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実践しているバイクショップに学ぶ教育・指導のノウハウ!!

公開日: 2026/03/12

更新日: 2026/03/18

2026年の労働環境面における懸念材料として、「人手不足」を挙げた企業は全体の44.5%に上ることが帝国データバンクの調査で分かった。2社に1社はそう感じていることになる。だが、人手不足問題は一朝一夕で解決できる問題ではない。現時点では人材確保そのものが難しいのが現実。そこで、視点を変え人材育成・定着の側面から対策を探ってみた。

有効求人倍率は5.45倍と、バブル期のそれを大幅に上回る

※資料:帝国データバンク
※資料:帝国データバンク

人材不足に終わりはないのか・・・・。

先頃、帝国データバンクが発表した「人手不足倒産」に関する調査によると、2025年の倒産件数は427件(負債1000万円以上・法的整理)発生。前年対比では85件増の24.9%となった。年間400件を超えたのは2025年が初。記録更新は、これで3年連続となる。以下、同社が発表した内容について確認してみよう。

業種別では、建設業が113件。100件を超えたのは今回が初となる。物流業は52件。この2業種は2024年4月から時間外労働の新たな上限規制が設けられたことも関係し、過去最多となった。他の業種では老人福祉事業(21件・前年比プラス7件)、労働者派遣業(13件・同プラス5件)、美容業(11件・同プラス2件)、警備業(10件・同プラス4件)などが目立つ。これらに共通して言えるのは、人への依存度の高い労働集約型の業種であること。資金面ではなく人手不足に起因する倒産だ。

従業員ベースでは、全体427件のうち77.0%に相当する329件が「従業員10人未満」の小規模企業。従業員1人が退職してもダメージの大きいところも多く、これらが前述の人手不足倒産の実態となっている。

帝国データバンクでは「2026年の景気見通しに対する企業の意識調査」も実施しており、昨年12月22日に調査結果について発表している。これによると、2026年の労働環境面における懸念材料として「人手不足」を挙げた企業は全体の44.5%、景気回復に必要な政策に「人手不足の解消」を挙げた企業は37.0%(複数回答)だった。項目別ではそれぞれ2位にランクされており、人手不足の解消・労働力の確保が経営に影響を及ぼす喫緊の課題であることがハッキリと分かる。

こうしたなか、「年収の壁」は103万円から160万円に引き上げられ、来年度は178万円となることが税制改正大綱に盛り込まれた。これにより、正社員以外の労働者の「働き控え」が緩和されれば、人手不足の解消に結び付くことも考えられる。

事業者を取り巻く人材面における環境は、前述の「年収の壁」の引き上げといったプラス要素はあるものの、全体的には厳しい状況にある。二輪業界は言わずもがなだ。

厚生労働省の統計データによると、二輪・四輪を含めた2025年における整備士の有効求人倍率は、約5.45倍となっている。全職種の平均は1.22倍。つまり整備士募集については、仕事を探している人1名に対し5件以上の販売店からの求人があるということ。ちなみに1990~1991年のバブル期における有効求人倍率は、1.4~1.46倍という超売り手市場だった。つまり、全体ではほぼ拮抗、整備士においては、比較にならないほどの数字なのだ。

来店管理で効果を発揮する「WEB予約システム」

来店管理で効果を発揮する「WEB予約システム」
来店管理で効果を発揮する「WEB予約システム」

日本自動車整備振興会連合会(日整連)が実施した2024年の調査では、全体の47.2%が「整備要員が不足している」と回答している。前述の帝国データバンクの調査で「人手不足」との解答である44.5%をも上回る数字だ。これには構造的な問題もあるため、一朝一夕では解決できないが、手を打つべきことはあるだろう。ただ現時点では人材確保が難しいのが現実。そこで、見方を変え人材育成・定着の側面から対策を探ってみる。それにあたり、大きなポイントの一つとなるのは労働環境の問題。これを踏まえたうえで、まずは、販売店業務における①「作業効率」から見てみる。

