公開日: 2024/02/02
更新日: 2024/02/05
今年、1994年以来、30年ぶりに値上げが検討されているサービスがある。手紙の郵便料金だ。また、はがきも2017年以来、7年ぶりの値上げが見込まれているが、なぜいま検討されているのか。また、日本の郵便事業は現在、どのような状況なのだろうか。
総務省は昨年12月18日、2024年秋以降に、25g以下の手紙をはじめとした定形郵便物の料金を、84円から26円引き上げて110円(引き上げ幅31%)にする方針案を発表した。また、50g以下の定形郵便物は、94円から16円引き上げて110円(同17%)にし、重量区分をなくして料金を統一。さらに、はがきについては63円から22円引き上げて85円(同35%)にする。
なお、定形外の郵便物は30%ほど値上げし、レターパックや速達は、ユーザーの利便性を重視して引き上げ幅を抑えるという。
この価格見直しの背景には、郵便事業の厳しい状況がある。総務省のデータによると、郵便の取扱量はピークであった2001年の262億通から減少の一途を辿っており、2022年はピーク時の45%減となる144億通。その結果、2022年度における郵便事業の営業損益は、マイナス211億円と、2007年に行われた郵政民営化以降、初の赤字となった。
また、総務省は今回の値上げ方針案の中で、郵便事業の将来の試算も公表している。これによると、値上げをしなかった場合、営業赤字は2027年度に3050億円、2028年度には3439億円にまで拡大。一方、値上げをした場合、一時的に収支は改善し、2025年度には67億円の黒字となるものの、その後再び赤字に転じ、2028年度には1232億円まで拡大するという。今回の価格見直しについて総務省は、「2025年度に黒字を達成できる最小限の上げ幅にした」とコメント。つまり、2025年以降も継続的に値上げが行われると考えられる。
日本郵便は、2021年秋から普通郵便の土曜日配達、および翌日配達を中止し、業務の効率化を進めてきた。けれども、2022年度の営業費用は全体の66%を、仕分け作業や集配にかかる人件費が占めていたという。そのため、収益をどのように増やすかが課題となっている。同社は昨年10月より、ヤマト運輸からメール便や薄型荷物の配送業務を段階的に受託し、新たな収益源を確保した。けれども、物価高を一因とする基本給のベースアップなどが重なり、人件費は増え続けている。
郵便は私たちの生活に欠かせないサービスであるが、取扱量の減少という難題を抱えている。そのため、値上げだけでは、収益確保には限界がある。そこで、必要となるのが、業務の効率化はもちろん、新たな収益源の確保だ。今後、郵便事業をどのように継続させていくかの議論が活発になるだろう。普通郵便の土曜日配達や翌日配達の中止のように、これ以上“質”を落とさせないようにするためにも、新サービスなどに対する私たちの理解と協力が求められている。
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