公開日: 2023/08/29
更新日: 2023/09/05
今日、食料品・電気・ガソリン代など、様々な品目で値上げが相次いでおり、物価高騰の勢いに給与の増加が追い付いていない状況が続いている。このような中、厚生労働省の諮問機関である中央最低賃金審議会は7月下旬、2023年度最低賃金の目安を決定。大幅な引き上げが実施され、初となる全国平均の時給が1002円と、1000円の大台を突破したが、この背景には何があったのだろうか。
最低賃金とは、雇用主が労働者に対して最低限支払わなければならない賃金で、支払わない場合には罰金が科せられることもある。労働・経営者の代表、有識者が物価の推移や、賃上げの状況、企業の支払い能力などを参考に議論し、目安を決定。そして、都道府県ごとに地域の実情を加味して、それぞれで金額を決めていく仕組みとなっている。
今回の決定を踏まえ、東京都は2022年度の金額(1072円)から41円引き上げ、1113円に設定。いままで、東京都の引き上げ額は昨年実施された31円が最高であったが、今回はこれを大きく上回る結果となった。なお、2023年度の最低賃金は、10月から適用される見通しとなっている。
ちなみに、全国の最低賃金は2012(749円)~2022年(961円)までの10年間で212円上昇。近年、大幅な引き上げが続いており、この10年間で6回も過去最高を更新している。
全国の最低賃金が、大台の1000円を突破した背景には、政府の後押しがある。今年3月に行われた政府と労働・経営者の代表による「政労使会議」で岸田総理は、「今年は1000円を達成することを含め最低賃金審議会で明確な根拠のもと、しっかり議論いただきたい」と発言。また、岸田総理が掲げる『骨太の方針』でも、時給1000円を達成することを含めて審議会で議論を行うことが明記されている。つまり、話し合いを行う前から、1000円達成が前提となっていたのだ。
ただ、国際的にみれば日本の最低賃金は、依然低い水準となっており、アメリカやイギリスなどと比べるとかなりの差が付いている。現に、アメリカに本社を構える会員制大型スーパー「コストコ」では、同国の賃金水準を基準とし、全国一律で時給1500円以上に設定して人手を確保。日本企業との差は明らかとなっている。
一方、日本企業でも沖縄の国際通りで時給を2000円に設定し、求人を行った飲食店もある。けれども、必要な人数を確保することができず、人手不足の深刻さが露呈するカタチとなった。
ここ数年、物価上昇の高止まりが続いているだけに、今後も継続的な最低賃金の引き上げが行われることは間違いない。言うまでもなく、最低賃金の問題は二輪業界にも関係している。人手不足も深刻な状況であるだけに、販売店の負担は大きくなるばかりだが、既存スタッフを失わないためにも、給与の増加は不可欠となる。今後もこの課題に向き合い、適切な対策を講じていくことが求められている。
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