公開日: 2024/03/13
更新日: 2024/03/18
前月号では2023年の新車国内出荷台数は国内4メーカーの合計で37万9800台(前年比3.0%増/速報値)となったことを伝えた。では、中古二輪車(軽二輪・小型二輪)や輸入小型二輪の実績ついてはどうか。実績を元に2023年を振り返るとともに、今年注目しておきたいカテゴリーなども紹介する。
二輪関連団体や二輪関連企業から、様々なデータが公表されている。前月号で取り上げた2023年における国内4メーカーの新車国内出荷台数もそのひとつ。国内における二輪需要の推移を見るうえでの大きな指標である。おさらいしておくと、出荷台数は速報値で37万9800台。前年比3.0%増。メーカー別に見るとホンダが2割近く台数を伸ばした。
出荷台数での大きなトピックは、最も売れた排気量クラスが原付一種から原付二種へとバトンタッチしたこと。原付一種が9万4300台と10万台を割る一方で、原付二種は15万0400台と一気に5万台近く上乗せして出荷台数で最大のボリュームゾーンとなったのだ。
SNSをよくチェックしている人のなかにはご存知の方も多いと思われるが、ハンターカブやクロスカブで花見やソロキャンプを楽しんだり、あるいは近場にブラっと走りに行ったりした時の動画の投稿がかなり増えている。近場をブラっと走る動画など本当に原付二種クラスの投稿や動画をよく見かける。
このクラスの特徴のひとつではないかと思うのだが、ソロツーリングを楽しむユーザーの割合が多いように感じる。ソロなら思い立った時に乗れるし、その時々の気分次第で走るペースも距離も自由に決められる。
さらには、目的地やルートなども、自分の意思で自由に変更できる。そんな“気負わない付き合い方”のできるクラスが原付二種であり、以前のような通勤・通学に特化したクラスというイメージから、大きく変化したものと考えられる。ヤマハからは、125ccモデルが続々投入されたほか、カワサキからも電動バイクがリリースされた。昨年に引き続き、話題にあふれるクラスとなることは間違いない。
さらに加えると、昨年末には警察庁が『新基準原付』に関する報告書を発表。これは今年ではなく来年の話だが、同じ125ccなら原付二種に、というユーザーが少なからず出てきそうな感じはある。任意保険はファミリーバイク特約が使え、二段階右折や30km/hの速度制限がなくなり、二人乗りが可能になる。排気量が同じでも、これだけの差が出てくる。しかも、今は免許を取るのもそうハードルが高いわけでもない。今年も出荷台数増減のカギとなるクラスだろう。
前述したのは国内メーカーの出荷台数についてだが、日本自動車輸入組合(以下、JAIA)では輸入小型二輪車の新規登録台数(速報/以下、登録台数)を毎月発表している。それをコロナ禍以前の2019年から年ごとに5年間集計したものが表1だ。
2023年の登録台数は2万7008台。2022年が2万6271台だったので、2.8%増となった。表には入っていない2018年は前年比マイナスだったので、前年比プラスは2019年から5年連続となった。
登録台数でトップとなったハーレーダビッドソンは2022年に登録台数1万台の大台を突破したが、2023年は惜しくも1万台にわずか69台届かず9931台(前年比2.6%減)となったものの、過去5年間を見れば決して悪い数字ではないことが分かる。昨年の大きなトピックのひとつと言える、普通二輪免許で乗れる『X350』だが、10月23日と発売が後半だったため、登録台数にあまり貢献できていないので、今年に期待だ。
2位のBMWモトラッド(以下、BMW)は5838台で同8.4% の増加。2023年に創立100周年を迎えたBMWは、日本だけではなく世界的にも好調で世界で20万9257台を販売。同社過去最高の販売台数を記録した。その半数以上を販売したのはヨーロッパで11万6012台を販売(前年比4.7%増)し、そのうちドイツが2万4176台でトップのセールスとなった。
