販売店取材注目

【販売店取材】メカニカルスポーツNABE 渡部芳亮 代表(埼玉県さいたま市) <後編>

公開日: 2025/02/19

更新日: 2025/02/20

二輪販売店をオープンし、同時にスキーのインストラクター業にも取り組むという、まさに二足の草鞋状態。その後、ジェットスキーでのトーイングサービスもビジネスとして始めるなど、一般的な販売店とは趣を異にする展開。また、6年前には店舗2階に本格的なカフェをオープン。言わずもがなの相乗効果を生んだ。楽しそうに話をする渡部代表だが、そんな同氏の頭の中には、この先のさらなる壮大な計画があった。

初来店ユーザーへの声掛け。最初にどこを見たかによって言葉をチョイス

初来店ユーザーへの声掛け。最初にどこを見たかによって言葉をチョイス
初来店ユーザーへの声掛け。最初にどこを見たかによって言葉をチョイス

コミュニケーションスタイルや内容に変化が現れたことがドライな関係を加速させている可能性もある。

「新車のZ900RSを『ナベさんの店で買いたい』というお客さんがいました。でも、ウチでは販売できないので、プラザ店を紹介しました」

仕方のないことだが、何よりもユーザーの要望に応えられないことが辛い、と渡部代表はつぶやく。NABEでは新規ユーザーが全体の6割を占めることは前述した。彼らはこの先、定着してくれる可能性を秘めた“見込み客”であるため、対応は重要。難しいのは、声掛けの有無やタイミングだろう。渡部代表は、「これは難しいんです」と前置きしたうえで、人によって対応を変えているという。ポイントはユーザーが最初に何を見たか。そこを確認したうえで最低限、挨拶の言葉以外では、「どういうバイクをお探しですか?」とだけ声をかけるという。

「ウチの場合はたいがいお客さんのほうから声をかけてきますね。『50㏄の原付を探しています』とか、値段から入る人は『一番安いスクーターはないですか』とかです。後者のお客さんは、まず買いません。逆に、成約に至る率の高い方は、絶対に値段から入ることはせず大概、自分から使途を説明してきます」

自分の考えを明確に理解してもらいたいという意識の表れなのだろう。そうなると、次は1日あたりの走行距離の話に移り、距離が長ければ新車、それほど長くなければ中古を勧める、と渡部代表。保証の話も含め総合的にアドバイスを行っている。

新車販売ありき、中古車販売ありき、といった対応ではなく、必ず個々の目的に合わせた話をする。この段階でユーザーが考えるのは、安心感や店に対する信頼感。無理に何かを勧めようとしないニュートラルな対応が好感度を高め成約に結び付くのだ。

洋菓子店を経営していた奥様の恵子さん5年前にカフェを併設

洋菓子店を経営していた奥様の恵子さん5年前にカフェを併設
洋菓子店を経営していた奥様の恵子さん5年前にカフェを併設

NABEのユーザーの平均年齢は50歳を超える。ここ数年の傾向からすれば、決して高くも低くない。そんな彼らがバイク購入の決断をするための決定権は誰が握っているのか。小遣いの範囲内での購入となると、購入希望者自身の判断になるのだろうが、小遣いでは賄えない場合、かつては奥さんに確認し許諾を得る、という流れが多かった。最近はどうなのだろうか。

「いまでも多いです。『家に戻って大蔵省に確認してきます』ってね。言い方からしても年代が分かります(笑)。この場合は成約となることが多いけど、『ウチの奥さんがどう言うかなぁ』といった感じで、『奥さん』を自分から引き合いに出す人は、まず買わないですね。また、40代のお客さんも、成約に至る率は低い。理由は子育てが終わってない人が多いからです」

NABEの最大の特徴の一つに、50代で免許を取って乗り始めたユーザーが多い、ということが挙げられる。彼らの多くは、学生時代にバイクに乗りたかったけど親に反対されて実現できなかった、というユーザーだ。

「この年代になると子供も独立し、ようやく積年の夢が実現できる環境が整った、そんなお客さんですね」

古くからの常連、コロナ禍でバイクに乗り始めた人、50代で免許を取った人など多種多様なユーザーを抱えているNABEだが、そうしたユーザーの“拠りどころ”となっているのが、「ハワイアンカフェefy」の存在。NABEとの併設だが、店内の一角にカフェコーナーがある、というものではなく、NABEの2階に独立したショップを構えているのだ。オープンは2019年。店舗運営は奥様の恵子さん。元パティシエという経歴を活かし始めた。かつて何年かハワイに住んでいたこともあり、店内はハワイアンカフェのイメージが満載。アクセサリーや小物、Tシャツなどのアパレル関連グッズも販売している。そこに二輪のイメージは全くない。

実は1999年、恵子さんは北浦和(さいたま市)にパティスリーを出店していた。6年間、店を運営していたが、出産と子育ての関係で閉店。だが、子供が成人したこともあり、今度はカフェとして店舗2階にオープンした。店はコミュニケーションの場であるのはもちろん、近隣の家庭の主婦が集う場所でもある。メニューはフレーバーコーヒーをベースにトーストやサンドウィッチなどの軽食類やケーキなどを用意。平日にはランチも提供している。また、主婦を集めケーキ作りの「ワークショップ」を開催するなど、充実したサービス内容となっている。

気になるのは、NABEとの相乗効果である。これについて渡部代表はこう説明する。

「二輪のほうはオープンしてから時間が経過しているので、かなり知られています。だから、カフェの所在を知らせるのは、容易いです。逆に、カフェに来たお客さんのご主人が、バイクが欲しい、とか、バイクを直したい、という話に発展することは、よくあります。カフェを始めて良かったな、というのが正直な感想です」

渡部代表が過去に手掛けてきたマリン系スポーツの数々
渡部代表が過去に手掛けてきたマリン系スポーツの数々

NABEは普通の二輪販売店でありながら、何かが違う。カフェがあるからなのか、それとも渡部代表の個性によるものなのか。思案しながら今後の取り組みについて聞くと、想像だにしない構想が語られた。

「バイクでもバギーでもスキーでもマリンジェットでもいい。オールマイティに楽しめるアクティビティを展開したいんです」

あまりにも飛躍した話に驚いたが、聞くとマリンジェットは渡部代表が20代の頃から趣味として、そして一部ビジネスとしても携わってきたものなのだという。

「2000年頃、ウェイクボード(ボートにけん引されながら水面を滑るマリンスポーツ)が流行り出してからは、自分でジェットを楽しむだけではなく、トーイングサービス(ウェイクボードのけん引)をビジネスとして展開していた時期もありました。これをやっていたのは、この場所に移転する前の最初の店舗の時です。バギーについてはKYMCOが扱っていることから、担当の方とそれとなく話をしています」

トーイングサービスをビジネス展開していた頃の顧客とは、いまでも交流が続いている。現在はビジネスとしての関係ではないため、友人としての交流。彼らと二輪のユーザーとは全く別のグループであり関係性はない。つまり、2つのグループが存在するのだ。これらを将来、前述のアクティビティを通じて融合させようというわけだ。

トーイングビジネスを展開していた時は、猪苗代湖の浜をすべて貸し切りキャンプやバーベキューをプロデュースしていたという渡部代表。それを今度はバイクをはじめとするアクティビティ全体をビジネス展開しようとしているのだ。取材の最後の最後になって、出てきた話なので、少々面食らったが、それだけに「あくまでも展望です」と語る渡部代表の言葉は、その正反対に感じられた。

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