公開日: 2024/08/13
更新日: 2024/11/05
リングを縦横無尽に動き回るプロレスラー。その実態はFCビジネスを展開する経営者だった。カーベルの伊藤一正社長は18年前、脱サラでクルマを中心としたFCビジネスを立ち上げた。現在は全国に800店の加盟店を展開する。同社のサービスメニューは月1回開催される11名の幹部社員が集まる会議で決定する。人気の「R35Garage」や「ペットの旅立ち」も、すべて11人の幹部から生まれたものだった。
新車・中古車販売店「オニキス(ONIX)のナンバー2だった伊藤一正氏が2006年に独立開業したカーベル。「新車市場」「コレCARラ」などの自動車販売/整備事業を全国でチェーン展開し、加盟店の販売活動を支援する企業。現在は全国に800店もの加盟店ネットワークを展開する。
同社トップの伊藤社長はかなり個性的な人物である。メディアの露出も多く、自らは何とプロレスラーとしても活動する。でも、それは伊達や酔狂ではない。自分が“広告塔”として立つことで、会社の認知度アップに貢献しているのだ。
――― 伊藤社長はカーベルの経営者であると同時に、プロレスラーでもあるのですね。
伊藤 ジャイアント馬場さんが立ち上げた全日本プロレスに所属しています。リングネームは「カーベル伊藤」(笑)。年間20~25試合ほどこなしています。2016年にデビューしました。
――― なぜプロレスなのでしょう。
伊藤 昔からプロスポーツのスポンサーとして活動していたんです。最初はプロバスケットチームの「埼玉ブロンコス」でした。巨人のワンマッチスポンサーになったこともありますが、エリアスポーツはダメだということに気が付いたんです。弊社は全国展開ですから、例えば大阪の加盟店からすれば、巨人は敵なんです。どのチームのスポンサーになっても必ず敵はできる。「これはあかん」と思い、新たに見つけたのがカーリングでした。加盟店さんも喜んでくれたし訴求効果も大きかった。4~5年はやったけど、オリンピックで銅メダルを獲った後、急に値上がりして(笑)。その次がプロレスでした。ウチの加盟店経営者の年齢は50代後半から60代が中心なのですが、その層はちょうどプロレス世代なんです。
――― 馬場や猪木、藤波、長州、タイガーマスクの時代を知っている世代ですね。
伊藤 そこがポイントです。全国を巡業するのは全日本プロレスと新日本プロレスしかないので、露出の多い全日本を選びました。行く先々で「カーベルプレゼンツ」とアナウンスされ、試合を見に行った加盟店さんもリングに上がれる。ある種の顧客満足度の向上でもあります。
――― そんななか、伊藤社長も自らリングに上がった理由は。
伊藤 ちょっとやってみようかな、と(笑)。週末にゴルフを楽しむ人、草野球に興じる人ってたくさんいますが、私の場合はそれがプロレスだったというだけのこと。社員からは大ブーイングでしたけど(笑)。キャリアは8年になります。レスラーとしては小柄な私が190cm、130kgぐらいの巨漢と試合をする。吹っ飛ばされるのですが、そんな私の姿を見て加盟店さんが喜ぶのです。
――― 目的はそれ以外にもある。
伊藤 カッコよく言うと、加盟店さんに対する「社長とはこうあるべき」といったメッセージでもあります。チェーン店本部として、プロレスを通して加盟店さんに喜んでいただいています。なので加盟店さんにもお客さんを喜ばせていただきたい、社長として体を張っていただきたい、そんなメッセージです。『店長、お前やっとけ』ではなく、お客さんのためにご自身も体を張って下さい、ということなのです。
――― カーベルでは「新車市場」や「100円レンタカー」「コレCARラ」など様々なサービスを展開しています。これらはブランドごとにフランチャイズ契約を結ぶのでしょうか。
伊藤 はい。最も多いのは基幹サービスの「新車市場」です。創業当時から展開しているブランドで現在、全国に約550店ほどを展開しています。青果市場のようにクルマを選べる場所です。各メーカーの新車を、マーケットで品定めするような感じで比較できます。在庫として抱えているのは、人気車両に限定しています。位置付けは、全メーカーの「新車ディスカウント店」。新車なので、在庫が無くてもカタログ販売が可能なのです。
――― 安価に販売できる理由は何でしょう。
伊藤 新車や用品を大量に一括で仕入れます。しかも全額現金前払い。これが理由です。ディーラーが困るのは、クルマを卸したはいいけど、入金はないし書類も届かないという状況。これを排除することで、安価な仕入れに結び付くのです。販売台数は全店で年間3000台弱です。国内にこの台数を上回る販売店はありません。
――― ディーラーからすれば、カーベル頼みの側面も多いのではないでしょうか。特に決算期とか。
伊藤 まさにその通りです。ディーラーからの買取オファーもあります。
