公開日: 2024/10/01
更新日: 2024/10/14
いかにプロレーサーであっても、モータースポーツ関連のみで生計を立てられる人物は稀である。そんな稀有な令和の女性ライダー「小玉絵里加」の現在と、見据えている未来について話を聞いてみた。
プロライダー小玉絵里加の活動は多岐に渡る。その主戦場はMFJ全日本トライアル選手権レディースクラス。今年で参戦9年目を迎えた。日本国内では知名度は高くないトライアルを、ここまで続けてこられた理由とは何なのか。
「子供の頃からレースや練習を通して得られる達成感が、トライアルの魅力です。それよりも、ずっと悔しい気持ちを抱いていることが継続できる大きな理由かもしれません。納得できずに、まだまだ自分の可能性を模索しているんです」
2016年に小玉さんの提案が実を結び、全日本トライアル選手権に「レディースクラス」(以前はIBクラスで男女混走)が開設された。女性ライダーが躍動する姿は、新たなトライアル・ファンを獲得。現在活躍する10代の選手達も、レディースクラスが無ければ存在しなかった可能性がある。その一方で、競技人口減少と高齢化がトライアル界の抱える問題となっている。
「現在でも一般二輪ユーザーさんの認知度は低いと考えています。大きな理由に国内4メーカーに市販車が存在しない現実があります。ナンバー付きトライアル車が発売されれば、80年代のようなブームが起きるかもしれない。私達の環境も大きく変わると確信しています」
トライアル普及を目指して、二輪月刊誌でトライアルコーナーを連載中、メディアに変化は起きている。2016年から地元の奈良県と関東でも定期的にスクールを開催。京都市の衣笠児童館ではNPO法人の依頼で、子供達にバイクの楽しさを教えている。生徒は5歳から60歳までと年齢層も幅広い。小玉絵里加スクールは「バイク全般の運転スキルが上達する」と大好評でリピーター率も高い。トライアルの魅力=バイクの魅力に参加者は気付かされるという。
「人それぞれ、かける言葉は違います。その人が一番早く上達できるポイントを見付けるようにしています。私は不器用で遠回りをして上達したので…。『子供の頃に今の自分に教わりたかった』という感じですね」(笑)
本年は自身の新たな挑戦として、XCRスプリントカップ北海道ラリー・XC3クラスに四輪のジムニーで参戦を開始。
「オフロードを走るという共通点はありますが、ハイスピードや四輪の操作に関しては未熟な部分はまだあります。二輪ライダーが四輪レースに参加することに賛否はありますが、ヨーロッパではライア・サンツ(14回の世界トライアルレディースチャンピオン。現在は四輪に転向し、ダカールラリートップ10入り)のように成功を収めているトライアルライダーは珍しくないんです。でも日本人の女性でそれを成し遂げた人はいません」
レディースクラスの開設、二輪誌の連載、TV出演でも含めて今回のラリー参戦も「先駆者」を目指す、小玉さんらしい活動であると言える。
実家が二輪車販売店である小玉さんの日常生活に、バイクは当たり前に存在していた。子供の頃から父親の後ろに乗ってバイクに親しんだ。全日本選手になってからもツーリングには積極的に参加し、大型二輪免許も所持している。新旧どんなバイクでも乗りこなすスキルは、トライアルによって培われたと自負している。
「モータースポーツは危険と言われますが、プロライダーは危険予知ができるので、安全運転です。そんなライダーの模範ともなり得るトライアル競技を、人気スポーツの領域まで押し上げたいんです。古き良き考えや文化には心から感謝していますが、目まぐるしく変化する世界の中で、二輪業界は取り残されていると感じています」
パリオリンピックにおいても、様々な新カテゴリーが開設される中、モータースポーツ関連(電動バイクが参戦するトライアルは屋内で観戦することが可能)は皆無であった。
「このまま競技人口が減少すれば、いずれプロスポーツとして成立しなくなる。10代が数パーセントしかないトライアルの世界には、選手が輝ける場所がありません。盛り上がっているプロスポーツを参考にして、新たなトライをしないと、10年後どころか5年後すら見えない。旧世代が固執する考えを改めて、若い世代の感性に活路を見出す、そんな「時代」になりました。競技をしていれば安泰ではなく、スポンサー企業にどのようにアピールするかも、選手自身が考えなければならない状況です。SNSも先入観を持たずに歩み寄って活用すればいい。二輪業界全体はすぐに利益に繋がらなくても、若者やマイノリティの意見に耳を傾けるべきです」
まさに二輪世代とZ世代との中間に位置する小玉さんは、新旧のバイクユーザーを繋ぐ役割を担っていると言えるかもしれない。
「私も全日本に参戦する限り、チャンピオンを目指します。でもそれだけでは生きていけない現実があります。その中でモチベーションの維持や、フィジカルの調整はとても難しいです。でも次世代にバトンタッチするにはまだ早いとも感じます。自分の基盤であるトライアルも、四輪ラリーやメディア活動も全て、自分で掲げた新たな目標に向かって、今後も走り続けていきたいです」
小玉 絵里加(こだまえりか)
プロライダー、1988年12月21日生まれのA型。奈良県生駒市出身。MFJ全日本トライアル選手権レディースクラスに参戦中。現在はランキング3位。レディースクラス会会長。2024年からXCRスプリントカップ北海道ラリー・XC3クラスに参戦。出光イーハトーブトライアルアンバサダー。バイクイベント・コンテンツ提供を目的とした団体・オフファームの代表を務める。
Home | Erika Kodama Official Website/ 小玉絵里加 オフィシャル ウェブサイト
トライアルライダー小玉絵里加公認のオフィシャルサイト。2013年〜2014年2年連続日本代表として世界選手権出場。2015年全日本トライアルレディースクラス設立
Erika Kodama Official Website/ 小玉絵里加 オフィシャル ウェブサイト
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