公開日: 2025/01/27
更新日: 2025/01/31
共同通信は昨年末、ある発表を行った。自民党参議院議員の生稲外務政務官が2022年8月に靖国神社を参拝したという誤報を出したことにより、編集局長ら6名を懲戒処分にした、というもの。ここでクローズアップされたのは、共同通信の存在。日本を代表する通信社だが、ではこの通信社とは、いったい何を行っている組織なのだろうか。今回は、この誤報問題とは別に、通信社の仕事内容について見てみる。
新聞やテレビ、ネットニュースなどでよく見聞きするのは、前出の共同通信と時事通信。この2社は日本を代表する通信社。海外ではAP通信(アメリカ)、UPI通信(アメリカ)、ロイター通信(イギリス)、AFP通信(フランス)、タス通信(ロシア)、新華社通信(中国)、聯合ニュース(韓国)などが知られる。
これら通信社の仕事とは何か。新聞社でもなくTV局でもない。分かっているようで以外と知らないのが、この通信社の業務。仕事内容をひと言で説明すると、ニュースの配信である。
新聞社は新聞、放送局は番組という情報伝達手段を持っているが、通信社は自社のメディアを持たず、取材記事や撮影写真を、配信契約を結んでいる全国の新聞社や放送局に提供している。ここには海外メディアも含まれる。配信を受けた新聞社や放送局は、通信社の配信記事であることが分かるよう、社名入りで報道する。ざっとこんな感じだ。内部組織については新聞社などとほぼ同じ。政治部や経済部、社会部、運動部などがある。
では、なぜ通信社のような組織ができたのか。各メディアは独自のネットワークを持っているが、国内外の事件や出来事全てに対応することは不可能。また、東京をはじめとする大都市や海外の主要都市に取材拠点を持たない地方紙などにとっては、通信社からの配信がないと成り立たないといっても過言ではない。それぐらい欠かせない存在なのである。
元々、日本の通信社大手2社の前身は1936年に設立された「同盟通信社」という社団法人。だが戦後、GHQの命令により海外向け外国語放送業務が停止となったため、同盟通信社は解散。その後、組合法人である共同通信社と民間企業である時事通信社が設立され、通信社としての業務は引き継がれることになった。
かつて、テレビのコメンテーターや解説者は新聞社の政治部や経済部の元編集委員や編集局長といった人が務めていたが、ここ数年は通信社の人が担当する機会が増えている。これはそれだけ存在感を増しているからだと考えられる。
かつて、タス通信の東京支局長を取材したことがある。確か旧ソ連が崩壊した後だったと思う。取材の内容は覚えてないが、通された応接室に東芝製の巨大な古めかしいブラウン管テレビが置いてあったことは、鮮明に覚えている。いまでは様相もガラリと変わっているものと思うが、国内外の通信社の果たす役割や必要性、影響力は、昔も今も変わってない。冒頭に記した誤報が大きな問題に発展するのは、その影響力の表れでもあるのだ。
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