公開日: 2022/07/28
更新日: 2022/09/06
トライアンフモーターサイクルズジャパンは6月21日、トライアンフが電動オフロードバイク業界をリードするイギリスの電動バイクメーカー「OSET Bikes」を買収したことを発表した。これは、トライアンフが2020年に発表したオフロードセグメントへの参入戦略の一環で、今後、両社はそれぞれの強みを生かしたモーターサイクルを共同開発するとしている。
息子のために電動オフロードバイクを作りたいと考えていたイアン・スミス氏によって、2004年に設立されたのが電動バイクメーカーの『OSET Bikes(以下、オセット)』。
日本では、あまり馴染みのないメーカーだと思うが、ヨーロッパでは知名度の高い電動オフロードバイク業界をリードするイギリスの企業だ。同社独自の電動パワートレインを搭載した車両は、イギリス国内では60以上のディーラーで販売されているほか、25か国以上に輸出。全世界で4万台以上が販売されている。設立以来18年間にわたり、オセットの製品は、この分野におけるベンチマーク(基準・指標)となっている。
現在のラインアップは、ホイールサイズが12.5から24.0までの7種類。12.5インチのモデルは、身長85cm以上が対象。これはだいたい2歳の子どもの平均身長ぐらいだ。ハンドルポジションの変更で115cmぐらいまで対応可能となっている。
その次のホイールサイズが16インチ。これは対象の身長が105cmから140cmぐらいまで。
その次が20インチ。身長125cmぐらいからが対象だが、ハンドルポジションを調整すれば大人でも十分に使えるサイズ感がある。もう、このサイズになると、オフロードやトライアルの「ごっこ」ではなく、本格的な走行も楽しむことができる。
冒頭で「息子のために」と書いたが、興味深いのは、スミス氏の息子さんの成長に合わせて、オセットの電動オフロードバイクも“成長”しているのだ。
このような背景を持つオセットならではの企画が、「OSET CUP」。これは、バイクで走ることを子どもたちに楽しんでもらうためのイベントで、世界各地で開催されている。
オセットは3歳ぐらいからの子どもに適した製品で、多くの子どもたちにバイク体験を提供しているが、それだけにとどまらない。設立から10年もかからないうちに、ユースナショナルトライアルシリーズでトップ5入りしたほか、グッドウッドフェスティバルオブスピード、MotoGP、ワールドスーパーバイク、マン島TTなどにおいても常連となっている。
トライアンフモーターサイクルズジャパンは6月21日、前述したオセットがトライアンフファミリーの一員になったことを発表した。その背景にあるのが、トライアンフが2020年に発表したオフロードセグメントへの参入戦略。その一環としてオセットの買収が行われたというわけだ。目的は「技術的な知見の共有」(トライアンフ)だという。今後もオセットブランドは存続し、それぞれ独立して活動していく。
また、原稿を書いている時点ではまだ発表されていないが、トライアンフが大学や他企業と共同開発を進めている電動バイクのプロジェクト『TE-1』の最終プロトタイプに関する発表が7月12日に予定されている。この電動バイクの領域に関しても、オセットのノウハウが活かされてくるものと思われる。
今回の買収にあたり、トライアンフ、オセットともにコメントを発表している。その一部を抜粋して紹介する。
「トライアンフとオセットは、若いライダーをオフロードライディングに駆り立てる最先端の新製品を双方の強みを生かして共同開発し、世界最高のモーターサイクルを製造していきます」(ニック・ブロアー/トライアンフCEO)
「引き続きトライアルやオフロードバイクのコミュニティーに貢献していきます。トライアンフがOSETに提供できるスケールメリットと市場での地位を活用しながら、当社製品全体の開発と革新を行うことができるより良い体制が整いました」(イアン・スミス/オセットCEO)
オフロードセグメントと電動化。2つのキーワードの文字通り『キー』となるオセットをファミリーに加えたトライアンフ。ユーザーへの提供選択肢が増えることで、また新しい展開も期待できるだろう。
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