公開日: 2025/05/27
更新日: 2025/06/10
編集者にとっての取材対象はさまざま。小誌の場合、バイクショップを取材することもあれば、一般ユーザーに話を聞くこともある。今回は、ユーザーがバイクショップに望むアドバイスとは何なのか、そのヒントになると思われる、2人のユーザーの話を紹介していく。
まずは、40代の男性ユーザー。左フロントフォークにオイル漏れがあり、バイクショップに修理を依頼。それまでバイクを見てもらっていたA店の技術力に不信感があり、その時はいつもと違うB店に頼んだという。
そこの店では、修理メニューとして2パターンを提案してくれたという。1つは、左のフォークだけをオーバーホール。でも、これは左右のバランスがあるからおすすめしないが、金額的には安い、とB店。2つ目は、左右のフロントフォークのオーバーホール。金額的には高くなるが、バランスはいいとのこと。
ただ、この男性、その1年前に以前の店で右フロントフォークのオイルやシールを交換していた。それをB店で話したら「A店では左右のメンテの提案はされませんでしたか?」と言われたという。
どうやら、A店はユーザーに言われたことだけをやっていただけで、店側からの提案やアドバイスはなかったようだ。もちろん、それが悪いわけではない。言われたことをキッチリとこなすのも大事なこと。しかし、その男性ユーザーは「何がベターで何がベストなのかを教えてもらいたかった。プロとして、安心と安全につながる提案をして欲しかった」という。前述したように、A店に不信感があったことから、それ以降はB店にバイクの面倒を見てもらうようになったという。
中には、プロ顔負けの技術や知識を持っているユーザーもいるが、逆に全部店任せで何も知らないという人もいるので、「このくらいのことは分かっているだろう」と思わないことが大切だ。どのような提案をしても、どの修理メニューにするかは最終的にはユーザー自身が判断するので、「こうしてみてはどうだろうか」という提案はしておきたい。それを望んでいるユーザーもいるのだ。
コロナ禍でバイクが人気となり、それ以前と比べて女性ユーザーが増えた感がある。ただ、中には『今、人気だから』という理由で免許を取ってバイクを購入したケースも少なくはない。バイクショップから「ユーザーは納車の時が、気持ちのピーク」と聞いたことがあるが、それを実感できる話がこれだ。
とある20代の女性ユーザーはコロナ禍で外出もままならなかった時、女性のバイク系インフルエンサーの動画をネットで見てバイクに興味を持ち、免許を取ってバイクを購入。最初のオイル交換の時には店に行ったが、それからしばらくは足が遠ざかっていたという。「買ったらそれまでの熱が冷めて興味が薄れてしまった。バイクに乗る友だちは誰もいない。目の前にバイクはあるけどこれから先、このバイクで何をどう楽しめばいいのだろう?」と、方向が分からなくなってしまったのが、その理由。
ほとんど乗らずにいたのでバイクを売ろうと思い、店に行って相談したところ、「ウチのお客さんに同年代の女性ライダーがいるので紹介しますね。その人と一緒に走ってみるのもいいかもしれませんよ」「不定期だけど女性限定のツーリングも開催しているので一度、参加してみるとバイク仲間ができるかも」など、いくつか提案された。こんな話が欲しかったんだ、と直感的に思ったのだという。
売るのはいつでもできる、と気持ちを切り替え、思い切ってツーリングに参加。そこで気の合う女性ライダーと知り合うことができ、冷めかけていたバイク熱が復活したのだ。その女性ライダーは「売ろうと思って店に行った時に『はい、分かりました』で終わって、ツーリングに誘ってもらえてなかったら、今、バイクに乗ってないと思います」と話す。
どのような問題を抱えているのかを聞き出すことで解決に導く。これも、提案やアドバイスの大切さを教えてくれるエピソードのひとつだ。
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