販売店取材注目

【販売店取材】株式会社オオツヤ本店 大津謙太郎 店長(大阪府)

公開日: 2024/09/10

更新日: 2024/10/04

1929年創業の地域に根差したバイクショップ、株式会社オオツヤ。取材を行った本店の大津謙太郎店長はSNSをフル活用し、入荷車両の情報だけでなく、プライベートに関することなども発信。新規ユーザーにオオツヤや謙太郎氏のことを事前に知ってもらうことで、来店のハードルを下げつつ、認知度向上を図り、顧客の裾野を拡大し続けている。

SNSには情報発信だけでなく、新規ユーザーの来店ハードルを下げる効果も

1929年の創業以来、同じ場所で店を構え続けている「オオツヤ本店」。2017年に建て替えを実施
1929年の創業以来、同じ場所で店を構え続けている「オオツヤ本店」。2017年に建て替えを実施

天王寺駅から和歌山駅までを結ぶJR阪和線、鳳駅から徒歩2分。“開かずの踏切”として有名な「鳳北一踏切」の目の前に店を構える株式会社オオツヤ。創業は1929年。まもなく設立100年を迎える、地域に根差した老舗販売店である。

現社長は2代目の大津義三氏だが、2020年より、ご子息で店長の謙太郎氏が仕入れや販売、整備など、すべての業務を遂行するようになった。こうしたことから取材は、謙太郎氏に対応していただいた。

同氏は短大の自動車学部を卒業後、四輪ディーラーに就職。2年間整備士として勤務した後、22歳の時に家業に就いた。ただ、社長の義三氏から家業を継いで欲しい、と言われていたわけではなく、むしろ、継がなくてもいいとまで言われていたという。

「昔から、絶対に家業を継ごう、という強い意志があったわけではないのですが、いずれはオオツヤを継ぐのだろう、などと漠然と考えていたため、整備士の国家資格を取得できる大学に進学しました。オオツヤの歴史は長く、地域密着型で営業しているので、近隣地域の中でそれなりに知名度があり、多くの人から支持をいただいています。そのため、ウチが店を閉めてしまったら、いままでバイクを購入された人が困ってしまう。家業に就いた理由は、これからも地域住民の生活の足を守り続けたかったからです」

オオツヤは現在、鳳駅から徒歩2分の場所にある本店と、泉北高速鉄道の泉ヶ丘駅を降りてすぐの商業施設内に店を構える「オオツヤ泉ヶ丘店」の2拠点体制を敷いている。店舗を拡大した理由について、謙太郎氏は社長のほうが詳しいからと、義三氏に話を振ってくれた。

「1978年、同じ年に泉ヶ丘店と泉北店(現在、休業中)をオープンしました。当時は、パッソルやパッソーラなど、ヤマハのモデルだけで年間1000台を販売していました。すると、納車整備や修理が1店舗だけでは追い付かず、24時過ぎに配達をすることもザラにあった。そこで、そのパンク状態を解消したいと思い、オオツヤのお客さんを各店舗でカバーし合えるようにするため、同じ堺市に支店を作ったのです。泉ヶ丘店は、長男(慎太郎氏)が店長を務めています」

中古車は必ず分解整備を行ってから販売

受注した整備をただこなすだけでなく、次の依頼に繋げるため、プラスαを見つけながら作業を行っている
受注した整備をただこなすだけでなく、次の依頼に繋げるため、プラスαを見つけながら作業を行っている

オオツヤは、ホンダとヤマハの正規取扱店。昨年の年間販売台数は、両店合わせて約300台。新車と中古車の割合は、5対5。コロナ禍前までは新車が6割以上を占めていたが、供給網の混乱などから中古車の販売比率が増加した。排気量内訳は、原付一種がメインで5割以上となっており、原付二種が3割、軽二輪が1.5割ほどだという。

「鳳駅のある南大阪エリアは、生活の足としてバイクに乗る人が多いこともあり、ウチは原付一種が販売のメインとなっています。新車はカラーバリエーションが豊富なビーノ、中古車ではデザイン性からズーマーが人気です。また、ウチは地域密着型の店なので、商圏の8割が堺市や隣の和泉市など、近隣地域になっています」

オオツヤのユーザーは、原付一種をメインに購入していることもあり、その車両特性から老若男女を問わないと言う。ただ、ユーザー層を踏まえた上で、謙太郎氏が不安視するのが新基準原付についてだ。

「車体が大きくなってしまうので、体の小さい女性やご高齢の方には乗りにくくなる。今後、原付一種の中古車相場は上がっていくでしょうが、ニーズがある以上仕入れる台数は増やすと思います。今後は販売価格の上昇など、お客さんの理解がどこまで得られるかが重要になると考えています」