かなり広範にわたるテーマだが、その“入口”となるのは来店管理だろう。これをストレスなく行うのに効果を発揮すると思われるのが、「WEB予約システム」。すでにメーカー系ディーラーでは、コロナの頃から導入が進んでいるが、一般の店でも導入することは可能。これにより電話対応や飛び込み来店客への対応は減少する。また作業スケジュールが平準化することで、現場の負担やタイムロスも減るだろう。

もう少し掘り下げてみよう。二輪販売店には、常に忙しいイメージがある。この根本原因は何か。販売店Aでは、コロナ禍以降、修理が増大し、いまでは販売と修理・メンテナンスのウェイトは半々になったという。また販売店Bでは、業務の90%が修理となり、休みもほとんど取れない状態。そのため修理対応は自店客優先に切り替えた。二輪販売店が常に忙しい最も大きな理由について、A店とB店は異口同音に「いつ、どんなお客さんが、どういう目的で来るのか分からないから」と言う。

これを予約制とすることで、予約のない時間を他の作業に充てることもできる。また、休みが取れなかった日の振り替えに充当することも可能だろう。前述の販売店Bでは、あまりにも作業が多いことから、火曜日と水曜日は完全作業日としたうえで、両日はシャッターを閉めた状態で店内で作業を行っている。理由は一見客の来店を制限するため。この状態で「完全予約制」を導入し受注を整理すれば、もう少し余暇を充実させることができるかもしれない。予約制の導入理由に関するユーザーへの説明については、「お客様と対面し、ジックリと時間をかけて話をお聞きしたいから」が最適。これにより「好まざるユーザー」の来店は減少するものと考えられる。導入方法については、クラウド型の予約システムを選ぶのが最もラク。自店のサーバー構築が不要で、設定後すぐに運用を開始できるのが魅力だ。

次に抑えておきたいのは②「休日休暇の拡大」。ここ10年ほど前から隔週で連休を取るようになった販売店が増加している。また、メーカー系ディーラーには平日2連休の店もある。

生産性に関する調査研究などを行うシンクタンク・公益財団法人日本生産性本部は「レジャー白書2025」を発表。このなかで、仕事よりも余暇を重視している人の割合が67.5%に上り、過去最高となったことを明らかにしている。

実際問題としては、「休みを増やしたら店が回らない」「お客さんに迷惑が掛かる」という懸念もあるだろう。仮に水木で連休にしたとする。そうなるとお客さんが来れなくなるかも、という心配も考えられる。だが、いまはどのショップに行くにしても、そこが初めて行くところであれば、定休日や営業時間などについて調べてから行くのが普通。そのため、一見客については問題ないものと思われる。常連客に関しては、むしろそれに合わせて来店してくれるようになる可能性は高い。

もちろん、週休二日にするには抵抗がある、という意見もあるだろう。そこでまずは、「第2・第4水曜日を定休日に加える」など、完全週休二日制に向けた“助走期間”を設けるのも一つの方法。ポイントは顧客への説明だが、「ユーザーへのサービス維持・向上のため、それを支えるスタッフの休息確保を重視する」ことを伝えれば、マイナス意見を持つユーザーは、限りなく少数になると思われる。

スキルアップの到達レベルを明確にし意欲を引き出す

スキルアップの到達レベルを明確にし意欲を引き出す
スキルアップの到達レベルを明確にし意欲を引き出す

よく使われる言葉ではあるが、③「情報の見える化」も効率化に関するポイントとして挙げられる。ChatworkやLINEWORKS、Trello、あるいはグーグルカレンダーなど、スタッフ同士の共有アプリを使い作業進捗などについて情報を共有する。こうすることで、何か問い合わせがあっても、どのスタッフでも即座に回答することができるようになる。「確か〇〇だった」と記憶に頼るよりは、正確性はもちろん作業効率も格段にアップする。

最近、増えているのが、販売店による④「自前育成」。これは即戦力となる経験者を採用するのではなく、未経験者を自前の教育体制で育て上げること。これについて、フリーライターの隅本辰哉さんは、次のように説明する。

