公開日: 2026/08/27
更新日: 2026/08/31
800台という圧倒的な在庫台数を強みに、バイクショップRを熊本県トップクラスの販売実績を誇る一大拠点へと発展させた山野和明社長。同氏は新車販売の納車整備手数料カットや、6名の女性スタッフ雇用による機動力強化など、独自の取り組みを次々とカタチにしてきた。現在、5年前から現場運営を牽引する次世代への確実な事業承継に向け、そのロードマップを着々と進めている。
九州自動車道の熊本ICを降り、国道57号線を阿蘇方面へクルマで走ること2分、「800台から選べる‼」と大きく掲げられたキャッチコピーとともに、バイクがズラリと並ぶ巨大な店舗が姿を現す。「バイクショップR(有限会社アール/山野和明社長)」。創業46年目を迎える同店は、長年にわたり多くの地元ユーザーから支持され続けている、地域に根差した二輪販売店だ。
今年で70歳を迎える山野社長は、実家が農業を営んでいたため、小学生の頃から農機具やバイクを修理することが好きだったという。中学校卒業後は、四輪と二輪を扱う町工場に住み込みで働き、整備士としてのキャリアをスタートさせた。7年後には転職し、タクシー会社に整備士として就職した。そんな同氏のもとに、予期せぬ転機が訪れる。先輩から、新たに開業するバイクショップの店長を任せたい、と声を掛けられたのだ。
「整備士としての経験しかない自分に、店長として店を回していくことができるのだろうか」
苦悩の末、店長を引き受けることを決意。1980年、24歳の時にバイクショップ「銀輪」の店舗運営という新たな挑戦に踏み出した。
オープン当初、スタッフは山野社長ただ1人。まず着手したのは、経営や接客に関するノウハウを身に付けることだった。店長という立場ではあったが、経営者としての自覚を持つべきとの考えのもと、船井総研が開催するセミナーに自主的に約1年間通い、顧客満足度の重要性など、商売の基本を学んだという。
当時はバイクブームの真っ只中。しかし、近隣にはすでに大型店や老舗販売店があったため、開業後数ヵ月は閑古鳥が鳴く日々が続いていた。そこで山野社長は、人が来ないなら自分から人がいる場所へ出向くべきと考え、近隣住宅へのチラシ配布や地元スーパーでの展示会開催など営業活動を始めた。
「毎週、スーパーの一角を借りて即売展示会を行っていました。当時はパッソルやパッソーラ、タクト、スカイ、ユーディミニなどを販売。その場で購入してくれなくても、出展することでお店の存在を知ってもらえる。これを続けた結果、次第に口コミも広がり、お客さんが増加。1年目は大赤字でしたが、2年目からは黒字となりました」
店長を引き受けてから2年後、山野社長はある決断を下す。朝早くから夜遅くまで骨身を削って働いても、住み込み時代と給与がほとんど変わらなかったこと、そして結婚をはじめとする今後のライフステージの変化を見据え、独立を決意したのだ。
「自分が社長になれば、努力した分だけ結果として帰ってくる、そう考えたのです。独立にあたっては、銀行や親戚などから資金を集め、お店の経営権と在庫車両をすべて買い取りました」
独立後の1988年には、区画整理に伴い店舗の上に陸橋が架かることとなり、移転を決意。現在の場所へと拠点を移し、これを機に商号を「有限会社アール」へ、屋号を「バイクショップR」へと変更した。新たな店舗の敷地面積は、移転前の約9倍となる450坪。山野社長は販売台数を増やしていきながら、在庫車両を効率的に管理するため、店舗の裏手に3階建てのバイク倉庫も新設した。さらに数年後には、オークション出品車両の保管と撮影スペースを兼ね備えた倉庫、そして店舗から100メートルほど離れた場所に、バイクを300台収容できる倉庫と駐車場を備えた広大な土地を確保。これらを合わせた総敷地面積は約1300坪にも及ぶ。バイクショップとしては異例の広さといえるだろう。山野社長が長年にわたりバイクショップRの規模を拡大し続けてきたその歩みは、今や揺るぎない盤石な経営基盤として結実している。
バイクショップRは現在、国内4メーカーとキムコの正規代理店として稼働する。新車と中古車の販売割合は8対2。排気量別では原付二種が最も多く全体の6割を占め、軽二輪が2.5割、小型二輪が1割、原付一種が0.5割という内訳になっている。この原付二種が多い理由については、熊本市の地域特性が関係しているという。
「県庁や市役所、自衛隊の駐屯地など、主要施設ではクルマの駐車スペースに限りがあるため、特に若手職員はバイクに乗る率が高い。また熊本市には都市高速道路がなく、維持費が安いことから、原付二種を選ぶ人が多いのです」
実は熊本市、過去に政令指定都市の中でワーストの渋滞率を記録するほど、クルマの利用者が多い街でもある。この激しい渋滞を避けるための手段として、バイクを選ぶ人も一定数いるという。実態として、熊本市の原付一種と二種のナンバープレートは、登録台数が多いことから全国でも珍しい5桁ナンバーとなっている。
冒頭でも触れたが、バイクショップRの在庫台数は実に800台にも及ぶ。取材に訪れた5月末には、販売が開始されたばかりのFazzioが全カラー揃っているほか、新基準原付のDio110LiteやJOG ONEなど、話題のモデルが複数台展示されていた。この在庫台数の多さが、過去の未曽有の危機において、地域住民をはじめとする多くのユーザーを救うこととなる。
時は2016年4月、2度にわたり最大震度7を観測し、甚大な爪痕を残した熊本地震が発生。熊本市の隣町が震源地であったため、バイクショップRも激しい揺れに見舞われ、在庫車両の半分以上がドミノ倒しとなってしまったという。
当時、約4ヵ月にわたり物流がストップ。道路はあちこちで地割れを起こし、クルマでの走行は不可能な状態となった。けれども、ユーザーは会社に行かなければならない、という現実のなかで、悪路でも走破できるバイクの需要が爆発的に高まったのだ。他店では売りたくても売れないという状況に陥るなか、多くの在庫台数を誇るバイクショップRでは、まるで一店だけで地域住民の生活の足を支えているかのように、バイクが飛ぶように売れていったと振り返る。
「被災したバイクは、キズの状態に応じて5000円や1万円といった値引きを行って販売。少しでも安く設定した車両から売れていきました。お客さんは一刻も早く、生活の足を必要としていたのです。2度目の地震から5日後に営業を再開しましたが、そこから3ヵ月間、客足が途絶えることはありませんでした。この時ほど、多くの在庫車両を仕入れておいてよかったと思ったことはありません」
予期せぬ事態が生んだ局面ではあったものの、この危機を経て、バイクショップRが多くのユーザーから困った時に助けてくれた存在として、心から感謝されたことは論を待たない。
【熊本県】バイクショップ アールの店舗情報詳細 | 選べる、見つかる BDSバイクセンサー
【熊本県】バイクショップ アールの店舗情報はこちらから。気になっていたお近くのバイクショップの最新ニュースや整備事例をチェック!九州の新車・中古バイク情報はBDSバイクセンサー
簡単シンプルで探しやすい!バイク・パーツ検索はBDSバイクセンサー
人気記事ランキング