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どうする? 10万台の小型二輪車が今年、初めての車検

公開日: 2025/04/14

更新日: 2025/04/17

パーソナルな乗り物として大きく注目されたバイク。2022年には、小型二輪車の新車販売台数は10万0889台と10万台を突破した。その10万台のバイクが今年、車検を迎える。

2021年から小型二輪車の新車販売台数が急増。2022年には10万台を突破

2021年から小型二輪車の新車販売台数が急増。2022年には10万台を突破
2021年から小型二輪車の新車販売台数が急増。2022年には10万台を突破

一人でも楽しめるパーソナルモビリティとして脚光を浴び、存在認知が格段に高まったバイク。それは数字を見ても明らか。2022年には250cc以上の新車販売台数が10万0889台と大台を超えた。グラフ1は、21世紀になってからの小型二輪車新車販売台数の推移をまとめたものだが、それを見ても2021年から棒グラフが著しく伸びているのが分かる。

2001年から2008年までは7〜8万台あたりで推移していたが、2009年には前年から1万4000台強落ち込み、6万3763台となった。2008年は世界的な金融不安『リーマンショック』が起きた年。その影響が2009年に出たものと思われる。それ以降、2020年まで7万台以上を販売したのは2014年の7万0151台の一度だけ。ほかの年はだいたい6万台規模の推移だが2010年、2011年には5万台ラインまで低下。中でも、2011年は5万3362台と、2001年以降で一番低い台数となっている。

そこからは一進一退を繰り返してはいるが、回復基調というには程遠く、ほぼ横ばいでの推移が続いていた。

変化が現れたのは2021年。コロナ禍が理由であるのは論を俟たない。『三密』が避けられる乗り物としてバイクが注目され、バイクにテントなどを積み込んで出かけるソロキャンプも人気となった。

免許取得者数も増え、2020年頃からしばらくは、自動車教習所に入校することさえ数か月待ちという状態になっていた。また、当時、取材をした販売店からは、「2020年の8月に単月での販売台数が創業以来、過去最高を記録した」「202 年の夏は記録的に売れた」などといった声も聞かれた。同様の声は他にも複数あった。

グラフ1を見れば分かるが、2022年の10万0889台という数字は、現在までのところ21世紀の最高記録だ。コロナ禍前の2019年と比較すると3万4433台増加、実に、1.5倍強の数字となっている。そして、その10万台の車両が今年、初めての車検を迎えることになる。

ちなみに、1年間における小型二輪車の新車販売台数が10万台を超えていた年を見つけるとなると、グラフにはなっていないが1998年まで遡らなければならない。同年、10万4744台となっており、それ以来となる10万台超という販売台数なのだ。

余談だが、1998年というと、初代のヤマハ『YZF-R1』が登場した年。1999年にはスズキ『HAYABUSA(当時は、GSX1300R HAYABUSA)』が新登場。長らく親しまれているこれらの車種が新登場したというだけでも、1998年という年がいかに過去のことなのかが分かるというもの。同時に、当時と同じような台数を販売したコロナ禍におけるバイク人気の高さも、うかがい知ることができる。

車検台数が増加傾向にある中、対策しないままだと他店にユーザーが流れる可能性も

車検台数が増加傾向にある中、対策しないままだと他店にユーザーが流れる可能性も
車検台数が増加傾向にある中、対策しないままだと他店にユーザーが流れる可能性も

これは新車に限った話ではないのだが、ここ数年、販売店取材のなかで度々耳にするのは「近くの店が廃業した」というもの。だが、販売店が廃業しても、そこに来ていたユーザーも一緒にいなくなるわけではない。

さらには、通販利用者の増加によって、「遠方の店で車両を購入し、メンテナンスは近くの店に依頼する」という人も年々増加傾向にある。それだけではない。何年も乗らずに放置して動かなくなっていたバイクを、コロナ禍をキッカケに修理して乗るようになったというユーザーも少なくない。

こうした、行き場を失くしたユーザー、行き場の無いユーザーが修理・点検・メンテナンス・車検などで大挙して店を訪れるようになり、オイル交換だけでも予約は不可欠。一週間後にようやく交換という状況もごく普通の光景だった。なかには修理の依頼がいくつも舞い込み、納車まで数か月待ちの状況となってしまったため、新たな修理の依頼を一時的にストップしていた店も少なくはなかった。そのような状況に加え、先ほど触れたようにコロナ禍でのバイクブームにより2022年に10万台以上も250cc以上の新車が売れて、それが車検で入庫してくる‥‥。

当然のことながら、車検は新車を購入して3年目に受けて終わりではない。そこから2年ごとに車検となる。今年で言えば、2022年の新車のほか、2020の新車、2018年の新車…なども車検を迎える。これは、販売店同士が競合する中で車検車両をどう獲得していくかという他店との差別化に関わることではなく、車検台数の純粋な増加に対するキャパシティの問題。車検を、ユーザーを店に引き込むひとつのチャンスと捉えるならば、チャンスは確実にあるのだ。

店によって入庫状況はさまざまだろうが、2021年からの4年間は今世紀で最も小型二輪車が売れた時期。2021年が8万3571台、2022年が10万0889台、2023年が9万1089台、2024年が8万8001台。2021年や2022年のように前年から1万数千台ずつ増えていくという状態ではなくなり、2023年以降からは販売台数が減少しているものの、それでも2019年以前と比較すると、決して悪い数字ではない。そのことからも、車検台数の増加傾向は今後も続くものと思われる。こうした状況下、何も対策を打たないままだとやがてはどこかで行き詰まる、ということが起きかねない。せっかくユーザーが来てくれても車検やメンテナンスを断ってしまうと、ユーザーは他店に流れてしまうだろう。そして、一度離れてしまったユーザーがまた店に戻ってきてくれる保証はない。

では、どのような対策が考えられるのか。単純に人を増やせばいいという問題ではない。需要の増加が見込まれるうちはそれでもいいが、ブームが落ち着きを見せたあと、今度は人が余ってしまう。需要増加を見越しながらも、先のことを考えると入庫の促進も図っていく必要がある。

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