公開日: 2024/02/15
更新日: 2024/02/15
25年前までは、新車販売店として稼働していたスエザキ。ある時期を境に中古車販売へとスイッチした。比率は90%が中古。販売スタイルまで変わった。当時、市場に与えたインパクトは大きく高い注目を集めた。その後、様々な壁に突き当たるが、それを乗り越える術は、先代の隆氏からの薫陶であり、それこそが末崎社長にとってのバイブルであった。
店舗や敷地面積の広さは、二輪販売店にとって自店の魅力を存分に引き出すための強力な武器となる。例えば在庫台数。敷地が広ければ、それだけ多くのバイクを展示することができるため、ユーザーの選択肢は広がり、集客力も高まる。
福岡県筑後市の県道「久留米築後線」沿いに拠点を構えるスエザキサイクル商会(末崎隆太社長)は、1000坪もの敷地面積を有する広大な店舗。これを活かし、かつては常時350台もの在庫が揃っていたという、県内でも屈指の販売店だ。
同店の創業は古く、自転車販売店を立ち上げた頃にまで遡るが、二輪販売店としてスタートしたのは1972年であるため、末崎社長は同年を実質的な創業年として位置付けている。立ち上げたのは、末崎社長の父、隆氏。末崎社長は隆氏に対する尊敬の念を隠さない。それは、取材中、随所に感じられたもの。ある種のカリスマ性とも言えるものだが、これについては、ポイントごとに追って紹介する。
末崎社長はホンダ学園出身。卒業後、大阪の二輪販売店で7年間ほど修行を積み、その後家業に就いた。そして2019年、先代の後を継ぎ、代表取締役となった。創業から50年以上が経過するが、末崎社長は同店における礎を築き隆盛を極めたのは先代である、という強い思いを常に抱いている。見た目の大きな変化は冒頭で記した在庫台数。かつては最も多い時で350台。平均でも300台は在庫していたというが、現在はその約5割にまで抑えている。これにはある理由があった。
「ここに移転したのは2006年で、それ以前は八女市というところで営業してました。当時は敷地が150坪だったので、店舗というよりは、倉庫みたいな感じでしたね。とにかくメチャクチャバイクがあるな、というのは誰が見ても分かる状態でした。取り扱いは新車のみ。基本は原付から大型までオールジャンルでした。店のどこを通ってもバイクが確認できる、ということが一番のウリでしたね。台数がどんどん増え、どうしても収まり切らなかったため、駐車場にも置いていたほどでした。あまりにも手狭になったので、店舗の裏に150坪の土地を購入し、そこに150台ほどのバイクを野ざらしの状態で置いていました。私が家業に就いた2005年がピークでしたね。もう完全に飽和状態。やむを得ずその翌年、ここに移転したわけです。ゆとりをもってバイクを見ていただけるよう展示方法を変更し台数も調整しました」
その後、先代の元で今度は経営のイロハを学び2019年に代表の座を譲り受けた。先代は会長職として業務に携わっていたが昨年、引退したという。先代の現役から退く決断に絡み、同氏の存在について、次のように語る。
「これからの時代は、いままでにも増して変化速度が早くなるでしょう。かなりの覚悟が必要だと感じているので、いつまでも携わっていてほしい、という気持ちはあります。でも、それだと私自身が甘えてしまう。いつまでもおんぶにだっこというわけにはいきませんからね。でも、父の存在感は、とてつもなく大きいです。意見が合わないこともありますが、それでも『凄いな』という気持ちは、社長となったいまも感じています」
先代の凄さとは何か。聞くと、真っ先に挙がったのは、仕入れの目利きであった。末崎社長の目には、「こんなバイク、絶対に売れないよ」と映る車両を仕入れてくることが何度となくあった。だが、そう思ったバイクに限ってすぐに売れる。末崎社長をして、目利きは先代には全く及ばない、と言わしめるほどなのだ。
「かなり以前の話ですが、ゴールドにオールペンされたZZR1100がオークションに出品されていたのです。それを見た瞬間、コレ、絶対に売れないだろう、と思ったのですが、後日、なんとその車両がウチに届いたのです。父が知らない間に仕入れていたんですね。『絶対売れるよ』と父。私は懐疑的でしたが、なんと数日後にお客さんがついた。直感的な判断だと思いますが、時代を読む目にかなり長けているんです。これは正直、私にはなかなかマネができないところだと思ってます」
先代は、末崎社長の決定に対し反対することはない。けれども、ちょっとしたアドバイスやサポートを行うことはある。「こんなバイク、あったらいいんじゃない?」。日常会話のなかで、あえてさりげなく言うのだという。それに対し、どうしても末崎社長が動かないと、先代が自ら動き、「こういうバイク、仕入れておいたから」とそれとなく伝える。
これも前述のZZR1100と同様、“目利き”による仕入れだが、ほどなく売れる。そうした消費動向が大きなトレンドに発展することも考えられるため、そのラインのバイクの仕入れを拡充する。そんな動きが何回か繰り返されていたのだ。
では、先代による、こうした“影のアドバイス”に対し唯々諾々としているだけかというと、決してそんなことはない。先代の見立てたバイクに対し、末崎社長のチョイスを対比するように展示するのだ。これは、かなり良い相乗効果を生んでいるという。では、末崎社長はどのような車両を選択するのだろうか。考え方としては、全くの対極に位置するものであった。
「例えば100万円の予算があるとします。100万円前後のバイクを1台仕入れるのか、あるいは10万円のバイクを10台仕入れるのか。多くの経営者は後者を選ぶのではないでしょうか。私もどちらかというと、100万円を10等分して10台買う、という考えです。仮に100万円以上の高額車両を仕入れたとします。店内に並べすぐに売れれば経営的にとても助かります。でも、寝かせなければならないとなると、その100万円が後からジワジワと効いてくるので、その判断はそう簡単ではないのも事実です。ウチでは、できるだけ販路を広く確保するため、通販にも力を入れてます。対象は全国で、九州はもちろん、関東や東北、北海道からのオーダーも増えています。間口は広がりましたが、やはりどこにでもあるバイクを当たり前の金額で販売していては、ダメですね」
こうした考えを一つとっても、先代の影響を大きく受けていることがうかがい知れるが、末崎社長曰く、子供の頃の記憶をたどっても、父親は友達の親とは何かが違う、そんな風に感じていたという。ひと言で表現すると、人の意見に左右されることなく、我が道を突き進む、それが末崎社長の父親像であり、「いまだに乗り越えられない存在」(末崎社長)なのだ。考えがブレない人は往々にして信用度が高くウソ、偽りがない。だからこそ礎を築くことができたのであろう。
末崎社長はよく、ベンチマークしている店はあるか、という問いを受けるという。そんな時、同氏は「ない」と答える。理由は結局、そこのマネでしかなく、それが効果を発揮するとは限らないからだという。
「例えば、あの店、めっちゃ売れてるやん。なんで? となったとします。そこで、品揃えや販売形態など似たようなやり方をしたとします。でも、まず売れないでしょう」
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