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【トップインタビュー】株式会社アールエスタイチ 松原弘 代表取締役社長 <後編>

公開日: 2025/01/13

更新日: 2025/01/20

1975年に創業し、今年で50周年を迎えるアールエスタイチ。社長就任以降、主力事業を用品販売からオリジナル商品開発へとシフトし、用品メーカーとしての地位を確立した松原弘社長。商品開発の根底には、安全性と快適性にこだわりながらも、ライダーの命を守る、という強い思いがあった。

胸部プロテクターは採算度外視で開発。ライダーの命を守ることが最優先

通年を通して人気なライディングシューズ
通年を通して人気なライディングシューズ

――― メーカーとしての価値は、そのブランド力、商品開発力にあると思いますが、商品はどのように開発しているのでしょうか。

松原
 安全性と快適性をコンセプトに、企画部が中心となり開発しています。昔はスタッフと一緒に私も開発に携わっていましたが、いまは試作品を確認して操作性の注文を付けたり、値付けのアドバイスをするくらいです。私の感覚はもうおっさんなので、デザインに関しては若いスタッフに任せています(笑)。また、試作品ができた段階で社員にテストを依頼。操作性や気になったことなど、使用後にレポートを書いてもらい、それらを商品開発に反映させています。

――― 商品を開発するにあたり、ユーザーのニーズを把握することはとても重要だと思います。

松原
 バイク用のアパレルに関しては、ファッション誌に掲載されるようなトレンドがあるわけではありません。ただ、モーターサイクルショーなどのイベントで、ユーザーがどのようなウェアを着ているかは確認しています。いまはデザイン性の高いバイクを選ぶ人が多い。そういう人がバイクに乗る時に着るウェアってどんなんだろう、と社員は考えてくれています。

――― よく売れている商品は何でしょうか。

松原
 通年を通してよく売れているのは、ライディングシューズです。また、夏場に人気なのは、通気性が良く、ストレッチが効いたクイックドライという素材を使用した夏用のライディングパンツ。これは、毎年早くに完売するほどです。これらはジャケットと違い、初めて買う人ばかりなので、多くの方にご購入いただいています。この2つの商品のマーケットは、未体験のライダーがまだまだ多くいるので、今後、相当伸びると思います。

ボタン式着脱システム「CPS(チェストプロテクターシステム)」
ボタン式着脱システム「CPS(チェストプロテクターシステム)」

――― アールエスタイチでは、胸部プロテクターもオリジナルで開発されています。

松原
 薄さと軽さにこだわり、素材をとことん追求し、型も起こして生産。一番、力を入れています。胸部プロテクターは採算度外視で開発しており、儲ける商品とは考えていません。とにかく、ライダーの命を守ることが最優先なのです。また、弊社のライディングウェアは、どんなにファッショナブルであっても、必ずプロテクターを標準装備。プロテクターはすべて、ヨーロッパのCE規格に合格したものを装着しています。

――― 精魂を込めて開発されている胸部プロテクターには、ボタン式着脱システム「CPS(チェストプロテクターシステム)」もあります。これはどういうものでしょうか。

松原
 専用マウントをジャケットに縫い付ければ、CE規格に合格した弊社の胸部プロテクターを装着できるというものです。このシステムは2022年より、各社へ供給をスタートしており、CPSマークが入っていれば、メーカー関係なく、確実な装着を保証します。我々はプロテクターを売ろうと思っているのではなく、1人でも多くのライダーに胸部プロテクターを身に付けていただきたい、その一心で、このシステムを開発しました。現在はホンダをはじめ、ヤマハやカワサキ、モーターヘッドライダース、ヘンリービギンズなどに供給しています。

――― 女性用商品にも力を入れている印象があります。

松原
 全アイテムで女性用がないとダメだと思っています。女性も男性と同じように、好きなものを選ぶべきなのです。そのため社員には、ロスがあってもいいから全アイテムで女性用を作るように伝えています。いま、女性用商品のマーケットは全体の10%ないくらい。女性ライダーが増え続けている現在、伸びしろは大きいのです。弊社では、女性社員による「TAICHI women UP」プロジェクトを立ち上げ、ライディングシューズをもっと厚底にして欲しい、もっと柔らかいプロテクターがいいなど、女性視点の声を反映させて、商品開発も行っています。

