公開日: 2021/07/28
更新日: 2022/09/06
日本独自の進化を遂げ、ライダーにとっても身近な存在になっている商品がある。缶コーヒーだ。特に外国人からは「缶なのに美味しい」「自分の国のものとレベルが違う」など、高く評価されている。そんな缶コーヒーだが、近年売り上げが低迷していることをご存じだろうか。今回は、その考えられる要因について見ていく。
このテーマを聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのは、"コロナによる影響"ではないだろうか。けれども、実は2017 年頃から缶コーヒーの売り上げは減少しているのだ。全日本コーヒー協会の「日本国内の嗜好飲料の消費の推移(2020年11月10日更新)」によると、缶コーヒーの消費量は1990年を100(単位:千㎘)とすると、2017年は90、2018年は80、2019年には73と大幅に減少。ちなみに、缶を含むコーヒー飲料全体では2017年が138なのに対し、2019年は146と増加している。
では、2017年に何があったのだろうか。「セブンカフェ」や「ファミマコーヒー」などの"コンビニコーヒー"は、2012年末から既に発売を開始。挽きたての香り高いコーヒーが飲めることから、いまでは定番の商品となっている。ただ、上記のデータによると2012年の缶コーヒー消費量は95で、2013年~2016年までは94で推移。そのため、コンビニコーヒーの登場によって、売り上げが低迷したとは考えにくいのだ。
この結果を踏まえ、コーヒー業界で2017年に何が起きたのかを調べてみると、現在、コンビニコーヒーと同様に身近な存在になっている、ある商品が発売されていたことが分かった。サントリーのペットボトルコーヒー「クラフトボス」だ。同商品は、登場からわずか9ヵ月で1000万ケースを売り上げ、他メーカーも販売するようになった。前述の通り、缶コーヒーの消費量は2017年から大幅に減少している。そのため、多くのユーザーが缶からペットボトルにシフトしたと推測できるのだ。
ではなぜ、ペットボトルコーヒーが支持されるようになったのか。その背景には、コーヒーの楽しみ方の変化がある。缶コーヒーの内容量は190~250mlが一般的。これはマグカップ一杯分に相当する。味わいながらその場で飲み切るのが普通であり、そこには量を飲む感覚はない。けれども、500mlのペットボトルに入ったコーヒーが登場したことで、コーヒーの楽しみ方に対する概念が変わった。「コーヒーも炭酸飲料のようにがぶ飲みしてもいいんだ」という感覚が一般化したのだ。また、そこにはペットボトルだと「その場で飲み切らなくてもいい」「好きな時に好きなだけ飲める」という簡便性も影響している。
では、このまま缶コーヒーは衰退していくのかというと、そんなことはない。昨年ダイドーから発売された「鬼滅缶」は、累計1億本の売り上げを記録。また、小休憩で飲み切れるという特長から、一服ついでに飲む人が一定数いる。そのため、缶コーヒーが日常生活から姿を消すことは当分ないだろう。売り上げ回復に向け、新商品やデザイン缶の発売など、各メーカーは日々挑戦し続けている。
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