公開日: 2024/10/28
更新日: 2024/11/11
日本自動車工業会(自工会)は9月19日、日本自動車会館で定例記者会見を開催した。自工会からは片山正則会長をはじめとする6名の正副会長が出席。型式指定申請で発生した不正行為において、各社の具体的改善事例を共有したこと、中長期視点で見た場合、EVシフトに変化はないことなどについて報告した。
最初に片山会長が挨拶。自工会では、カーボンニュートラルの実現に向けMaaSやCASEなど、モビリティ産業の変革に向けた課題に取り組んできた、と経緯について説明。続けて「自動車産業を取り巻く環境が激変し、厳しさを増しているが、今後も自動車およびモビリティ産業が基幹産業として日本経済に貢献するため、向こう2年程度を目途に『7つの課題』を抽出した」と語り、正副会長自らが、各テーマのリーダーとなり課題解決に向けた検討を進めていることを明らかにした。また、片山会長は足元で抱える課題についても触れた。
1つは、型式指定申請。今年1月、国交省による会員企業への実態調査の結果、複数の会員企業で不正行為が発覚した。全てのユーザーの安全・安心にかかわる自動車製造の根幹の問題として、自工会として非常に重く受け止めている、とした。
また、各社の個別状況を踏まえ、業界全体で再発防止に取り組むため、会員企業全14社から「経営」「風土づくり」「技術的」などの広範囲な観点から再発防止・未然防止策として243項目の提出がなされたことを説明。これら具体的対策を各社で共有し、自社の取り組みに資するものを参照し再発防止に向けた取り組みを確実かつ強固なものとすることを発表した。これについて片山会長は、次のように説明する。
「今回の件を正し、反省するとともに、次にどう活かすかを考えることが重要。自動車産業全体のポジティブなエネルギーに変えていくためにも、当局にアドバイスを仰ぎつつ、各社トップ同士で議論を継続的に重ねることで、業界全体としての取り組み強化に活かしていく」
続いて、適正取引。自工会では、公正取引委員会からの勧告・要請を踏まえ、下請け取引について緊急点検を実施。その結果、取引先の不利益等、一部改善が必要な案件が確認された。これを受け、すぐに回復措置をとったうえで公正取引委員会・中小企業庁に報告を行ったことを明らかにした。
労務費等のコスト増加分の価格転嫁については、取引先との協議状況を点検。その結果、自工会では、取引先との「明示的な協議」のあるべき姿を踏み込んで定義付け、積極的に取り組んでいる、とした。「各社の調達・購買部門以外の取引も含め、まだ一部充分にできていない」 といった回答もあるという。これについては、今月の価格交渉促進月間において「取引先に交渉の意志を示すレターを自ら発信すること」や「発信だけでなく能動的に問題点をヒアリングすること」 など、あるべき姿に沿って取り組みを強化していくことを発表した。
続いて、JAPAN MOBILITY SHOWの開催についても発表。片山会長は、
「次世代を担うスタートアップ企業とモビリティ関連企業が集い、新たなビジネス共創を生み出す場は毎年開催する。今年は「JAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK2024」の名称で、「共創プラットフォーム」のアップデートにつながる、ビジネスに特化したイベントを開催する」と表明。
また、今回の取り組みは、3本の柱に焦点を置いている、とし、以下の3つを挙げた。
❶スタートアップや事業会社などの技術やサービスを紹介するブース出展
❷スタートアップと事業会社とのマッチングプログラム
❸モビリティ社会の将来に向けた情報発信
今回はビジネスショーであるため、自社課題の解決を目指す事業会社の方々や新たな技術やサービスのアイディアを持つスタートアップ関係者、未来のモビリティ社会や技術革新に興味のある人をターゲットとしていることを明らかにした。
Q. 型式指定申請の件、業界としての再発防止の具体策は何か。
A. 信頼回復に全力で取り組んでいる。自工会としては個社の案件を分け、業界としての、個社の再発防止に役立つことを行っていく。そのためには、個社の企業トップがこの問題について話し合っていくことが大切。すでに7月30日に臨時理事会を開催した。各社の改善事例を具体的なものを共有しようとなりこれが243項目。個性的なものもある。自工会としても、横断的な活動が必要だということを認識している。
Q. EVシフトについて、国内では経済安全保障推進法で政府から自動車メーカー各社に補助事業が続々と決まるなど、基盤づくりが進んでいる。一方で欧州メーカーではEVシフトの軌道修正や大統領選挙にまつわるEVの様々な報道がある。日本メーカーの軌道修正も報じられているが、これについてはどうか。
A. グローバルな視点では、EVの販売が鈍化しているのは認識している。元々、中長期的な観点では、浮き沈みがあるなかで電動化、カーボンニュートラルに向けた取り組みが進んでいくという認識でいる。その要因としては、各国の補助金の影響もある。だが、それは一時的なもの。中長期的には変わらないと思う。自工会としてはマルチパスウェイで2050年のカーボンニュートラル達成に向け進む。自工会のスタンスは変わらない。
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