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日本における、二輪文化とサブカルチャーの関係性とは

公開日: 2025/08/12

更新日: 2025/08/14

クリエイター加藤ノブキ。彼の作品は新しくて、懐かしい。描かれる架空の登場人物は、まるで実在するかのようなリアリティがある。

広告・商品デザイン・イラスト・漫画などを幅広く手掛ける「クリエイター加藤ノブキ」

加藤ノブキ×カワサキのコラボ商品
加藤ノブキ×カワサキのコラボ商品

2025年、6月27日からカワサキモータースジャパンで、加藤ノブキ×カワサキのコラボ商品が販売されている。Z900RSとNinja ZX-4RRと共に描かれている女性のタッチを見れば「以前にもどこかで見た」と感じるはずだ。

カワサキとのコラボレーションにおいては「イラストレーター加藤ノブキ」と紹介されているが、実際は広告・商品デザイン・イラスト・漫画などを幅広く手掛ける「クリエイター」と呼ぶのが相応しい人物である。実際その活動範囲は、大手スポーツメーカーの広告デザインにまで及んでいる。

そんなクリエイター、加藤ノブキさんは広島県出身。幼少の頃からとにかく絵を描くのが好きだった。東京芸術大学を目指して上京。芸大入学後もあらゆる作品を創作した。卒業後は仲間に誘われて講師の職に就きながら、漫画家のアシスタントを経て、「近代麻雀」2012年度近代麻雀漫画賞を受賞する。しかし、長年続けたWワークは年齢と共に限界に達し、心身共に休養を余儀なくされる。けれども芸大の仲間がメーカーや大手広告代理店に勤務しており、彼らに発注された仕事がその後の飛躍のキッカケとなった。「仲間に支えられてきた」と本人は述懐する。

バイクは10代後半から乗り続けており、90年代のアメリカンブームにスティードを購入したところから始まった。当時のバイク仲間が峠道を気持ちよく走っている姿に影響され、レーサーレプリカのRVFに乗り換えたこともある。現在の愛車は、FANTIC CABALLERO Flat Track250とKTM890 DUKE R、HONDAのC100。四輪免許は持っておらず、移動はもっぱらバイクというリアルライダーだ。

ラパイドネオ・オーバーランドとリアクト
ラパイドネオ・オーバーランドとリアクト

2019年に開催されたデウス原宿『Moto Chronicle2030』、ユナイテッドカフェ「HAVE A BIKE DAY.」においてアライヘルメット・ラパイドネオのオリジナルカラーリングを発表。これがアライの目に留まり、ラパイドネオ・オーバーランドとリアクトという商品名で販売された。

これがキッカケでオートバイ関連の仕事が大幅に増加したという。個人の活動と並行してmashcomix(マッシュコミックス)という漫画家、イラストレーター、デザイナーなどで構成される創作漫画集団を1999年に結成。現在までに8冊の同名雑誌を発行している。mashcomixでの活動は建築や内装デザインにまでおよび、加藤さんの創作の世界は無限の広がりを見せている。

改めて加藤ノブキ作品(※kato-nobuki.com で過去のイラストを閲覧することができる)を見ていると、時に漫画的、時に写実的という具合に描き方が異なっていることに気が付く。クライアントの要望によって、技法を変えている点が興味深い。イラストレーターは有名になればなるほど、自身のイメージを固定化する為にもいわゆる「型」、悪く言えば「パターン化」するのが常であるが、同氏にはその傾向が見られない。これは自身の創作パターンを固定せず、プロとしてあらゆるニーズに応えるという「プロのクリエイター」としての立ち位置が垣間見える。

広告・商品デザイン・イラスト・漫画などを幅広く手掛ける加藤ノブキさん
広告・商品デザイン・イラスト・漫画などを幅広く手掛ける加藤ノブキさん

一時期、モーターサイクルのみならず、観光地においても二次元の少女キャラクターが大量発生したことがあった。一部のマニアには歓迎されたが、一般のライダーや観光客にはどうであったのかは疑問に思う。

加藤さんが描くキャラクターは全て美しいが、実在するのでは? と思えるほどリアリティに溢れている。特にバイクと女性の作品はこれまでにはない「CCOOLな世界感」であり、世代・性別を問わずに支持されている。ライダーにとっての加藤ワールドは懐かしく、新しいのである。

二輪業界は、「サブカルチャー」との融合を一過性の流行とせずに、継続すべきである。加藤ノブキさんに限らず、「クリエイター」の発想は無限なので、絶えず連携を図り、お互いの創造力を化学反応させ、エンターティメントとして昇華させればいい。若いユーザーにバイクの魅力を、もっと多方面から訴求すべきではないだろうか?

我が国における過去のバイクブームの背景に、一体何があったのか? サブカルチャーとバイクブームの関係性を、改めて検証すべき時期に来ている。

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