公開日: 2022/09/05
更新日: 2022/09/06
トレンド情報誌『日経トレンディ』では現在、注目されている、あるいは今後、ヒットが予想されるモノ・コト・サービスを紹介しているが、昨年発表された「2022年ヒット予測100」で4位となっていたのが、『次世代自販機』。
どのような次世代自販機があるのだろうかと、ネットでいろいろと検索し、「これ、面白そう」「これ、何だろう」と思うような情報や画像を見ていくと、頻繁にヒットする社名がある。それが、東京都千代田区にある『株式会社スキマデパート(以下、スキマデパート)』だ。 同社が展開しているのが、自動販売機ならぬ『自由販売機』。これは何かというと、自販機の主流である飲料に限らず、あれこれ売れる物販特化型の販売機。だから『自由』販売機。これまでに、実に様々な商品を売ってきている。その一例を、スキマデパートの事業戦略部・執行役員・事業戦略部長の岡部祥司さんに聞いた。「飲料のほか、カレー、アニメのコラボグッズ、ブルーボトルコーヒーさんのお菓子、ベイスターズさんのグッズなども自販機で販売してきました」 ほかにも、今年2月にラゾーナ川崎プラザで行われた『500円グルメ自由券売機』。これは1000円以上の人気メニューがランダムで出てくる500円のスペシャルチケットの販売。
その他、昨年10月、名古屋駅ナナちゃんストリートイベントスペースで『美酢(ミチョ)×ナナちゃん』の商品サンプリングも展開している。また今年1月、クラウドファンディングサイトの『CAMPFIRE』が、北千住のマルイで開催した『CAMPFIRE物産展』に自由販売機を提供した。これは大型デジタルサイネージで商品情報を表示させるほか、QRコードから商品の購入を可能としたもの。その場では商品が出てこないという、今までの自販機とは一味違った自販機だ。もちろん、いま紹介したのは、ほんの一例に過ぎないが、これだけでもいかに自由販売機が『自由』であるかが理解できるはずだ。
ここまでの話では、「自販機ビジネスやベンディングサービスの話」と思われるかもしれない。確かに、スキマデパートは自販機を活用したビジネスを展開しているが、自販機ありき、の会社ではないのだ。そのヒントはスキマデパートという社名にある。
「街を歩いていると、空いている場所ってわりとありますよね。ココは誰の物件なのかな、とか、使われている様子がないけどもったいないな、という場所です。不動産屋の立場でいうと、何百億、何千億という単位で動かしている世界の中では、小さな土地は見向きもしないし、そのスペースを何とかしようという気にもなりません。でも、そこを活用できるようになれば不動産自体の価値も上がるし、エリア全体の魅力も上がる、そんなことが生み出せるのではないかと考えました。その発想がスキマデパートの出発点です」
現在、コンビニエンスストアは約5万6000店舗あり(2022年6月度/JFA調べ)、100円で美味しいコーヒーが飲めて、マルチマネーで買える。
「自販機はそのほとんどが現金扱い。『誰が買うの?』って話です。そのままだと成長性がないので、スペースを活用する会社として新しい価値を提供しましょうということで、『世の中のもったいないを価値に変える』というテーマを掲げ、スキマデパートという会社名にしました」
シェアリングエコノミーという言葉をご存知だろうか。総務省によると、『典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある』という意味だ。シェアリングエコノミー、つまり、遊んでいたり使われていなかったりする、もったいないスペースのシェアリングがスキマデパートの目指すところ。
「スペースを活用する際、キッチンカーを置くとか、大道芸人が来て何かするとか、何かモノを販売するとか何でもいいのですが、自販機って、小さな場所を最大限に活かす優秀な機械だなと実は思っていました。ただ、以前、弊社は自販機を扱っておらず、むしろ、自販機メーカーさんはライバルでした。使われていない場所を借りようとしても、私たちよりも高いお金で借りられてしまう。『何なのだろう、この人たちは』と思っていましたね。そのような中、8年前に自販機の会社をM&Aで取得しました」
自分たちでも自販機が扱えるようになったスキマデパートだが、自販機だけに頼るということはしない。
「自販機がどうのではなく、小さな場所をどう活かすのかとか、世の中のまだまだ使われていない『もったいないものの価値』をどのように変えるのか、という方向性で進んでいこうと考えています。だから、ある時は自販機を使いますし、ある時はキッチンカーを置けばいいじゃんって時もあります。また、我々はスモーキングスペース『paspa(パスパ)』もやっていますので、今回はパスパにしましょうとか。そのほか、電動キックボードのシェアリングサービスのポートとして貸したりもしています」
日経トレンディの『2022年ヒット予測100』で次世代自販機が4位になってから、メディアからの取材依頼が増えているというスキマデパート。しかし、同社にとって、主役は『スキマ』。自販機はスペースを活用する手段の一つに過ぎないのだ。
スキマデパートでは、スペースのシェアリングのほか、データビジネス、広告、物販ビジネ様々な商品を扱うことができる自販機の筐体をラッピングすれば、それがそのまま広告にスも展開している。この4つがバラバラではなく密接に絡んでいたりもする。例えば広告。
「自販機自体、設置すると結構目立つので、自販機にラッピングすることで、いわゆるOOHメディア(オーエッチ=Out of home/屋外広告)として使って頂いたりしています。最近は、モノを売るというよりもプロモーションとか広告に使って頂いているケースが増えてきています。自販機を広告と捉えることもできる。例えば、駅にバイク関連の広告をラッピングした自販機を置いて『駅の自販機でバイクが買えます』とやった場合、実際に売れるかどうかは別として、強いインパクトは残せますよね。オークションもできます。画面にタレントグッズを表示しておき、それが欲しいと思った人がボタンを押すとQRコードが表示されて、そのリンク先から応札してもらい、オークション終了後に一番高い金額を入れた人が購入できる。そんなことも技術的には自販機で可能です」
今後の展開として考えているのは、サイネージの機械はオンラインで直接つながるので、オンライン化をさらに加速させること、と岡部さん。 今までの自販機は、お金を入れてボタンを押せば商品が出てくるというもの。これからは買いたい人と売りたい商品をつなぐ接触ポイントとしてのポジション。「ただ、売るモノは何でもいいのかというと、それは違うと考えています」
もちろん、ここでも出てくるのが『もったいない』というキーワード。
「企業さんが、これはもう使わないけどもったいないな、というものをECサイトに載せてもらい、それを自販機を通して購入してもらう。そして、モノの売り方とか、場所の活かし方がどんどん変化していく中で、私たちは何を提供していけるのか。それを暗中模索している最中です」
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