コラム

「いちご農園」を地方銀行が運営開始。新事業の展開により地域経済の活性化を目指す

公開日: 2025/02/28

更新日: 2025/03/06

「銀行」と聞いてイメージするものは何か。おそらく多くの人が3大業務と呼ばれる「預金」「融資」「為替」を思い浮かべるものと思われる。銀行は都市銀、地銀、ネット銀行の3つに分類されるが、最近、地銀においてある変化が表れている。3大業務以外の事業を展開する銀行が増加しているのだ。

例えば、千葉銀行は千葉発の新商材の魅力発信を目的に、子会社を設立し購入型クラウドファンディングを展開。また、静岡銀行は県の事業者とスタートアップ企業の共創の場として、静岡県と協力し大規模テックイベントを運営するなど、様々な事業を展開している。今回は、新たに農園運営を開始した千葉興業銀行(以下、ちば興銀)について紹介する。

ちば興銀が100%出資する地域商社「ちばくる」は1月17日、千葉県千葉市に観光農園「ちばくるファーム」を開設した。農業は全く未経験の同行が始めた観光農園事業ではあるが、いちごは比較的栽培がしやすく、新規参入のハードルが低いことから選択。3月には一般向けに、いちご狩りイベントの開催を予定している。ちば興銀では今後、県内ではまだ珍しい通年収穫の実現を目指す、としている。

ちば興銀が農園の運営を始めた背景には、進み続ける人口減少社会への危機感がある。同行はもともと、地元中小企業への融資をベースに地域経済と共に成長してきたが、年々続く人口減少により、その規模は縮小。融資以外の事業を展開する必要性が高まっていた。そこで、本業ではない、企業に対するコンサルティング事業を強化。農園運営で得たノウハウを共有し、農業分野に新規参入したい企業をサポートすることで地域経済を盛り上げ、自社の利益にもつなげていく。

地方の人口減少解決。地域経済活性化がカギに

人口減少は千葉県だけでなく日本全体の問題だ。総務省統計局の統計データによると、2024年8月時点の総人口は1億2388万7000人と、前年同月と比べると55万2000人減少。また、15歳未満の人口は1389万5000人と55万2000人減少しているのに対し、75歳以上の人口は2066万4000人と69万4000人増加しており、少子高齢化による労働者不足が懸念されている。

首都と地方との人口の偏りは著しい。2023年10月時点の都道府県別人口データでは、東京都のみ0.34%人口が増加し、他46道府県は減少している。また、そのうち38道府県の減少率は拡大しており、格差が生じている。

地方では人口減少が進むことにより、金融機関や病院などの生活関連サービスの撤退が増加し、問題となっている。地域の働き手が減少した場合、企業のサービスは低下し、事業も縮小。そうなれば、雇用機会は減少し、さらに人が離れるという負のスパイラルが完成してしまう。この悪循環から抜け出すためにも、地域経済を活性化するための対策が必要となる。

この問題を乗り越えるべく現在、全国の地銀では地元中小企業や自治体などと協力した様々な事業を展開し、地域活性化を目指している。地方と共に成長していくことが、企業経営にとってカギとなるのだ。これは地銀だけでなく、地方自治体や他企業にも同じことが言える。地域おこしといった地域の魅力を発信する企画の運営や、他企業を支える事業などを展開していくことが、長期的な企業の発展につながっていくだろう。

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