――― カーベルにはどのような企業が加盟しているのでしょうか。
伊藤 中古車販売店と整備工場がそれぞれ30%で、あとはサブディーラーとガソリンスタンドで40%ほどです。スタンドの経営者に加盟いただく時には、販売専任スタッフを立てるようアドバイスしています。理由は、クルマの販売は、アルバイトにできる仕事ではないからです。スタンドで新車販売という新しいサービスができるだけで、従業員の士気が上がることが分かっています。スタンドで新車を扱うと、想像以上に売れるんです。特に地方にいくと、お客さんの3割は地元の顔なじみの人。「新車の販売を始めた。安く買えるよ」というと、買ってくれるんです。
中古車販売店は全体の3割ですが、昨年の大手中古車販売店の問題を機に、新車を扱うと店のブランド力が上がると考える経営者が増えています。ヤマダ電機やコジマ、ビックカメラなどと一緒でドバっと仕入れる。それが家電ではなくクルマだったという話なんです。ウチではヴェルファイアやアルファードなどの人気車でもまとめて30台仕入れができます。入手が困難な抽選販売の人気車でも、まとめて仕入れができるのが強みです。売り方としては、「色は〇〇で装備は〇〇。これでよければ即納が可能です」。こんな感じです。でも、弊社の中でも抽選になってしまうこともあれば、先着順の時もある。最近ではジムニーの5ドア。並行モノですが、国内販売第1号がカーベルなんです。
――― 話題の5ドアですね。何台仕入れたのですか。
伊藤 30台です。お客さんからの要望が多かったので、対応しました。価格は400~500万円ほどです、国内でも5ドアの販売計画はあるのですが、3ドアのシエラですらバックオーダーを抱えているので、国内販売は1年半後とされています。
――― 100円レンタカーはどうでしょう。
伊藤 「新車市場」に次ぐ加盟店数で250店ほどあるのですが、コロナの影響でこのブランドが減りました。コロナが明けてからは、元に戻ると思ったのですが、様相が変わりました。良くも悪くもビジネスモデルとして時代の変化を象徴しているように思います。
――― コロナ明けに大きな変化があったということ。
伊藤 緊急事態宣言で外出を控えなければならない時間が続きましたよね。旅行にも行かなくなったので、レンタカーを借りる人も減り、旅館もかなり倒産しました。でも、チェーン店だから会費は発生します。その結果、「合わないからやめる」という理由で加盟店数は減少しました。でも、それに取って代わるカタチで現れたのがカーシェア。人を介さないで済むのが支持されている理由です。もう一つのサービスが「コレCARラ」。車両代以外にかかる車検代・税金・諸費用をまとめ、そこから月額料金を設定しています。月々3980円から乗れます。また、1年以上乗ったら別の車に乗り換えることができるなど、従来はなかった「これからのカーライフ」というコンセプトが【コレCARラ】なんです。これはいわゆるサブスク。若者向けのサービスです。
――― クルマの供給は依然、停滞している。
伊藤 ダメですね。大きな理由は半導体と労働環境、労働力不足ですが、それに起因し売り方も変わった。かつてのように、大量に生産し、まとめて1箇所に保管し、そこから捌くというやり方ではない。オーダー枠を第一次、二次といった具合に分け、そこでの割り当て台数を決めているので、一次枠で外れたら、二次枠になる。車種によっては1年以上、待たなければならなくなるのです。ディーラーも在庫を持たないですからね。
――― 売り方が全く違うわけですね。
伊藤 ある人気車ですが、一次の生産枠から外れたら、4年半待ちなんです。だから転売者があとを絶たない。表向きメーカーは転売を禁止してますが、購入者の3割が転売目的と言われています。つまり転売で価格が一気に跳ね上がる状況を作っているのは、ある意味メーカーなんですよ。昔みたいにどんどん回してくれたら、オークションであれほど跳ねません。株、金融、投資マンションを超えるのが、クルマですから。500万円で購入し1か月後に800万円になる商品なんてないですよ。
――― 昔、初代NSXが発売された直後、AAに出品され、1600万円超えの値を付けました。
伊藤 それと同じ状態にあるのがGT-Rです。1800万円で買ったクルマを、みんなすぐにオークションに出品するので、すぐにプラス500万円ですよ。だから、この相場上昇は、どんな先物取引よりもハイリターンなのです。
カーベルは全国に850店舗を展開しており、多様なブランドを展開。各ブランド独自の特徴と個性を持ち、新車・中古車購入、レンタカー等多様な選択肢をお客様に提供致します。
株式会社カーベル - 全国850店舗の車の総合サービス会社
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