公開日: 2024/06/19
更新日: 2024/06/19
コロナ禍で人気の高まった二輪車。最近はその人気がクールダウンしているという声も聞かれるが、実際はどのような状況なのだろうか。全軽自協が毎月発表している軽二輪車と小型二輪車の新車・中古車販売台数データによると、今年1~4月(軽二輪は1~3月)、軽二輪車の新車以外は前年同期比でプラスとなっていることが分かった。
「一年の計は元旦にあり」「始めが肝心」。スタート時の良し悪しによって、結果に影響を及ぼすということ。では、今年1月からのバイクの動きはどうだったのだろうか。今年一年を占うという意味では、重要なポイントである。それを知るデータのひとつに全国軽自動車協会連合会(全軽自協)が毎月発表している、軽二輪車と小型二輪車の新車・中古車の販売台数がある。
表1が軽二輪クラスの1月から3月における、新車と中古車のデータだ。新車は全体で1万2827台で前年同期比マイナス13.1%と1割以上の減少となったが、中古車は2万2101台で同0.3%プラスと昨年の水準を保っている。
新車をメーカーごとに見ていくと、前年同期を上回ったのはスズキ1社。他は15%近く減らしており、中でもカワサキは30%ほど減らしている。
昨年の軽二輪クラス車種別販売台数ランキングにおいて、スズキで最も販売台数が多かったのは昨年8月に国内発売された『Vストローム250SX』。ほか、『ジクサーSF250』『Vストローム250』も堅調で、今年もその勢いを維持しているものと思われる。
30%近くダウンしたカワサキだが、ジャパンモビリティショー(JMS)やモーターサイクルショー(MCS)で注目された『W230』『メグロS1』が今年秋以降に発売予定であることがアナウンスされている。両モデルともレトロな雰囲気を持つが、中でもW230は2017年に生産が終了されたが今も根強い人気を誇る『エストレヤ』を彷彿とさせるモデルだ。
秋以降という発売が年末近くにまで後ろ倒しされてしまうと販売台数の上乗せは難しくなるだろうが、各ショーで注目度の高かったモデルだけに、発売されれば販売ランキングの上位を狙えるかもしれない。そんな可能性を秘めているモデルだと言えよう。
気になるのが、ホンダだ。3か月の累計で7418台と、約15%マイナス。『レブル250』は、昨年の販売台数で2位以下をはるかに引き離し、6年連続してランキングトップ。軽二輪クラスの顔とも言える存在。しかし、その人気がいつまでも続くとは思えない。ポストレブルに何を提案するのか。それは軽二輪クラスの課題のひとつだ。中古車も1社を除いてマイナスとなっているが、各メーカーとも落ち込みは少なく、最大でもスズキの5.2%ダウン。新車ほどはホンダに販売台数が集中しておらず、各メーカーが適度にばらけている。極端に強いメーカーがないので、逆に言えば、どこのどのモデルも勧めやすいということが言える。
次に、小型二輪クラス。こちらは1月から4月までのデータとなっている。全体的には新車、中古車ともに前年同期を上回る結果となった。新車が3万1007台で前年同期比13.0%のプラス。中古車が2万5335台で同2.7%増。
新車で気になるポイントは2つある。ひとつはヤマハ。唯一前年同期比割れで、3割以上のダウンとなっている。ただ、軽二輪クラスのカワサキと同じく、JMSやMCSで話題を集めたモデル『XSR900GP』が、5月20日に発売された。この1モデルだけで今のマイナス分はフォローしきれないだろうが、プラス要素であることは間違いない。
もうひとつはカワサキ。7割もの大幅増だ。カワサキの小型二輪クラスは『Z900RS』を筆頭に、400ccクラスを沸かせた『Ninja ZX-4』を含む『Ninjaシリーズ』、『Zシリーズ』、『エリミネーター』など人気モデルがたくさんある。それだけに、昨年同期が例外的に低かったのではないかと思ったが、過去に遡ってみると、昨年同様の数字が並んでいた。つまり今年が好調なのだ。そして、今年はNinjaの40周年。アニバーサリーモデルも発売される。今の状態をキープして年間を通して大幅増となることに期待だ。
