ヤマハビジネス

ヤマハ、紙カタログの制作終了。情報との出会いの場がどんどんデジタルの世界へ

公開日: 2024/03/07

更新日: 2024/03/12

ヤマハ発動機販売は1月25日、一部のモデルを除き、モーターサイクルカタログ印刷物及びPDFデータ制作の終了を発表した。今後、発売されるモデルの情報は紙ではなく、ヤマハのサイトで確認することになる。音楽もCDからネットを介したダウンロードやストリーミングへ、本も電子書籍へ、調べ物も辞書よりもネットで検索と、様々な分野で情報との出会いがデジタル化している。

あらゆる分野で情報を伝える手段がアナログからデジタルへ

あらゆる分野で情報を伝える手段がアナログからデジタルへ
あらゆる分野で情報を伝える手段がアナログからデジタルへ

例えば音楽。10年ほど前まではCDを購入して聴いていたが、今はスポティファイやアップルミュージックなどのストリーミングサービスを利用して聴くのが一般的となっている。このメリットは、月額料金を払えば、サービスで配信されている音楽すべてが聴けること。アップルミュージックでは世界の音楽を1億曲以上も聴くことができる。

例えば、調べ物。スマホやパソコンなどで、調べたい語句や事柄、それに関連するキーワードを検索サイトに入力すれば、知りたいことを簡単に調べることができる。今、辞書で一つひとつ引いて調べているという人は少数派なのではないだろうか。

本についてはどうか。タブレットで小説などが読める電子書籍が登場した当初、読書が好きな人たちからは、「やっぱり、本がいい。紙をめくる感覚が好きだから」という声が多く聞かれた。けれども電子書籍はいま、完全に市民権を得ている。本を何冊か持ち歩くとかさばるし重いけど、タブレットだけなら軽いし持ち運びもラク。こうしたこともあり、紙媒体とWEB媒体の双方を展開するのは一般的となっている。

様々な分野でデジタル化が当たり前になってきているが、カタログにもデジタル化の流れは押し寄せている。1月25日、ヤマハ発動機販売は紙とPDFのカタログ制作の終了を発表した。50ccモデルの『JOG』『Vino』『GEAR』を除き、今後は発売されるモデルの紙とPDFのカタログはなくなる。理由は、印刷物削減による環境負荷の低減とデジタルコンテンツの拡充。ネットの普及により、ユーザーの情報取得経路がカタログやパンフレットからWEBサイトに変化。また、紙媒体だと情報を更新することはできないが、デジタルなら修正が簡単で、速やかにWEBサイトへ反映できる。そして、紙媒体の廃止はヤマハが特別でもなく、四輪のトヨタも2025年1月に紙カタログの廃止を発表している。

並べて見比べられるなど紙カタログならではのメリットもある

並べて見比べられるなど紙カタログならではのメリットもある
並べて見比べられるなど紙カタログならではのメリットもある

そこで気になるのは、ユーザーや販売店が、紙カタログ廃止の傾向をどう感じているかだ。50代のユーザーは「バイクのことを調べる時、最初はネットで調べますが、最終的には紙のカタログも欲しい。手元に置いておきたいからです。ただ、紙のカタログがなくなるのも時代の流れかな」と話す。40代のユーザーは「買ったバイクのカタログは欲しいけど、スマホやパソコンでも情報は得られるので、なくても困らないと思う」とのこと。

これはヤマハの店ではないが、販売店の声も紹介しておく。

「ウチでは紙のカタログは必須アイテムです。活用例を挙げれば、商談の時ですね。新型が出た時に新旧のカタログを並べると、どこが変わったかが説明しやすいですし理解も得やすい。また、2~3車種で悩んでいるお客さんに対しても、そのバイクのカタログを並べて説明すれば、違いを理解してもらいやすい。さらに、車両の詳細情報のほか、オプションパーツとかも細かく載っているので、並べて見比べられる、情報が伝えやすい。それが紙カタログの良いところだと思っています」

インターネットが当たり前の、いわゆる『デジタルネイティブ世代』の若年層についても、以下のように話す。

「紙カタログと同じ情報はネットでも見られますが、例えばスマホだと情報をスクロールして必要なところしか見なかったりするので、カタログに載っている情報をキチンと把握されてないことがよくあります。なので、若い世代にこそ、アナログな紙カタログが必要だと感じます。その意味でも、紙カタログは残って欲しいと感じます」

ただ、やはり昨今話題になることの多いSSDGsの観点からも、環境負荷低減は避けては通れない道。紙カタログはやがて消えゆく運命なのかもしれない。その時に向け、販売店も対応を考えておかなければならないだろう。

写真はイメージです。記事中の店とは関係ありません

人気記事ランキング

50cc時代に幕。2025年4月1日、『新基準原付』スタート!

道路交通法施行規則が改正され、4月1日より適用される。これにより、原付一種にしか乗れないユーザーで...


【トップインタビュー】ハーレーダビッドソン ジャパン 野田 一夫 代表取締役

2022年、ハーレーは登録台数において1万台突破という大きな実績を上げた。これは過去6年間における最高...


電動スクーター「EM1 e:」発表、補助金利用で30万円を大きく下回る価格を実現

ホンダはバッテリーEV「EM1 e:」を8月24日に発売すると発表した。これは、法人向けではなくパーソナルユ...


2023年1月より電子車検証導入。二輪業界では、何がどう変わる?

来年1月、車検証が電子化される。二輪業界では何がどう変わるのか、販売店やユーザーのメリットは何か。...


原付免許の定義が変わる!? 現在検討中の法改正について詳しく解説!

法改正で原付免許の定義が変わるかもしれないといった話題が、最近インターネットで出ていたのをご存じ...


川崎重工から独立分社化し「カワサキモータース」発足。2035年までに先進国向け主要機種の電動化を完了

川崎重工業株式会社は10月1日、「モーターサイクル&エンジンカンパニー」を分社化し、カワサキモーター...


ヤマハ「XSR900」試乗インプレ!でっかいけど足つき良好!

バイクジャーナリストの小林ゆきさんが、2022年にフルモデルチェンジを行ったヤマハXSR900を試乗インプ...


2023年新車国内出荷台数 ~原一、10万台を割り込んだが原二の躍進で37万9800台と前年比3.0%のプラス~

2023年の新車国内出荷台数は国内4メーカー合わせて37万9800台(速報値・二輪車新聞社調べ)。原付一種が...


バイク希望ナンバー制、令和8年度導入へ

クルマには既に導入されているが、バイクへの導入は見送られていたナンバープレートの『希望番号制度(...


2024年新車国内出荷台数、約32万台でコロナ禍以前の水準に

2024年の新車国内出荷台数は32万0300台(二輪車新聞調べ・推定値)となり、コロナ禍以前の水準となった...


SE Ranking