公開日: 2024/06/25
更新日: 2024/07/01
「アルバイトの時給が正社員より高くなってしまった」
これは、ある飲食業界の会社で実際に起きた出来事。昨年10月に行われた最低賃金改定や、33年ぶりの高水準を記録した春闘の影響により近年、正社員だけでなく、アルバイト・パートの時給を引き上げる動きが全国的に広がっている。
リクルートの調査研究機関「ジョブズリサーチセンター」が5月24日に発表した「2023年度アルバイト・パート募集時平均時給調査年間まとめ」によると、2023年度の全国の年間平均時給は1125円。前年度から30円増加しており、比較可能な2018年度の調査以降、過去最高額を記録。コロナ禍前の水準を大きく超えたことが分かった。
内訳を見ると、飲食店などの「フード系」が前年度比4.5%増の1086円。小売りやホテルなどの「販売・サービス系」が同3.6%増の1090円。「製造・物流・清掃系」が同2.3%増の1135円。また、看護師や塾講師などの「専門職系」も、時給アップが行われている。
時給上昇の要因として、フード系は慢性的な人材不足により、繁忙月以外でも求人募集が継続に行われていることが挙げられる。また、販売やサービス系は、インバウンド需要の回復により、空港や宿泊関連業務の動きが活発化したことが関係している。さらに、清掃系はホテル清掃など需要の高い職種で人材不足感が高まり、それに伴い時給も上がっているという。
ジョブズリサーチセンターの宇佐川邦子センター長は、人材不足が進む中、企業側が人材を新たに確保するためには、賃金の見直しだけではなく働き手に寄り添った多様な働き方を用意する工夫が必要と説明。また、働き手によって希望する勤務時間や日数などが異なるため、2~3時間の仕事を作るといった工夫や、黙々と作業したいなど、個人の希望に寄り添い、担当業務を変える取り組みなども効果的、と言う。
さらに、既存従業員の定着率を向上させる重要性について、次のように語る。
「長期的な就労を見据え、主婦・主夫が子供の成長に合わせて勤務時間を変えることのできる仕組みを作ったことで、離職率が改善した事例などもある。このように、長く活躍できる仕組み作りが今後ますます求められる」
ジョブズリサーチセンターが6月14日に発表した、三大都市(首都圏・東海・関西) における5月度のアルバイト・パート時給は、前年同月比で36円増となる1186 円。また、アルバイト・パート求人サイト「バイトル」などを運営するディップが同日に発表した、5月度の全国平均時給は、同57円増の1333円であった。
物価上昇の影響もあり、当面、賃金の引き上げが続いていくことは間違いない。慢性的な人手不足は、深刻な社会問題になっている。そのような中、人材を確保するためには、ベースアップだけでなく、創意工夫を凝らし、働きやすい環境を整えることも重要となりそうだ。
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