モデルやシリーズで見ていくと、水平対向エンジンを搭載する『R1300GS』『R1250GS』『R1250GSアドベンチャー』の3つのGSシリーズが合計6万0535台(同1.6%増)。『S1000RR』をはじめとした4気筒モデルが2万5194台(同7.5%増)などとなっている。
3位はトライアンフ。年間4000台を超える4180台で、同20.9%増と大きくジャンプした。1月から12月までのデータで、同社としては初めて年間の登録台数が4000台を突破した。
ユーザーから高い支持を受けたのは昨年春に発売した新型モデル『ストリートトリプル765』ファミリーのほか、ボンネビルファミリーの限定モデル『ステルスエディション』、『スクランブラー1200』ファミリーなどとなっている。
そして、トライアンフ人気に拍車をかけそうな可能性を秘めたモデルが1月に発売された。それが、『スピード400』と『スクランブラー400X』。前述したハーレーダビッドソンの『X350』もそうだが、普通二輪免許で乗れるクラスが充実することは、海外ブランドを身近にするだけではなく、バイク人口の増加や上の排気量へのステップアップも期待できる。
例えば、BMWのアドベンチャーシリーズの『R1300GS』と『G310GS』を比較すると、『G310GS』はシート高で15mm低く、車両重量で75kgも軽い。もちろん、最高出力や最大トルクはダウンするが、バイクの面白さはパワーだけではない。軽くて低くて扱いやすいパワーだからこそ味わえる楽しさもある。それだけに、このクラスの動向には要注目だ。
4位のドゥカティ、5位のKTMも前年比プラスと、堅調な推移を見せている。6位がロイヤルエンフィールド。同社はSNSで実によく見かけるブランドで、中でもシート高765mmと足つき性に優れる『メテオ350』は女性ユーザーの投稿や動画を見る機会が多く、女性から人気の高いことがうかがえる。
新車関連のデータだけではなく、中古車のデータもある。それが、一般社団法人全国軽自動車協会連合会(全軽自協)の発表している軽二輪と小型二輪の中古車販売台数。小型二輪のデータは2023年のみだが、軽二輪はコロナ禍以前からあるので、それをまとめたものが表2と表3。
軽二輪の中古車販売台数は12万1026台で前年比3.2%減。コロナ禍以前の2019年と比べると1万8000台弱落ちている。その反面、軽二輪の新車の出荷台数は2019年よりも1万5000台ほど伸びている。当然のことだが、新車が売れないと中古車は発生しない。その意味では、新車が伸びているのは決して悪いことではないが、2年連続して中古車の販売台数がマイナスとなっているのは気になるところだ。
小型二輪の中古車販売台数は7万8777台で、同5.6%減。小型二輪は出荷台数も11.0%減っているが、2021年、2022年と台数を大きく伸ばしたクラスなので、マイナスになったといっても2023年の出荷台数は21世紀に入ってから2番目に高い出荷台数。なので、需要が下がったというよりは、高まった需要が落ち着きを見せてきたという感じだろうか。その点の動きについても、今年は注意しておきたいところだ。
そして、中古車といえば忘れてならないのはコロナ禍での価格の高騰。最近は一時期のような、新車よりも高い現行モデルの中古車がゴロゴロしている、コロナ前は手頃な価格だった車種が数ヶ月で数万から数十万高くなっているという状況ではなくなったと感じる。しかし、ユーザーは毎週のように相場をチェックしているわけではない。たまたま高い時期にバイクをチェックしていたら、いまだに「中古車は高い」という印象のままかもしれない。中古車に目を向けてもらうには、その印象を払拭していく必要がある。
前月号でも触れたが、今年はアフターコロナや電動化、原付二種や普通二輪免許で乗れる海外ブランドモデルの動向など、今後の流れを見極める上で重要な1年。各方面にアンテナを張って情報をキャッチしていくことが大切になる。
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