オオツヤでは中古車を販売する際、必ず実施していることがある。それは、たとえ低走行で状態の良い車両であっても、分解整備を行ってから販売しているのだ。

「どれだけ走行距離が少なく、見た目がキレイな車両であっても、前のオーナーがどのような乗り方をしていたかは分かりません。そのため、チェーンやスプロケット、ドライブベルトなど駆動系パーツは必ず状態を確認し、キレイにしたり、必要に応じて新品に交換しています。ウチはメインユーザーが地元の方なので、個人的に顔見知りが多い。オオツヤは、長年地域のお客さんから支持され続けていまがあるので、その信頼を守り続けたいのです」

また、謙太郎氏が整備をする上で気を付けていることがある。それは、オイル交換だけで1日10件以上ある中でも、依頼内容プラスαを見つけること。

「受注した整備をただこなすだけでなく、次の依頼に繋げるため、タイヤの溝の減り具合やプラグが消耗していないかなども必ずチェックしています。この時ポイントとなるのが、伝え方。言い方やタイミングを間違えると、お客さんにお金を使わせたいんだな、と思われてしまう。そういう風に捉えられないようにするため、世間話など普段のやり取りの中で、そろそろ交換した方がいいよ、と伝えています」

このように、プラスαを見つけながら整備を行っていた結果、いまではオイル交換のついでに何か悪いところがあったら直しておいて、と任されることが増えてきたと言う。

コロナ禍がSNSフル活用のキッカケに

早口言葉は謙太郎氏のユーモアに溢れている
早口言葉は謙太郎氏のユーモアに溢れている

オオツヤをグーグルやヤフーなどで検索すると、上位にSNSアカウントがヒットする。謙太郎氏はX、インスタグラム、フェイスブックを活用。Xはほぼ毎日、ポストをしている。SNSに力を入れ始めたキッカケについて、同氏は次のように説明する。

「新車をメインに扱っているので、コロナ禍による供給網の混乱によって販売台数が一時期、ガクッと減りました。その際、在庫の中古車をより一層販売していくためには何が必要かを考えた結果、宣伝することが重要になると思い、2020年よりSNSを積極的に活用しています。ウチは地域密着型なので、全国のユーザーに店舗や在庫情報などを発信する考えがなく、ホームページを作っていませんでした。ただ、SNSに力を入れてからは、投稿を見ているという人が多く来てくれています。SNSは指一本、無料でできる広告。ホームページのような役割を果たしているのです」

また謙太郎氏は、SNSにはバイクショップに対して敷居が高いと感じている人の認識を、良い方向に改めてくれる効果もあるという。

「ウチは初めての人でも入りやすい、アットホームな店を心掛けています。そのため、SNSにはマニアックな内容ではなく、誰が見ても分かるような入荷車両などの情報をはじめ、プライベートに関することも発信しています。こうすることで、お客さんはオオツヤや私のことをすでに知った状態になるので、店に来るハードルを下げられる。来店を促すためには、1人でも多くの人に認知してもらうことが重要なのです」

さらに、謙太郎氏はオオツヤの認知度を高めるため、SNSだけでなく、冒頭で述べた同店の立地を生かして、一時期オリジナルで考えた早口言葉を店頭に飾っていた。

「ウチの目の前は人通りが多いだけでなく、踏切の遮断機が降りている時間が長いので、待ち時間がかなり発生します。その際、“あそこにバイクショップがある”といった程度の認識だと、街の風景に埋もれてしまう。そこで、週替わりでオリジナルの早口言葉を店頭に飾ってみたのです。その結果、多くの人が口をパクパクしており、確実に気を引くことができていたと思います。いま行っていないのは、ネタ切れだからです(笑)」

原付一種を中心に国内メーカーモデルを展示
原付一種を中心に国内メーカーモデルを展示

上記のように、SNSに力を入れているオオツヤだが、去年新たに始めた取り組みがある。それは、通販による車両販売だ。

「時代の流れもあり、間口を少し広げてもいいのではないかと思い、去年、BDSバイクセンサーを始めました。効果はてきめんです。先ほど、商圏の8割が地域住民と答えましたが、残りの2割がBDSバイクセンサー経由による、近隣地域以外、さらには県外のお客さんです。彼らはいままでのオオツヤにはなかった顧客になっています」

またいままで、オオツヤで使い道がなくなってしまったカウルやハンドルカバーなどのパーツは処分をしていた。けれども、BDSバイクセンサーを始めてから自店ページに掲載したところ、予想以上に問い合わせがあり、売れることに驚いたと言う。

100年近くに渡り、地域住民の生活の足を守り続けてきたオオツヤ。その中で謙太郎氏は、SNSや通販を始めることで商圏を全国へと拡大し、裾野を広げ続けている。

「ウチは他店のように、ラインアップが豊富なわけではないため、人間性で勝負するしかありません。来店を促すためにも、オオツヤや私のことを全国のユーザーに知ってもらえるSNSは欠かせないツールになっています」

情報発信、集客、認知度拡大、イメージ向上など、多岐にわたる役割を果たしているSNSは、私たちの生活に多大な影響を与えている。デジタル社会の現代において、SNSを効果的に活用することこそが、ビジネスの成功の鍵となるのだ。



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