNSによる認知→HP・ブログによる検討(信頼)→行動(来店)という流れの構築により、ティーズ独自の販売サークルが機能。これが最大の強みとなった。
前編でメテオ350が若返りの契機になったと書いたが、なぜ、メテオなのか。これには、メテオには新世代エンジンである「Jシリーズエンジン」が搭載されたことが考えられる。それまでの旧設計エンジンを流用せず新構築のエンジンを搭載しているからだという。
東北での正規ディーラーはティーズのみであることは前述したが、これには地理的な要因が関係していた。東北地方の多くは11月~3月ぐらいまでは、積雪のためバイクには乗れない。だが仙台の場合、市内であれば、薄っすらと積もることはあっても、かろうじて乗れるという。つまり、年間を通じて乗れる時期は7か月ほど。その限られたなかで、全モデルを展示して試乗車も用意し・・・というのは、コスト面でもハードルが高い。そうした状況を総合的に判断し、ティーズの一本化が決まったというわけだ。
認知度を高める手法は出張展示会。これは積極的に開催している。そこで存在を知り車両を気に入ったユーザーが協力店に足を運ぶ、という流れだ。では、それ以外の認知手段は何か。SNSの活用だ。
「今年の9月でブログを開設から丸10年が経過するんです。しかも10年間、一度も欠かしたことはない。記事は4000本近く書いてます。コロナに罹っても書きました。お酒の場でも、『ちょっとゴメン』と言って書いて、『さあ、飲もう』みたいな(笑)。SNSも活用してますが、ブログに拘るのは“流れて”いかないから。おそらくウチは仙台市内では一番早くHPを立ち上げましたが、SNSを見て最初にたどり着くのはネット上の店舗だからです」
これは、情報の検索性の高さ(ストック性)と蓄積されるデータの価値を示している。YouTubeやインスタはフロー型メディアと呼ばれ、タイムラインやおすすめに流れてくるのは、基本的に最近、投稿されたもの。そのため、例えば1年前の投稿を探すためにはスクロールし続けなければならないため面倒だ。
一方のブログはストック型メディアと呼ばれるもの。検索エンジンに強く、古い記事であってもすぐにヒットするのが強み。ショップ内の検索も簡単。ブログ内検索を使えば、過去記事へのアクセスも容易だ。髙橋社長はココに意義を見い出している。
「ウチのブログは蓄積型財産だと思っています。考え方としては、SNSで呼び込みHP(ブログ)で受け、実店舗に誘導する。この流れです。気を付けなければならないのは、呼び込んだ先(店舗)での商品の充実です。Web店舗と実店舗がしっかりしていれば、お客さんは来てくれます。必要なのは“動き”ですね」
投稿する内容は、明確に区分している。内容は8割がバイクネタで2割はプライベート関連の情報だという。ポイントはこの2割。これがあることで経営者の顔や個性が見えるようになり、それがユーザーにとっての親近感となるのだろう。プライベート情報の内容は、クラフトビール好き、とのことからアルコール関連の話やおいしい蕎麦屋の情報などを投稿することが多い。この8対2の比率が現時点ではベストなのだという。
面白い話がある。ティーズで取り扱うベンダのナポレオンボブとモルビデリのC252Vが入荷した時のこと。髙橋社長がデザイン面で衝撃を受けたのは、初めて見た時から前者だったため、7対3の割合でナポレオンを多く仕入れた。だが、実際は購入者の8割がC252Vを選んだ。
「予想外の結果でした。お客さんはみんな、ナポレオンボブを見て異口同音に『カッコいい』と言います。マルチリンク式の独特なフロント構造もインパクトがある。けれども積載性の低さやタンデム走行ができないなど実用性に欠けるところが引っ掛かる様子。やっぱり普通のバイクが売れるんです。そこで考えたのが、展示会では試乗車はC252Vに限定し、ナポレオンは展示のみで期待感をあおり店に誘導する、といったやり方。状況を見ながらスタッフとニーズに合わせた施策を考えています」
ここでのポイントは、ユーザーの反応を見て情報発信の仕方を変えていく、ということなのだろう。用品についても様々な試行がある。いまはヘルメットも実店舗ではなくネットで購入するケースが多い。そこで店でフィッティングサービスを行い、それをフックに購買に結び付けている。また、エンフィールドのカタログに掲載されているヘルメットと同じものを試乗会に持ち込み、車両と一緒に購入すると10%引き、とすると、ほぼ確実に売れる。「売れない」で断念するのではなく、角度を変えて見るだけで状況は大きく変わることの好例と言える。
いま、高橋社長は新たな展開を検討している。それは、メンテナンスを中心としたビジネスだ。
「高齢化や人材不足とは全く逆の発想です。この先、確実に二輪販売店は減少します。けれども保有台数は大きくは減っていない。ネット通販による流通はかなり盛んですが、そこで購入したユーザーの受け皿がない。二輪業界は整備士が不足しているという現実問題もあるし、自店のユーザーを犠牲にしてまで受け入れるのは難しいことは十分に理解できます。ただ、難しいからこそ、そこに大きなビジネスチャンスがある、そう考えています」
実際、ハードルは高いが、その分、メリットは大きい。車両販売が目的ではないため、展示スペースや車両の仕入れにかかる資金は不要。運転資金を抑えられるので、いわゆるスモールスタートが可能となる。工賃についても大幅な見直しができるのだ。
メリットは車両販売による粗利を元に整備工賃を低く抑える、といった従来のやり方ではなく、稼働時から整備スキルと作業工賃に正当なサービス対価を設定するという、従来にはないアプローチが狙えること。デメリット(リスク)としては、よくありがちな、連鎖的に不具合が表面化するケース。見て貰った後、調子が悪くなった、というものだ。トラブルリスクの最たるものと言える。これを防ぐためには、事前チェックの金額設定や、ターゲット車両の設定、免責事項を明確化し誓約書を取り交わすことが必要。
あとは先にも述べたがスタッフの確保。最重要ポイントの一つである。整備士の人数と技術力がダイレクトに売上上限に繋がるからだ。ティーズには、この問題について一日の長がある。従業員の定着率の高さだ。現在、販売・サービスに携わるスタッフは高橋社長を含め8名おり、最も社歴の長いスタッフで30年超。他のスタッフも20年を超える。しかも全員、持ち家。これは従業員の満足度の高さの表れである。人材的にはかなり恵まれている。加えてマネージャーの佐藤健一さんは、ヤマハ世界整備士コンテストの日本代表に選ばれた経歴を持つ。また、ロイヤルエンフィールドのスキルコンテスト日本大会でも優勝を果たし、2025年には世界大会にも出場している。
こうしたスペシャリストが在籍している事実からしても、ティーズの整備レベルは群を抜いていることは、容易に想像できる。高いハードルは競合の参入障壁となる。つまり、誰もが実現できるものではないからこそ、そこには高橋社長の言う、大きなビジネスチャンスがあるのだ。
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