公開日: 2023/04/24
更新日: 2023/05/01
任期満了を待たずに自工会会長を辞任することを表明していた豊田会長が一転、続投を決めた。自工会運営体制の改革がポイントとなり慰留要請を受け入れた。世界的にも高い知名度をもつ同氏の存在感は大きく、現状での交代は日本経済に取っても損失である、との思いが明らかになった。
日本自動車工業会は3月23日、自工会は記者会見を開催。そのなかで2023年度の新体制について発表し、豊田章男会長の1年間の続投を明らかにした。
豊田会長は今年1月、トヨタの社長職を辞した。同じタイミングで任期満了を待たずに自工会会長職も辞する意思を固め、それを伝えていた。これは、自工会の会長・副会長は各社とも現役社長に限る、という規定に基づくもの。だが、理事全員からの強い慰留とともに副会長がさらにバックアップを強化する決意を表明。これにより残り1年の任期を全うすることを決意した。
今回の人事で佐藤恒治氏(トヨタ自動車次期社長)が4月より副会長に加わる人事も発表された。一連の経緯についてコメントを一部抜粋し紹介する。
豊田会長のリーダーシップのもと自工会を運営してきた。新年度からは持続的な成長を可能とする体制構築を目指し、全ての課題において副会長が中心となり運営していく。
●運営体制の改革について
本年1月に豊田会長が会長職の辞意を表明されて以降、2つの課題について、理事全員で議論を重ねてきた。「後継問題」と今回の豊田会長の辞意表明から見えてきた「自工会運営の問題点とその対策」だ。豊田会長の辞意に対し、慰留を求める以上、我々副会長が自工会の運営に対して、今まで以上の覚悟を持ち、一丸となった運営体制が必要との結論にも至った。これが、「自工会運営改革」に繋がっている。そして、副会長が中心となり「自工会運営改革」に関しての精力的な話し合いを進め、昨日、豊田会長に、
①会長続投のお願い
②自工会運営改革の方針
の2点に関して、全副会長から正式に報告を行い、結果、豊田会長より留任の承諾を得た。自工会運営改革に関しては、正副会長で議論を深め、重点テーマは副会長が担当としてリードするなど、正副会長が一丸となり課題に取り組む体制とする。持続可能な「進化する自工会」作りに邁進する覚悟だ。
今日の自動車産業を取り巻く環境は100年に1度の大変革の時代。特にカーボンニュートラルの動向は多様に変化しており、多様な選択肢・技術的中立性など四輪・二輪を問わず、モビリティ全体として、見直しや軌道修正が求められている。変革の時代に、常に変化を求められる、これに自工会も対応していかなければならない。2020年の自工会変革後、着実に課題解決型に進化した一方で、会長に過度な負担が集中していた。これでは誰が会長になっても持続性が厳しいと感じた。ただ、このタイミングで体制見直しができるのはむしろチャンス。それを逃さないためにも、変化を恐れず、この新体制で役割を分担しながら、オールJAMAでこの難局を乗り越えていく。
自工会の活動に初めて参画したのは2010年。その翌年には、東日本大震災が発生し、自動車産業は壊滅的な打撃を受けた。それ以降、自工会の組織改革や現在のフルラインアップの副会長体制など、会長が変わったとしても、「日本のため、未来のため、550万人の仲間と共に動く自工会」というブレない軸が作れたのではないかと思っている。私が続投を決めたのは、正副会長が一丸となって「チームで課題に取り組んでいく体制を作ろう」という具体的な提案をいただいたからだ。東日本大震災では、「自動車はみんなで一緒にやる産業」「どこか一社が欠けても車は作れない、バイクは作れない、大型車は作れない、軽自動車は作れない」「日本の自動車産業は世界に必要とされている」ということを実感した。この経験が私自身の自工会活動のブレない軸になってきた。
私は、就任の挨拶で2つの気概を持って自工会に取り組むことを約束した。「国内の自動車産業を守り抜く気概」と、「世界の自動車産業をリードする気概」だ。そして、そのために競争と協調を何よりも大切にしたい、と伝えた。この気持ちはさらに強くなっている。1年間の続投をお許しいただきたい。
業界連携の重要性を肌で感じた
副会長 佐藤恒治氏(トヨタ自動車 代表取締役社長)
4月から、副会長を拝命した。いま、カーボンニュートラルの実現やモビリティ社会の発展に向けて、自動車産業が一丸となった取り組みが重要視されている。私自身、これまで特にモータースポーツを通じて業界連携の重要性を肌で感じてきた。今後、自工会の場でも会員各社の「心」と「力」を合わせ、 未来への挑戦を加速していきたい。
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