コラム

民間企業初の販売目指す、木材から作られる「木のお酒」。新たな間伐材の活用方法の一つとして注目

公開日: 2026/06/04

更新日: 2026/06/11

ビールやウイスキー、ワインや日本酒、焼酎など、お酒には色々な種類がある。その歴史は古く、紀元前4000年頃にはワインが醸造されていたとの記録が残っている。原材料は麦芽や大麦、果実や米など様々だが、中にはなんと、木材から作られた「木のお酒」が存在するのだ。

木のお酒とは、従来の木で香り付けしたお酒とは異なる、文字通り「木」そのものを原材料に製造されるお酒。2017年に森林総合研究所によって世界で初めて試験製造が行われた。木の種類や樹齢、育った土地によって酒の風味や味は異なるという。ウイスキーボトル1本分に必要な木材は約2kg。これは、樹齢50~60年の杉を使用した場合、150本以上を生産できる計算である。

製造工程は、まず使用する木材を2cm程度のチップに加工し、砂粒ほどの大きさになるまで衝突粉砕機で細かく砕いていく。次に天然水を加え、特殊なミキサーでペースト状にすりつぶし、木の主成分であるセルロースを取り出す。これに酵素を加えてブドウ糖に分解。さらに、酵母を添加することでアルコールへと発酵させる。最後に、香りを抽出するために蒸留することで、アルコール度数の高い木のお酒が完成するのだ。

国土の7割が森林の日本、間伐材の利用促進に期待

木材から作られるお酒は、間伐材の利用促進に繋がるとして期待されている。日本は「森林大国」と呼ばれるように、国土の7割近くを森林が占めている。2026年に林野庁が公開したデータによると、OECD加盟国の森林率において、フィンランド、スウェーデンに続き第3位となっており、世界的に見ても豊かな森林資源を保有しているといえるだろう。

こうした国内の木々を保護するためには、不要な木を伐採する「間伐作業」が必要不可欠とされている。過密状態の木々の一部を取り除くことで、林内に光が差し込み、残された木だけでなく土壌の植物の成長を促すことも可能だ。これにより、木材としての価値が高まるとともに、災害の多い日本で風害や土砂崩れなどに強い土壌を育てることができるのだ。

間伐作業で出た木材はこれまで、国や企業で活用方法が模索されており、今回の木のお酒はその一つとして注目を集めている。また、木の新たな魅力として、林業そのものへの関心が高まる可能性も秘めており、年々減少傾向にある林業従事者の人口増加にも期待できるだろう。

木のお酒は、すでに自治体の施策の一つとして販売が始まっており、民間企業による製品化は現在、進行段階にある。森林総合研究所と日本の蒸留ベンチャー企業が共同で立ち上げたプロジェクト「Wood Spirits」は、世界初となる民間事業者による製品化・販売を目指しており、2025年には大阪・関西万博で製造工程の紹介や香りを体験できるブースを出展。2026年夏には試作を開始し、早ければ年内に試験販売を行うという。木のお酒が一般的に広まることが、人々の森林に対する意識を変える一助となることは間違いないだろう。

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