公開日: 2025/11/07
更新日: 2025/11/14
中古車を販売するにあたり、販売店側がユーザーに開示しておくべきモノは何か。今回はこれをテーマにしてみる。当たり前のことではあるが、ユーザーが知りたい情報の一つは、興味のある車両のコンディションだろう。これを提供するための手段の一つとしては、点検整備記録簿の開示がある。法定点検の時期はもちろん、過去に実施してきた点検やパーツなどの交換履歴、走行距離などが分かるが、すべてのバイクに記録簿があるとは限らない。むしろ、ないバイクのほうが多いだろう。記載が法律で定められているわけではないことも関係するものと思われる。
仕入れたバイクに付属してなければ、陸事で正規品を購入するやり方もある。点検整備記録簿のテンプレートは法的に定められたモノ。記載内容も規定されている。購入が最も手っ取り早い方法だと思われるが、独自の点検整備記録簿を制作するという方法もある。
ショップ独自のオリジナル記録簿を作る場合は、正規版の内容を網羅したうえで、プラスアルファを加えるのがおすすめ。これについて独自の記録簿を使っているという販売店Aは、こう説明する。
「陸事で購入できるものには『原動機』や『動力伝達装置』『制動装置』などの項目が記載されていますが、それらとは別に、利便性を高めるために、「整備履歴」として、作業内容や交換したパーツ名などを記載するスペースや、担当メカニックの名前、費用明細、次回点検時期などを設けています」
具体的には、スロットルやクラッチワイヤーの動きや注油状態、テスターを用いたECU故障コードの有無の確認、バッテリーのCCA値なども盛り込んでいるという。
オリジナル記録簿作成のメリットとしては、以下のことが考えられる。一つ目は『ショップのブランディングの向上』。店名が入った独自の整備点検記録簿を作ることで、ユーザーに対し、プロフェッショナルなイメージを与えることができる。これにより、店の信頼性向上につながるものと思われる。
二つ目は『業務効率の向上』。記録簿のテンプレートをベースとする場合でも、自店の点検項目の基準や重点的にチェックしている項目を新たに追加するなど、自店の作業項目に基づきレイアウトをカスタマイズすることで、スムーズな記録が可能となる。三つ目は『ユーザーへのアピール』。買うにあたり、購入する側が特に気にするのは修復歴や消耗品の状態などだろう。この辺りを明確に記載し安心感を与えることで、自店の顧客として定着してくれる可能性は高まるものと考えられる。
その他、記載しておくべき項目としては、保証範囲や保証期間など店のサポート体制が挙げられる。前者は保証の対象となる部品や不具合の範囲(エンジン、電装系など)。消耗品は対象外となるのは普通だが、トラブルの元になることがあるため、記載は必須だ。また、カスタム車両についても対象外とするところが多い。
「純正部品以外のパーツを装着している場合、その品質や取り付け方に起因する不具合は、保証の対象外としています。また、カスタムが原因で他の純正部品に不具合が生じた場合も対象外です」(販売店B)
保証については、ユーザーとの信頼関係を構築し、トラブルを防ぐためにもとても重要。点検整備記録簿の裏面などに明記するか、保証書と一体化して作成するのが一般的だ。
いまは口頭での説明にとどまるショップはまずないと思われるが、例えばショップ独自の保証とメーカー保証が残っている場合の継承手続きなどは、文書でキッチリと明確化しておく必要がある。また、ロードサービスなどについてはケースバイケースであると思われるが、基本対応については明記しておくべきだろう。
点検整備記録簿とは関係ないが、こんな話もあるので紹介する。これは販売店Bが自店で初めて購入したユーザーに提供しているという『セキュリティ対策情報』に関する話。わりと興味を持って聞いてくれるのだという。
「バイクの保管環境について、必ずヒアリングを行います。セキュリティ問題は、過去に盗難などに遭遇した経験のない人は、必要性は理解していても、どこかに『自分は大丈夫』という意識があります。ウチでは過去の被害に関する実例を挙げ、さらには関連動画を見せたうえでチェーンロックやU字ロック、ディスクロックなど視覚に訴える基本的なものから、アラーム型、イモビライザー、GPSトラッカーなどについてもひと通り紹介します。ここでのポイントは、決して押しつけはしないこと。興味を見ったお客さんは、細かく聞いてくるので、その時にはさらに詳しい情報を提供します。四輪でセキュリティ対策を行っているお客さんほど積極的ですね」(販売店B)
やはり店ごとに工夫を凝らしているのが分かる。点検整備記録簿もそうだが、目につきにくいところでの工夫の積み重ねがユーザーの安心感や販売店に対する信用・信頼につながるポイントになりそうだ。
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