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中型ギア付バイクへの乗車が脳と心を最も活性化。二輪車委員会で研究結果をアプローチ材料として検討

公開日: 2023/03/01

更新日: 2023/03/01

メディアミーティングは自工会二輪車委員会が二輪メディア、一般メディアを招き定期的に開催するもの。今回で4回目の開催となる。テーマは「2030ロードマップ『快適・楽しさの訴求』に向けた情報発信の在り方 ~自工会が目指す既存・潜在・社会全般への取り組み」。

まず、「情報発信改革」の説明から入り、自工会ウェブサイト「MOTOINFO活動」の紹介、そして東北大学の川島隆太教授が2011年に提唱した「バイクに乗ると “脳”が活性化する」について講演が行われ。その後、メディアとの意見交換へと移った。

二輪車委員会・日髙祥博委員長
二輪車委員会・日髙祥博委員長

自工会はかつて、「Motorcycle Information」という紙媒体を定期発行していたが、情報伝達の多様化や伝達速度の高速化を踏まえ、「MOTOINFO」を開設した。自工会の川瀬信昭さんは、同メディアと「二輪車産業政策ロードマップ2030」について次のように語る。


「MOTOINFOには年間70件の記事を掲載している。二輪ユーザー以外にも社会全般に向けた情報発信を行い、記事を通して二輪への興味・関心を掘り起こし、記事内容の検討を重ねている。さらなる充実を図っていく。二輪車産業政策ロードマップ2030』の政策課題の一つである『快適・楽しさへの訴求』のゴールイメージについては、ロードマップを作成した2021年当時、二輪車への好感度を調査した結果は21%。この好感度を2030年までに30%まで高めていこうという目標を掲げた。けれども、それは自工会だけの力で達成できるものではない。二輪誌や一般誌の皆様からも、世の中に向けて、二輪の利便性や魅力を発信していただくことで実現できるものと考えている」


続いて、「MOTOINFO」の編集を担当するスタートライン株式会社の松本泰介さんが、コンテンツについて説明した。その内容について、いくつか抜粋してみる。

まず、サイトのPVは上期で8万PV。女性比率が3%お度増加し、5人に1人が女性読者だという。何かに挑戦する、活躍する、といった女性の記事が共感を生んだと推測されるという。

人気記事ランキングで首位となったのは「バイクに乗ると“脳が活性化”する!」

東北大学・川島隆太教授
東北大学・川島隆太教授

人気記事ランキングTOP10に関する発表も行われた。「⽇本全国靴磨きバイクの旅!警察官・モデルと異⾊の経歴を持つ靴磨き職⼈【伊藤由⾥絵さん】」や「【⽇本全国16ヶ所】ライダーなら⼀度は⾏きたい!全国オートバイ神社とは?」などの記事がランキングするなか、首位となったのは、10年以上前に実施された、「世界初の実証実験『バイクに乗ると"脳が活性化”する!』で出た結果とは?」であった。

このランキング結果を受け、研究を行った東北⼤学加齢医学研究所所⻑の川島教授は、次のように語る。

「オートバイに乗ることが、いかに私たちの脳や心に良い影響を与えるか、という研究成果に多くの方に注目していただいている。あらためて皆様にご紹介するとともに、交通事故ゼロ社会を目指す我々の取り組みついても、話をさせていただきたい」

川島教授の研究内容について紹介しよう。脳には記憶、学習、推測、抑制、判断などの様々な機能がある。この機能は20歳をピークに直線的に低下することが判明している。

この機能低下を抑制できれば、脳の老化を防げられる、との結論に至った。こうしたなか、「サービスエリアで会うライダーは、一様に若々しい」という意見を元に研究がスタートした。脳の計測装置の付いたヘルメットを用い、二輪、四輪で計測を開始した。

主な研究結果
主な研究結果

その結果、判明したのは、中型のギア付きバイクに乗っている時は、脳の活性度が最も高いということ。スクーター乗車時にも働くが、中型のギア付きバイクほどではない。クルマに至っては、ほとんど脳が働いていないという。オートバイの場合は、リラックスした状態ではなく、脳が情報処理をし続けながら操作しているということが最初の実験で分かった。

続いて出てきた疑問は、実際に乗り続けたことによって本当に良いことが起きるのかどうか、ということ。脳機能に関しては、オートバイ通勤をした人は、そうではない人と比べて、2か月後に明らかに脳の機能が向上した。1つは作動記憶、RAMの容量が大きくなり、さらには注意力も向上。そして思考力まで上がっている。つまりバイクに乗ると脳が働き、脳を働かした結果、実年齢よりも、より良い状態になる。つまり脳が若くなる、ということの証明ができたわけだ。

オートバイに乗る習慣を持っていると、その瞬間はストレス解消ができる。研究成果については学術論文として世界に発信した。オートバイに乗ることで、脳も鍛えられる、心も鍛えられるというのが、川島教授の結論だ。




質疑応答


Q―――川島教授の研究結果について、交通安全にも寄与できるのでは、との結論に至ったということだが、この結果をさらに流布し二輪の需要活性に結び付けられるように思う。自工会としてそこはどう考えているのか。

A―――『二輪車産業政策ロードマップ2030』では、2030年における二輪交通事故者数を2020年比で半減させるという目標がある。そのためには年5%二輪の交通事故死者数を減らさなければならない。Aメーカーとしては、車両の技術革新に加え、交通安全、啓発活動に取り組んでいく必要があるが、ハードルは高い。そうしたなか、脳機能を鍛えることが交通安全につながるということは、アプローチとして検討に値するポイントと考えている。

Q―――交通事故死を減少させるという観点では、四輪では免許返納問題がクローズアップされる。認知機能をチェックした上でも、人生においては健康状態をキープあるいは向上させるという地点までと、そこから先のある地点に到達したら返納しなければならないというポイントもある。この研究の活用の仕方には、その両面があるのか。

A―――認知機能に関しては、体力よりも加齢変化のコントロールがしやすい。認知トレーニングを続けると、良い状態を保つことは極めて簡単。最初の2~3か月でかなり良い状態になる。そこから先は週に1~2回、ブーストトレーニングを入れるだけで維持が可能。健康寿命を延伸するということは、認知機能の面からは可能。身体機能に関しては、現状維持は徐々に難しくなり、ゆっくり下がる。ただ、メンテナンスしている人としていない人を比べると、明らかな差がつく。認知機能をコントロールすると安全運転寿命は延ばせる、というのが研究者の感触。

まず認知機能を調べて、危ないから取り上げるのではなく、本人の努力で脳の状態が、安全運転可能な状況に戻るのであれば、運転を勧めるべき。取り上げると、そこから一気に認知機能が低下する。本人が社会の中で安全に運転できる、そういう心身機能を持ち続け、自分が満足するまでモビリティを楽しめる社会を創ることが理想だ。



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