「この背景には、整備士の有効求人倍率が高く、経験者も少ない。いても給与面で対応が難しい、などの現実的な問題があります。そこで、整備資格はないけど『バイクが好き』『メカ好き』といった若者をターゲットにします。その販売店の考え方や技術を最初から教えることで、店のカラーが着きやすくなります」

では、どのようなステップを踏めばいいのか。隅本さんはさらに続ける。

「アルバイトや契約社員として採用し、店で洗車やオイル交換などの基本的な作業から始まり、タイヤ交換などの軽作業を覚えながら1~2年ほどの実務経験を積ませるのが一般的です。1年が経過すれば、3級二輪整備士の受験資格が得られるので、受験させます。この時、絶対的にお勧めなのは、BDSさんが展開しているBDSテクニカルスクールへの入校です。3級取得後は、さらに実務を積みながら2級へとステップアップできますからね」

確かに無資格だと分解整備などは行えないため、仕事も限定される。本当の意味での効率化は進まないことも考えられる。周囲を見渡してみると、ホンダドリームジャパンは「ホンダドリーム テクニカルセンター」を運営している。これは同社が全国に展開するホンダ車の高度な整備・修理に特化した専門施設。新車の納車前点検や難度の高い整備、サービススタッフの技術研修を主に行っている。高品質なバイクライフを技術面で支えているのだ。

作業の様子をスマホで撮影し、それを教材として活用

作業の様子をスマホで撮影し、それを教材として活用
作業の様子をスマホで撮影し、それを教材として活用

ただ、これは大手企業での取組み。そこで一般的な販売店での事例を紹介する。販売店Cでは作業自体の棚卸しと「見える化」に取組んでいるという。

「私は以前、一般企業のサラリーマンだったのですが、その時のやり方です。目標、つまりゴールを明確にすると、自分の今現在の立ち位置がハッキリするので、気持ちが前向きになるんです。具体的には、整備作業を難易度、つまりレベルごとに分けてチェックシートを作り、それぞれをクリアするごとに手当をアップします。ウチではレベル①が展示車両の出し入れや洗車、納車整備、そして空気圧チェックなどです。レベル②はオイル交換、タイヤ交換、ブレーキパッド交換など。そしてレベル③がトラブル原因を推測し対処する整備全般です」

レベル②にパッド交換があるが、これは分解整備であるため、国家資格を持った整備士でないと対応できない。だが、整備士資格をもつスタッフの指導の元に作業を行い、最終点検はスタッフが行えば問題はない。同店では、こうしたスキルアップ手順と手当をセットにすることで、スタッフのやる気を引き出しているという。

レベルごとの作業を覚えてもらう時のポイントとして、販売店Cでは作業のやり方を動画として残し、それを教材として活用しているという。

「スマホで簡単に撮影しています。撮る時、ただ黙々と撮影するのではなく、ポイントごとに言葉を交え、必要に応じて指さしを行います。自分が解説者になった気持ちですね(笑)。これを残しておくと、見ながら作業ができるのはもちろん、店でも自宅でもちょっと時間があれば見ることができるので、効果的なんです」

この方法だと、分からなくなった時にちょっと確認することもできるし、先に見て貰ったうえで指導を行えば、理解も早いし予め疑問点も明確になる。教える側の手間が省けるのも大きなポイントだ。

人材不足の実態と、それを回避するための取組みや仕組みづくりについて、例を挙げながら説明してきたが、新しい取組みを行うには時間と労力はもちろんだが、コストも掛かる。これを少しでも補うことができる制度がある。厚生労働省の「人材開発支援助成金」だ。これは二輪販売店(事業主)が自店のスタッフを対象に、整備や修理など日常の作業に関わる専門知識や技術に関連する研修を行うと、それに要した費用の一部を助成してくれる制度。要件はあるが、これを利用しない手はない。

二輪業界に身を置く以上、人材確保・定着、そして育成問題は、避けては通れないもの。おそらく多くの販売店では程度の差こそあれ、これらの問題を抱えているものと思われる。もし、いまは大丈夫だとしても、早晩、問題に直面する可能性はある。どうするべきか、方向性だけでも考えておく必要はあるだろう。



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