公開日: 2021/03/19
更新日: 2022/09/06
1月16日と17日に行われた大学入学共通テストで、鼻出しマスクを試験監督に再三注意された受験生が、それに応じず失格になったというニュースは記憶に新しいだろう。この出来事を機に改めて注目されるようになった″鼻出しマスク〟問題。今回は、鼻出しマスクの何がいけないのかを確認していく。
マスクには代表的なものに不織布、布、ウレタン素材のものがある。種類ごとの効果については、豊橋技術大学の飯田明由教授が昨年10月15日に発表した「コロナウイルス飛沫感染に関する研究~マスクの効果と歌唱時のリスク検討~」というデータがあるので紹介する。これによると、スーパーコンピューター「富岳」を用いたシミュレーションの結果、1番効果を発揮するのは″不織布マスク〟であることが明らかとなった。
吸い込み飛沫量は不織布マスクが30%なのに対し、布マスクは55~65%、ウレタンマスクは60~70%と高い。吐き出し飛沫量についても不織布マスクが20%、布マスクが18~34%、ウレタンマスクは50%と、不織布が最も効果が高いことが分かる。このように、マスクによって防止効果は異なるのだ。ただし、この結果は不織布マスクを隙間なく着用した場合のこと。普段の生活で隙間なく着けることは難しく、また、不織布にも様々な種類があるため、一概に不織布マスクが最も効果があるとは言い切れない。
これらを踏まえた上で鼻出しマスクについて見てみると、咳による飛散を防ぐという効果はあるものの、露出した鼻から病原体が体内に入り込んだり、あるいは鼻から飛沫が出て周囲の人に感染させてしまうこともある。コロナに感染しない、そしてさせないためにマスクをしているにも関わらず、マスクの効果を減少させてしまうのだ。
鼻出しマスクをめぐる問題の1つに、注意の仕方がある。これについて、新潟青陵大学大学院の碓井真史教授は、ある新聞の記事の中で「しっかりマスクをして欲しい場面では、『違反者』扱いするのではなく、丁寧な言い方で注意するのが効果的だろう」と話している。入店時に有人の検温を実施している店舗では、鼻出しマスクをしている人に対して、鼻まで覆うようにお願いするシーンを何度か目にしたことがある。その際、ほとんど人は指示に従っている。
一方で、昨年11月には、地下鉄の駅で鼻までマスクを覆っていないことを注意した人が催涙スプレーをかけられた、という事件も起こっている。このように、言い方1つでトラブルにもなりかねないのだ。
また、1月中旬より、布マスクやウレタンマスクの着用を批判する “不織布マスク警察”という言葉が聞かれるようになった。正義感がこのような行動と結びついているのかもしれないが、自分の感情をあらわにし過ぎるのは、あまり良いことではない。
自分だけでなく周りの人を守るためにも鼻出しマスクをしないように心掛け、注意をする際にはその言い方に気を付けることが大切となる。キチンとマスクを着用することは、社会貢献に繋がるのだ。
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