日本だけでなく、ヨーロッパの用品メーカーもアジア市場に力を入れる

2024年7月、台湾モーターサイクルショーに初出展
2024年7月、台湾モーターサイクルショーに初出展

――― 2024年7月には、台湾モーターサイクルショーに初出展されました。アジア市場はどのように捉えていますか。

松原
 日本を除き、いまは海外マーケットの8割がアジア市場です。現在は日本のシェアが最も大きいですが、近い将来、海外の方が大きくなると思います。

――― 世界の中で二輪普及率が高いアジアでは、やはりバイク用品の需要も高いのですね。

松原
 シェアが大きいのは台湾です。長年販売し続けたことで、ようやくタイチブランドが浸透し、価格は決して安くはないけれど、安全性や快適性に 優れていることが認知され、多くの人に買っていただけるようになりました。この他、東南アジアのインドネシアやベトナム、マレーシアもシェアが伸びてきています。

――― 海外進出はいつから。

松原
 30年前くらいから各国のディストリビューターと契約し、海外でも販売を始めています。本格的に活動し始めたのは、20年ほど前からです。

――― アジア市場での売れ筋は。

松原
 日本と同じ商品を販売していますが、先ほど紹介した夏用のライディングパンツをはじめ、蒸し暑い気候に最適なメッシュ素材を使用したライディングジャケットが人気です。また、ここ数年でライディングシューズも売れ始めました。アパレルに関しては、ヨーロッパのメーカーと異なり、すべてアジアサイズということも、人気の理由となっています。海外市場における売り上げはこの10年間、右肩上がりです。

今後の用品業界の見通しについて語る松原社長
今後の用品業界の見通しについて語る松原社長

――― 2025年で創業50周年を迎えます。何か特別な企画を計画しているのでしょうか。

松原
 特に考えていません。50周年デザインの商品を出すくらいです。お客様からしたら、創業1年目であろうが、50年目であろうが、安全な商品を販売してくれればいいわけですよね。弊社はお客様と向き合い、良い商品を作ろうと必死にやってきた結果、いまがあるので、あくまで通過点に過ぎません。50周年だからといって、浮かれている場合ではないのです。

――― 今後の用品業界の見通しについて、どのように考えていますか。

松原
 電動になっても二輪で走る以上、バイク用品は必要となるので、今後もより安全で快適な商品を開発していきたいと思っています。ただ、日本のマーケットは成熟しきった感がある。そのため、これからは他の用品メーカーも業績を伸ばすために、アジア市場に力を入れていくと思います。いま、ヨーロッパのメーカーは業績があまりよくありません。そのため彼らも、人口が多く、バイクに乗る割合が高い、アジア市場に進出してきているのです。今後、同市場における競争が激しくなると思います。

――― アールエスタイチとしては今後、どのような展開を考えていますか。

松原
 一番力を入れていくのは、胸部プロテクター普及のための活動です。二輪車事故における致命傷の7割が頭部と胸部であるにも関わらず、胸部プロテクターの着用率は2020年時点で8・4%と、非常に低い。弊社は2030年までに、最低でも倍にしたいと考えています。

――― 普及に向けた具体的な活動内容は。

松原
 今年の春頃に、既存商品の安全性能を落とさずに、軽量化とコストダウンを図った、新しい胸部プロテクターを販売する予定です。ヘルメットには十万円近く出してくれるのに、プロテクターとなるとためらう人が多いので、現状の半額くらいの価格を目標に開発。型代だけで、数千万円かけています。二輪業界のマーケット縮小を防ぐためには、ライダーにバイクに乗り続けてもらい、車両を買い替えたり、整備を依頼したり、新しい用品を購入してもらうなど、長くモーターサイクルライフを楽しんでいただくことが必要だと考えています。そのためには、ライダーの命を守ることが最優先となる。これに尽きるのです。





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