公開日: 2024/03/13
更新日: 2024/03/18
今回は「継続」に焦点を当ててみた。人は誰しも「気にかけてもらっている」と感じるだけで、意識は変わるもの。「存在を意識している」というメッセージを伝えつつ、自店の動きも伝える。これが求められるのだろう。
創業から現在までの間に販売したバイクの台数は、どれくらいだろうか。これは店の規模や排気量にもよるが、開業から10年が経過する中古車販売店であれば、販売台数は2000台を超えている店も決して少なくはないものと思われる。バイクを1台購入した後、継続して乗り続けている人、複数台、購入後全く音沙汰のない人などさまざまだろう。
では、仮に顧客の延べ人数が1000名だったとする。そのうち管理顧客と呼べるユーザーは、何名ほどだろうか。300名? 400名? それとも500名? この人数は多ければ多いほどいいのは言うまでもない。代替え需要が発生する可能性はもちろん、オイル交換やメンテナンス需要、車検、あるいはカスタムなど、アフター需要が見込めるからだ。
車両販売は販売店経営における重要な要素。オイル交換などに比べれば、利幅は格段に大きい。だが、そこで止まってしまったら、一過性のもので終わってしまう。必要なのは来店の継続だ。では、店に継続して通ってくれるユーザーを増やすためには、何をどうすればいいのだろうか。「継続」をキーワードに、効果的な方法について検証してみる。
売上のおよそ80%は、全体の20%のユーザーによって生み出されると言われている。これはつまり、20%が現時点のユーザーとして、継続来店している顧客ということになる。マーケティングに詳しいライターの山根陽一さんは言う。
「ユーザーに顧客でいてもらうことをリテンションといいます。これには新規顧客を獲得することに比べると、あまりコストを掛けずに実現できるという利点があります。つまり、限られたパイしかない二輪市場において、この層を大切にすることが、二輪の販売活動の安定化を実現するポイントなのです」
これはどんな業種でも言えることだが、リピーターになってもらうためには、来店時の接客や購入後のアフターフォローにおいて、プラスの印象を持ってもらうことが欠かせない。購入したバイクはコンディションもよく、十分に満足できる品質だったとする。でも、その後の店側のフォローに不満を感じたとすると、メンテナンス等で来店する可能性は一気に低下するだろう。その場合、「買うだけ買って、あとは他店で」という流れも考えられる。
顧客を維持するための具体例には、どのようなものがあるのだろうか。これについて前出の山根さんは以下の3つを挙げる。
① コンテンツ配信
② 電話による直接会話
③ 紹介キャンペーンの実施
「まず①ですが、SNSを通じた時点の情報発信は、いまの時代、多くの店が実施していると思いますが、この最大の目的は“店の動き”を知ってもらうところにあります。これは、お客さんからすると、店全体の動きを把握することで、それが“安心感”につながるからです。②「電話による直接会話」はユーザーが感じていること、不安・不満に思っていることなどを把握するための重要なコミュニケーション手段です。ここでの内容が継続に繋がるかどうかに関わるので1回目の連絡は購入から3日以内に行うのがベスト。メールやLineよりは電話がいいでしょう。③は来店動機につながるうえ、紹介を受けることで、新規需要も得られます。紹介ユーザーが成約となったら、インセンティブを提供するのが一般的ですが、四輪販売店でよくあるのは、商品券1万円分というものです。中にはカタログギフトを提供するところもあります。二輪販売店の場合は、自店のサービスで利用可能な金券を制作し渡すのもありでしょう。金額的には魅力があると感じて貰えるインパクトが必要なので、5000円〜1万円を最低ラインとするのがいいと思います」
興味深いデータがあるので紹介する。ユーザーからの問い合わせに対するレスポンスについてだが、ユーザーが販売店とのコミュニケーションにおいて重視するものの一つに「対応速度」がある。以前、「PRTIMES」が実施した「お問い合わせフォーム対応時間に関するアンケート」によると、「問い合わせフォーム」から質問を行った場合、「返答まで待てる時間」は「即時」から「24時間以内」と答えた人が全体の70.5%を占めることが分かった。
内訳を見ると、「即時」との回答が5.9%、「10分以内」は13.4%、「30分以内」は10.3%、「1時間以内」は8.8%となっている。その他、「2~3時間以内」は5.2%、「半日以内は8.7%、「24時間以内」は18.2%となっている。この結果を見る限り、ユーザーはスピーディーな回答を望んでいることが分かる。注目は許容範囲が1時間以内との回答が全体の38.4%を占めているところ。およそ10人に4人だ。1時間に1度の問い合わせチェックが求められるわけだが、日常業務と並行しての対応は、かなり難しいのも事実。だが、顧客になるか否かの分水嶺となる対応だけに、午前1回午後2回ほどの確認は必要だろう。
今回は「継続」に焦点を当ててみた。人は誰しも「気にかけてもらっている」と感じるだけで、意識は変わるもの。「存在を意識している」というメッセージを伝えつつ、自店の動きも伝える。これが求められるのだろう。
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