公開日: 2022/10/10
更新日: 2022/10/10
広島県に本社を置く、1967年創業の株式会社バルコム(山坂哲郎代表取締役)。同社は四輪と二輪を扱うモビリティ事業をはじめ、飲食やレンタカー、不動産、宿泊、ITなど多岐にわたる事業を展開している。拠点は国内のみならず中国やシンガポール、ウズベキスタンにもおよび、従業員数は600人を超える。
二輪販売店としても高い知名度を誇るバルコムはハーレー、BMW Motorrad(以下、BMW)、インディアン、ピアッジオの正規ディーラー。国内・海外メーカーの中古車も扱い、中国・九州地方を中心にバイクショップを21店舗展開している。そんな同社だが、ユーザー満足度の最大化を目指す主力事業の一つとして、旅行業務に特化した「旅行事業部」を2014年、社内に設置。二輪小売業を営む企業の一部門として設置されているのは、とても希有なケースであり、これが同社の特長の一つでもある。そこで今回は、旅行事業部に焦点を当て、業務やツアー内容などについて紹介する。
旅行事業部は第2種旅行業者の資格を取得し、国内・海外のバイクツーリングツアーの企画を行っている。この資格について旅行事業部の吉岡健一さんは次のように説明する。
「旅行事業部は第2種旅行業として登録しており、国内・海外バイクツアーの企画を行っています。国内はスケジュールや宿泊施設、料金などをあらかじめ設定し参加者を募る、いわゆるパッケージツアーを取り扱っています。また、海外は受注型(オーダーメイド型)に限られますが、お客様の要望に寄り添った形で企画できるため、海外ツアーについても好評を頂いています」
旅行事業部では、自店ユーザー向けのツーリングも企画。今年は4年ぶりにハーレーのブルースカイヘブン、3年ぶりにモトラッドデイズが開催された。そのため、同部署では両イベントの企画も担当した。
「ハーレーとBMWの各店舗で、両イベントに参加するツーリング企画を実施しました。コース設定はともかく、ホテルの手配は負担が大きいため、旅行事業部が担当。合計約100名2泊分をリリース公開直後に予約しました」
この他、旅行事業部では、宮島や大久野島など瀬戸内の島々をクルーザーやヨットで巡る「せとうちプライベートクルーズ」や、広島の観光スポットをロールスロイスファントムに乗って観光する「ロールスロイスハイヤー」なども扱っている。
旅行事業部が企画する国内ツアーの中で最大のイベントが、ハーレーダビッドソンバルコム広島とモトラッドバルコム広島で2017年より毎年開催している北海道ツーリングツアー。両メーカーのバイク所有者であれば誰でも参加できるため、パッケージツアーとして扱っている。今年はハーレーが7月11日~16日、BMWが8月11日~15日に実施。店舗やホームページ、SNSで情報をリリースすると、1週間も経たずに満員となるほどの大人気企画となっている。
北海道ツーリングツアーの特長は主に2つある。1つ目は、飛行機で移動し、事前にBASのトラックで輸送した愛車を空港近くのデポなどで受け取り、すぐに出発できることだ。最終日もバイクを預けるギリギリまで走れるため、時間が許す限りツーリングを楽しめる。このように、北海道ツーリングツアーのバイク輸送は2020年より、BDSのグループ会社であるBASが担っている。この理由について、吉岡さんは以下のように説明する。
「見積りを依頼した際のレスポンスがよく、分からないことにも親切に対応してくれます。また、高品質輸送でありながら安価であることも決め手となっています。さらに、貸し切りのため、パニアケースやライディングウェア、シューズなどもまとめて送れる。そのため、お客さんからの評判も良いのです」
2つ目は、走るだけでなく、体験イベントを組み込んでいることだ。今年、ハーレーは「H・O・G北海道ラリー」に初参加。BMWについては毎年イベントを用意しており、今年は空港跡地で大型バス運転体験を実施した。過去には、鉄道運転体験や熱気球乗車体験などを行っている。
