公開日: 2024/03/13
更新日: 2024/03/17
バイクを購入したユーザーが次に求めているものは何か。初心者や女性に居場所はあるのだろうか。SNSのグループではなく、リアルなライダーズコミュニティを創るのはとても難しい。そんな理想の空間を、自然体で提供している「トリプルカフェ」をご存じだろうか。
神奈川県鎌倉市にあるトリプルカフェは今年で創業9年目を迎える。「トリプルカフェ」という店名はオーナーの濱西さんの愛車であるカワサキの2スト3気筒、マッハ(750SS)に由来する。現在ではライダーズカフェとして認知されている同店だが、開店当時は現在のスタイルではなかった。
「最初は全然盛り上がっていませんでした。宣伝も全くしていなくて、お客様は近所の人達で、バイク乗りは少なかったです」(料理長の理沙さん)
現在の看板メニューともいえるハンバーガーはなく、タコライスやランチなど、いわゆるカフェ定番のメニュー構成だった。「何か看板メニューが欲しい」と考案したのがトリプルバーガーだった。
2018年からバイク乗りを中心に、「美味しいライダーズカフェ」との口コミが広がり、遠方からバイクで訪れる客が増え始めた。同時に雑誌やフリーペーパー、SNSなどにも取り上げられるようになり、トリプルカフェは二輪業界に止まらず、鎌倉の新スポットとして一躍有名になった。
「その頃から、オリジナルのTシャツやステッカーを作り始めました。営業中のユニフォームを3作目から販売するように。別にしっかりとした構想はないんです、皆さんの提案を商品にする感じですね」(マスター)
グッズのデザインは全て自分たちで考える。それがとても楽しい時間であるという。
「まず絵を書いて考えます。デザインベースはいつも手書きで、業者さんに手直ししてもらっています。マスターの提案を私が手書きでいくつも書いて、調整して商品化するという感じです」(理沙さん)
近年ではイベントも開催するようになった。トライアル、ミニサーキット走行のほか、女子ツーリングなど、女性でも気軽に楽しめるイベントを多数企画している。
「女子ツーリングって燃えるんですよ。やっぱり男性のお客さんが来たがるんですけど、『ダメです!男子禁制(笑)』ってことにして」(理沙さん)
店舗でのイベントは、メディアやイベントで活躍するタレント采女華さんのバースデーイベントや沖縄のアーティストのライブなど。バイクだけではない多様な試みは、誰にも疎外感を抱かせることなくお客さんと一体に行われている。それは有名店になっても全く変わらない。トリプルカフェに集まるバイクに決まったメーカーやジャンルはない。
「私たちのやっていることによって、少しでも二輪業界が盛り上がり、リアルに楽しみが増えれば、と思います。競争ではなく“共有”できれば素晴らしいですね。例えばトライアル遊びに誘った人が、オフロードの世界にハマってくれたり。サーキット走行もお客さんが連鎖的に楽しんだり。グッズやウェアに関しての情報をお店で共有して、そんな話で盛り上がるんです」(理沙さん)
「実際、もうちょっと自分達もバイクに乗って遊ぶ時間が欲しいと思うんですけど…(笑)。とにかく自然体でこのままやっていきたいですね」(マスター)
そう話す濱西夫妻の後ろで、女性客が1人、午後のひと時をのんびり過ごしていた。決してバイク乗りだけの店ではない、誰をも惹きつける空間とサービス。「自然体」の心地良い空気と時間が、トリプルカフェには流れている。
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