中古車を見てみると、ホンダとカワサキがプラス。新車で3割以上のダウンとなったヤマハはマイナスながらも、1.6%ダウンにとどまっている。
小型二輪クラスと軽二輪クラストの大きな違いは、軽二輪は中古車のほうが売れているが(中古車は新車の1.7倍)、小型二輪は新車のほうが売れているということ(新車は中古車の1.2倍)。ユーザーのどのような意識が働いているのかは分からないが、より趣味性の高くなる小型二輪は新車が好まれるということかもしれない。
バイクに乗るには免許が必要。免許取得者数の増減でも、今後の傾向が見えてくるかもしれない。昨年の普通二輪、大型二輪免許取得者数をまとめたものが表3だ。これは警察庁が4月16日に公開した『運転免許統計 令和5年版』からのデータ。
最初に『新規運転免許証交付件数(新規)』と『併記運転免許証交付件数(併記)』の違いを説明しておくと、新規というのは、これまで何も免許を取得しておらず、初めて免許を交付された件数。これには、いわゆる「うっかり失効」や免許取消処分で再取得した人も含まれている。
併記というのは、これまでに何かしらの免許を持っていた人が新たな種別の免許を取得した場合の件数。例えば、普通自動車免許を持っている人が普通二輪免許を取ったケースなどだ。
新規の大型二輪免許証交付件数は483件。普通二輪は2万6462件。最初から大型二輪免許が取得できるとは言っても、さすがに何も免許を取っていない状態でいきなり大型二輪に挑戦する人は少ないようだ。普通二輪は大型二輪の54.8倍もの人数となっている。
併記でも普通二輪のほうが多いが、そこまでの差にはなっていない。併記の大型二輪免許証交付件数は7万8106件。普通二輪は16万3151件。2.1倍止まりだ。合計で24万1257件となった。前年が27万5109件なので12.3%のマイナス。
新規・併記、大型二輪・普通二輪を合計すると、男性が22万2849件、女性が4万5353件、合計26万8202件。2021年、2022年と2年連続で30万人を超えていたが、2023年は26万人台にとどまった(前年比10.9%マイナス)。しかし、それでもコロナ禍で二輪が注目され始めた2020年とほぼ同数で、コロナ前の2019年よりは2万人弱多い。
表4は、指定自動車教習所の卒業者数で、免許区分を細分化したデータ。
昨年、新車国内出荷台数で原付一種を抜き、シェアが最大となったのが原付二種。同クラスにはスクーターが多いことから、普通二輪のAT小型限定が2万1903人と取得者数も多い。ATではない小型限定が7016人なので、その3.3倍だ。また、AT小型限定は2日間の講習で取得することができるが、それで取得した人は1339人。表にはないが、2日間講習の人が多かった都道府県は東京577人、大阪319人、神奈川170人、愛知110人、埼玉107人。以上の5都府県で全体の約96%を占める。
さて、軽二輪は1~3月の新車・中古車、小型二輪は1~4月の新車・中古車の販売台数データを見てきた。軽二輪・新車の1割以上のマイナスは気になるが、全体的に見れば昨年と大きな違いはない。また、二輪免許取得者数のデータでは、2021年、2022年よりは減っているがコロナ前の水準を下回るということもなかった。
先ほどは触れなかったが、ホンダのEクラッチ搭載の『CB650R』『CBR650R』、小型二輪クラスで高い人気を誇るホンダ『GB350』のバリエーションモデル『GB350C』。軽二輪・小型二輪クラスではないがヤマハの『XSR125』などの原付二種シリーズなどなど話題のモデルはまだまだある。冒頭で「始めが肝心」と書いたが、年末に「終わり良ければすべて良し」となる一年になっていることに期待したい。
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