「マンネリ化を防ぐため、毎年異なるイベントを用意し、コースも変更。その結果、BMWの北海道ツーリングは定員15名ですが、半数の方が毎年参加してくれています」
このように、ユーザーを飽きさせない企画が功を奏し、北海道ツーリングツアーはバルコムの恒例イベントとして認知されている。参加者からは、「普段見られない北海道の大自然を満喫できた」「H・O・Gラリーに参加できたのはいい経験になった」「BAS輸送のため手荷物が少ないのは楽でした」といった感想が聞かれたという。
現在、旅行事業部が力を入れているのが海外ツーリングツアーの企画。前述のとおり、バルコムではユーザーからの依頼をもとに企画するオーダーメイドツアーを扱っている。過去には、2019年にルーマニアツーリングを実施。2020年には「ベスパで走るイタリアツーリング」「BMWで巡るヨーロッパアルプスツーリング」「モロッコ砂漠ツーリング」の3つが決まっていたが、コロナ禍により中止を余儀なくされた。今年は11月に、ハーレーとBMWで走るニュージーランド8日間ツアーを実施する。これは、関西と中部地方の2つのグループからどこか海外で走ってみたい、という依頼を受け、季節やコロナによる入国条件の緩和状況などを加味した上で吉岡さんが提案し決定した。
海外ツーリングツアーには吉岡さんが同行し、先導や通訳などを行っている。そんな同氏は、海外ツーリング専門会社に長年勤め、また自転車で世界一周をしたこともあるため、100ヵ国以上の渡航経験を持つ旅行のスペシャリスト。吉岡さんは、過去のキャリアが旅行事業部での業務に生きているという。
「海外でツーリングツアーをする際には、欧米等ではレンタル店でバイクを借り、砂漠やアフリカの荒野などのオフロードを走る際には、バイクだけでなくメカニックや先導ライダーも含めたチームとして契約してツアーを作ります。私は過去の経験から世界中のチームと繋がりがあるので、世界五大陸の国でツアーを企画することができます」
今日、国内をはじめ海外への旅行も緩和されているが、今後の展開についてはどのように考えているのだろうか。
「海外についてもパッケージツアーを扱える『第1種旅行業者』の取得を目指し、申請を行っています。年内には登録できる見込みです。ここ数年はコロナの影響により、思うように海外ツアーの企画ができなかったので、これからが勝負だと考えています。来年は飛躍の1年にするつもりです」
具体的なプランの一つとして考えているのが、韓国ツーリングだ。この理由は、バルコムが本社を構える『広島』という地域特性が関係しているという。
「いまは運航中止となっていますが、下関~釜山を結ぶフェリーはバイクを積み込めるため、韓国は日本で唯一、バイクと一緒に渡航できる国となっています。また、バイクの積み込みはできませんが、福岡~釜山間のフェリーもあるため、広島や福岡など中国・九州地方に住む人は関東の人とは違い、気軽に韓国に行き、愛車かレンタルバイクでツーリングを楽しむことができます。これらのフェリーは来年には再開すると思います」
この他、東南アジアに気軽に行ける短期間ツーリングや、ウズベキスタンのシルクロードを走るツーリングなども考えている。また、準備段階の企画として、レンタルバイクショップとのコラボによる国内ツアーがある。これは、宿泊を伴うツアーを扱えないレンタルバイクショップが、バイクツアーを手掛けるバルコムに依頼。現在、実現に向けて話を進めているという。
バイク購入後の楽しみを創出し続けている旅行事業部。最後に、今後の指針について吉岡さんに聞いた。
「多くの人が北海道や海外をバイクで走りたい、という夢を持っています。けれども、時間がなく、準備も大変なため、なかなか実現できずにいます。そんなライダーの夢を叶えるのが旅行事業部の役割なのです。走ってみたい国があれば、ぜひご相談下さい!」
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