公開日: 2022/11/29
更新日: 2022/12/01
2022年も残すところ12月だけとなった。国民の日常がコロナ禍に”支配”され始めたのは2020年春。あれからもうすぐ丸3年が経とうとしている。
この3年間で、世の中は大きく変わった。緊急事態宣言の発出、イベントや学校行事の相次ぐ中止や延期、オンラインでのイベント開催や、仕事ではテレワークの導入が一気に進んだ。ようやく今年からイベントのリアル開催が増えてきたが、今も街にはマスクを着用した人が溢れ、まだまだコロナ禍の出口は見えない。
二輪業界も、この3年間で変化があった。密にならない乗り物として注目され、免許取得者数や販売台数が増加。もちろん、コロナ禍だけがキッカケではなく、様々な要素が重なった結果だが、右肩下がり傾向からの回復を見せている。
これら二輪市場の現況を日本自動車工業会(自工会)がデータとしてまとめ、その内容を元に議論を行ったのが『第3回 自工会 二輪車委員会 メディアミーティング(以下、メディアミーティング)』である。
10月26日に、東京都港区の日本自動車会館でメディア関係者を招いて開催された。自工会からは、副会長兼二輪車委員会委員長の日髙祥博氏(ヤマハ発動機株式会社・代表取締役社長)のほか、二輪車委員会・二輪車企画部会の川瀬信昭氏、二輪車委員会・二輪車企画部会委員・普及広報タスクフォースの大野匠氏、総合政策委員会・調査部会・二輪車分科会の徳江潤氏、二輪車委員会・二輪車企画部会・二輪車利用環境分科会の小久保慎一氏など、二輪車委員会のメンバーが出席した。
このミーティングでは、市場の現況のほか、ユーザー特性の変化や二輪業界の課題についても報告がなされたが、その中からいくつかピックアップし紹介していく。
まず、二輪車免許。グラフ1は、2015年からの『新規免許取得者推移』。この7年間では2018年の32万2995人が底で、2019年から上向きになり、2021年は38万1974人と、前年から一気に3万5211人も取得者数が増えている。普通二輪免許の取得者数は20万人を超え、大型二輪免許も9万人を超えた。いずれも、2015年以降では最高値となる。
2020年から2021年で新規免許取得者数が3万5211人増えたうち、約7割の2万4781人が普通二輪免許の取得者。その内訳を示しているのが、表1の『普通二輪免許・取得免許の種類』(二輪車新聞記事集計値)である。原付二種クラスの人気が高まっていることから、小型限定免許の取得者が3万4843人。2015年から毎年、新規取得者数が伸びてきており、2021年に3万人を突破した。2015年と比較すると、1万5829人も増えている。
原付二種クラスは日常の足やビジネスで使われることが多いというイメージがあるが、最近は、少し傾向が変わりつつある。ネットの動画共有サイトでは、ハンターカブやクロスカブでキャンプを楽しむ動画をたびたび見かけるようになった。ネットだけではなく、街やツーリングスポットの状況を見ても、趣味としての利用が以前よりも明らかに増えているという実感がある。
また、ネットでは、『バイク女子』というキーワードを頻繁に目にするようになり、20~30代と思われる女性ユーザーの姿を見ることも珍しくなくなったが、それもグラフ2の『年齢別免許取得者数及び女性比率の推移』を見ると納得だ。
例えば、2021年における20代の普通二輪免許取得者数は10万人強、大型二輪免許取得者数は3万人強となっており、そのうちの約16%が女性。大型二輪免許取得者数と普通二輪免許取得者数を足した女性比率では30代、40代もほぼ同じ割合。50代の女性比率も大きく伸びているが、12%に届かない。20~40代はもともとの取得者数が多く、特に普通二輪免許取得者において、20代は他の年代と比べて飛び抜けて高い。
さらに、グラフ2の大型と普通二輪免許取得者の女性比率で20代を見ると、2015年は12%を切っていた。つまり7年間で4ポイントも上昇している。そこまで伸びているのは20代だけである。このことから考えても、ここ最近、若い女性ユーザーを見ることが珍しくなくなったという印象は、間違いではないだろう。女性も積極的にバイクを楽しむ時代になった、ということなのだ。
メディアミーティングにおいて、最も興味深かった項目は、ユーザー特性の変化を分析した『今バイクが好調な理由~なぜ若者や女性に人気なのか~』だ。 1970年代後半から現在までを12世代に分けた年表で解説していたが、過去の主役は『バイク』。だが、今の主役は『ライフスタイル』。個人個人が好きな趣味を楽しむ中で、バイクが受け入れられている。それを自工会では『ライフスタイルギアブーム』と定義。バイクはライフスタイルを豊かにするためのツールの一つ、というわけだ。
ここ数年、人気が高まっているキャンプで例えるなら、「バイクを買ったから、ソロキャンプを楽しもう」というのが過去のバイクのポジション。ところが今は、「ソロキャンプがしたい。ソロだから移動手段はバイクにしよう」。つまり『今まで』と『今』は逆なのだ。
そして、コロナ禍以外の要素として、一つには「SNSの台頭」が挙げられる。ネットが当たり前の現在、Facebook やYouTube、Twitter やLINE、Instagram、そしてTikTok など、いまは多様なSNSがある。
かつて情報は発信者からの一方通行だったが、SNSの台頭によって、情報の流れも変わった。いまは誰もが情報発信者になれる時代。そして誰もがその情報をキャッチできる。また、情報に対して返信やコメントすることも可能で、双方向で情報が流れるようにもなった。
ミーティングのデータでは、二輪市場は上向きであることが分かる。だが、それは今までのこと。この先に関しては未知数だ。コロナ禍はまだ続いているが、モーターサイクルショーが3年ぶりに開催されるなど、徐々にだが、二輪業界に限らず、できることが増えてきている。
コロナ禍でできなかったことができるようになってくると、バイクに向いていた目がほかにも向くようになる。実際、販売店からは「お金の使い方がコロナ前に戻った」という声も聞いている。
コロナ禍が始まって、もうすぐ丸3年と書いたが、バイクは1~2年ですぐに乗り換えるようなものではない。そろそろ需要が一巡した頃なのではないだろうか。そうなった時、ユーザーに乗り続けてもらうためには、バイクの楽しさ・便利さなどを情報発信できるかどうかが大切になってくる。その際、求められるのは、女性目線を意識すること、そして、いまの“主役”はユーザーのライフスタイルだということ。バイクで何ができるかではなく、バイクがあるとライフスタイルがいかに豊かになるかなのだ。
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