公開日: 2026/09/14
更新日: 2026/09/21
例えば「バイクの調子が悪いので見てほしい」というユーザーが来店したとする。依頼を受けたが、もしエンジンを分解しなければならなくなった場合、納車までにはそれなりに時間がかかる。だが、ポイントさえつかんでおけば、納期を短くすることは十分に可能だ。
「他の店で1〜2か月、時には3か月かかるような修理でも、ウチの納期は2週間程度です」
こう話すのは、カワサキのZ系を得意とする旧車を扱う店。納期が早いからといって、いい加減な作業をしているわけではない。SNSが当たり前の今、手を抜いた仕事をすればあっという間に情報が拡散されて信用を失ってしまう。しかし、その店には修理依頼が次から次へと舞い込み、順番待ちの状態となっている。もし、いい加減な仕事をしていたなら、この状況は決して生まれない。
Z系には不具合を起こしやすい箇所がいくつかあるのだという。そこが分かっているので、あらかじめそのパーツのストックを用意しておく。その他、転倒や立ちゴケなどをした時に傷つきやすいパーツもストックされている。店内にはZ1やZ2をはじめとしたZ系のパーツ類が壁一面を覆っている。エンジンを開けて不具合箇所を確認して部品を調達して交換という手順から『部品を調達』が抜け、問題発見と同時に交換もできてしまう。そこで納期を大きく短縮している。
不具合を起こしやすい箇所が分かっているのでストックがあり、Z系のモデルを数えきれないほど修理やレストアをしてきているので知識やノウハウも膨大。その2つが備わっているため、作業中に新たな問題が起きても即応が可能。結果として納期の短縮につながるのだ。これができるのは、Z系を主に扱う旧車専門店という部分が大きいものの、それ以外の店でも人気車種などについては応用できそうなポイントだ。
他にも納期を短縮する秘密がある。それは、自作ツールによる作業の効率化。作業スペースには、自作の工具がいくつも並んでいる。
「手が届きにくいとか、やりにくい作業があるでしょう? その他にも、作業自体は難しくないのにエンジンをおろしてヘッドを開けないとならないとか。作業するための準備に時間が取られてしまうのがイヤで、『こういうツールがあったら便利だな』と思うものを作って、作業に使用しています」
アイデアや工夫によって生まれた自作ツールをいくつか紹介すると、ラチェットのメガネレンチの加工。カブ系のカムチェーンとギアを取り付け、手元につけたツマミを回すとチェーンを介してボルトを締めたり緩めたりすることができる。手が届きにくい、または左右の振り幅が小さくてボルトが回しにくい時にも重宝している、とのこと。
ヘッドカバーの各部に加工や修正を行う時も、シリンダー内に削った金属片が入らないよう、自作のツールで対応。マフラーを短く切断してフランジを付け、マフラーの出口は塞がれてエアコンプレッサーの取り付け口が備わっている。そんな、これまで見たことのないツールをエンジンの排気口に取り付け、エアコンプレッサーから空気を送り込むと、エンジンの排気口からバルブポートへと空気が流れ込む(通常の空気の流れと逆になる)。これにより加工・修正の際に発生した金属片が外に向かって吹き飛ばされシリンダー内に入らない。これらの自作ツールを使うと、エンジンをおろしてヘッドカバーを外すなど、作業するための準備時間をまるまるカットできるという。
ストック、知識・ノウハウ、アイデア・工夫、全てが合わさって大幅な納期短縮が可能となった。納期を早めることでユーザーには喜ばれ、店としてもより多くの車両に対応可能となる。双方にとってWin Winなのだ。
ちなみに、店に置いてあったCB750のエンジンについては、他の店と同じくらいの納期がかかると話していた。「Z系が得意」というこの店は、その得意分野を思い切り伸ばした好事例と言えるだろう。
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