公開日: 2023/08/31
更新日: 2023/09/13
コロナ禍以降、注目を浴びて好調に推移していた二輪車の販売台数。今年はどうなっているのか。2023年も残すところ4か月と折り返しを過ぎたので、今年1月から6月までの軽二輪車・小型二輪車の新車および中古車の販売台数をまとめた。国内4メーカーは苦戦しているが、輸入車はまだ勢いに衰えを見せずに好調さをキープしている。
全国軽自動車協会連合会(全軽自協)では毎月、軽二輪と小型二輪の新車・中古車販売台数を発表している。それによると、今年上半期(1月~6月)における小型二輪車の新車販売台数は全メーカー合計で4万4567台。前年同期が5万1035台だったので12.7%のマイナスとなった。軽二輪車の新車販売台数も同様で、今年上半期の合計が3万5204台。同3万8608台だったので8.8%のマイナス。
改めて触れるまでもないが、2020年のコロナ禍以降、二輪車は三密を避けられる移動手段や趣味として関心を集め、好調な販売台数の推移を見せていた。ただ、昨年後半あたりから伸びが鈍化し、今年はどうなるのかが注目されていた。結果として、新車、中古車ともマイナスというのが、現在までの状況だ。
表1は小型二輪車クラスの新車販売台数。国内4メーカーごとの数字が出ているが、ホンダは累計で1万1211台(前年同期1万5142台/26.0%減)と、4メーカーのうち最も大きなマイナスとなっている。このクラスだとホンダには『GB350』というヒットモデルがあるが、登場したのが2021年4月。もう2年以上経過するので、まだまだ高い人気を誇っているが、登場時ほどの勢いではなくなったという感がある。X(旧ツイッター)を見ていても、「買いました」というツイートよりも、「GBで○○に行きました」などのバイクライフを楽しむ様子を伝えるツイートのほうが目立つ。
ヤマハは4778台( 同5513台/13.3%減)。3月から5月にかけては前年同月の実績を上回る結果を見せていたが、他の月のマイナス分を埋めるまでにはいかなかった。ただ、YZFシリーズやXSRシリーズなど、人気シリーズがあるので後半の巻き返しに期待したい。
スズキは3467台(同3946台/7.6%減)。4メーカーのうちでは最も小さいマイナス幅となったのがスズキだ。今年春に開催されたモーターサイクルショーでは、『GSX-8S』が高い注目を浴びたほか、もともと人気の高い『カタナ』や『ハヤブサ』、GSXシリーズやVストロームシリーズを擁するだけに、今年後半の伸びによってはマイナスからプラスへの転化も望める。
カワサキは1万0436台(同1万2792台/18.4%減)。ホンダ同様に1万台を超えたが、マイナス幅は小さくはない。しかし、先頃2024年モデルが発売され、『イエローボールエディション』をラインアップした人気モデル『Z900RS』や、今年前半に大きな話題を振りまいた『Ninja ZX-4RR』も人気が高いだけに、それらの牽引でマイナス幅が縮小することは間違いない。
小型二輪車の販売台数においてプラスとなったのは、輸入車などの『その他』。今年上半期の販売台数は1万4495台(同1万3642台/6.3%増)。このカテゴリーの好調さを物語っているのが、今年6月の販売台数3359台。これは過去最高記録だ。それまでは2007年4月の3190台なので、実に16年ぶりの記録更新となった。
表4は、日本自動車輸入組合が発表している輸入小型二輪車新規登録台数(速報)のデータで、今年上半期累計において上位3ブランドを抜粋したもの。順位自体は2022年の年間累計と変わらないのだが、今年大きく伸びているのがトライアンフ。6月までの累計で2448台(同1716台/42.7%増)と、1.5倍近く伸びている。昨年1年間で3183台だったので、もうすでにその8割近くに達している。さらに、2022年7月から2023年6月までの1年間では販売台数4130台(トライアンフモーターサイクルズジャパン調べ)と、同社初の年間販売台数4000台超えも達成。年末には、中型セグメントの『Speed400』『Scrambler400X』が日本市場に導入される予定で、ますます目の離せない存在になりそうだ。
2位のBMWも好調で、上半期累計2969台(同2543台/16.8%増)。『S1000RR』が「エッセン」の愛称で呼ばれ、男女問わず人気が高い。
表4にはないが、ロイヤルエンフィールドの販売台数は前年同期の倍以上。上半期累計で749台(同353台/112.2%増)。若い女性からの人気が非常に高いのが大きな特徴。大きすぎず、パワフルすぎず、シート高も765mmで足つき性も良好な『メトロ350』でカフェ巡りツーリングなどを楽しむ動画は、ユーチューブでいくつも見ることができる。
表2は、全軽自協の発表している軽二輪車の販売台数データ。全メーカーの合計は3万5204台(同3万8608台/8.8%減)。小型二輪車ほどの落ち込みは見られなかったものの、プラスとなったのはホンダのみ。小型二輪クラスでは強かった『その他』も、あまり車種が多くないためか、このクラスでは前年同期比でマイナスとなっている。
注目のモデルを一つあげると、5月に登場した『CL250』。女性の関心度が高く、男性も好意的に捉えているのがうかがえる。ほか、ヤマハ『YZF-R25』、スズキ『ジクサーSF250』、カワサキ『Ninja ZX-25R』などは安定感がある。
表3は、軽二輪クラスと小型二輪クラスの中古車販売台数。軽二輪は合計6万2199台(同6万4408台/3.4%減)。小型二輪は合計4万0745台(同4万2834台/4.9%減)。落ち込みは大きくないが、新車同様にマイナスというのは気にかかるところだ。
上半期の軽二輪車と小型二輪車の状況をまとめたが、数字としてはマイナス傾向。しかし、バイクは毎年買い替えるようなものではない。SNSでも、バイク人気がガクンと落ちている様子はない。つまり、バイクを買うというステップから、バイクを楽しむステップに移ったことが考えられる。実際、「ここをカスタムしました」「ここに行きました」などの投稿は本当によく見る。
このような中、販売店はどのような提案をすれば良いか。もちろん、代替えの提案も重要だが、メンテナンスやカスタム、ツーリングの企画や情報提供など、ユーザーのバイクライフを豊かにする提案も大切。また、ウェアやヘルメットなどにも気を配る人も目立つ。猛暑日が続いた7月下旬などは「こういう季節は、どのような服装で乗ればいいのか?」とSNSで問いかける投稿をいくつも見た。体をクールダウンさせるウェアやグッズを自分で購入し、ツーリングで使用して感想や印象を述べるインプレッション動画を公開する人もいた。これなどは、そのまま店でも使えるアイデアだ。どんなことをユーザーは望んでいるのか。そのヒントも答えも、SNSの中にきっとある。SNSとは、ユーザーの生の声の集まりなのだ。
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