公開日: 2024/07/10
更新日: 2024/07/15
2023年の国内における二輪車の新車総需要は、前年比0.1%マイナスの40万4572台となった。原付一種が10万台を下回り大きく台数を減らしたが、原付二種が前年の約1.5倍にまで伸び、全体で前年比マイナスながらも40万台ラインを維持した。
コロナ禍でバイクに注目が集まる中、2020年、2021年の二輪新車総需要台数は前年にプラス約3万台、プラス約5万台と大きく伸び、2021年は40万台ラインを突破した。翌2022年も前年に引き続き40万台を維持したものの、前年比マイナスとなり、バイク人気が落ち着きを見せる中、2023年の動きが注目されていた。
結果として、2022年実績を上回ったのは原付二種と軽二輪の2クラスで、原付一種と小型二輪はマイナスとなった。全体では40万4752台で前年比マイナス0.1%となったものの、520台の減少にとどまり、3年連続して40万台ラインはキープした。
昨年の大きなトピックといえば、やはり、原付一種の大幅減と原付二種の大躍進。2014年時点では、原付一種は22万8918台、原付二種は9万6249台と2.4倍ほどの開きがあった。その差が徐々に縮まり、2021年には2108台差にまで近づいたが、2022年には約3万台まで開いた。
原付二種が原付一種の台数を逆転するのはまだまだ先になるのかと思われたが、2023年にあっさり追い抜いた。それも、原付一種9万3369台、原付二種14万8646台と、5万台以上も引き離しての逆転だ。これで原付二種クラスは6年連続して10万台以上の販売台数となり、シェアも4割近くにまで上がった。
原付一種が10万台を割り込むというのは衝撃的だったが、何よりも原付二種の大きな伸びが目立つ。これは後述するが、これまで原付二種というと通勤や通学の足という印象だったが、コロナ禍以降、趣味の世界にも使われることを目にすることが非常に多くなった。そのことが、台数の飛躍的な伸びに関係しているのではないだろうか。
また、総務省のデータによると、2023年4月1日時点での原付二種の保有台数が200万9621台と、41年ぶりに200万台をオーバー(前年比3.0%プラス)。各都道府県の伸び率を見ると、飛び抜けて伸びたところはなく全国で平均的に伸びている。このことからも、一部の地域(例えば、大都市圏だけで売れているなど)で人気となって台数が伸びているのではないことが分かる。 一方、原付一種だが、2025年11月から新基準の原付一種が導入される。来年の話ではあるが、しばらく要注目のクラスとなるだろう。
軽二輪クラスと小型二輪クラスの総需要台数を見ると、軽二輪が7万1648台(前年比0.5%プラス)、小型二輪が9万1089台(同9.7%マイナス)となった。微増と1割弱のマイナスで大きな動きはないように見えるが、軽二輪クラスは2020年から4年連続して7万台以上を達成。2014年からの10年間を見ると、コロナ禍以降の好調さがうかがえる。
ただ、これは以前にも書いたが、軽二輪はホンダ『レブル250/Sエディション』が圧倒的な人気を誇るクラス。昨年も1万2000台以上を販売(二輪車新聞社推定台数)。販売台数2位であるホンダ『PCX160』の倍以上の数字だ。また、女性人気も高く、ツーリングスポットやSNSでも女性ユーザーを非常に多く目にする。
カワサキのZ900RSと同じ年に登場し、ともに6年連続して販売ランキング1位とそれぞれのクラスを代表するモデルとなっているが、このレブル人気がいつまで続くかは分からない。ポストレブルがどうなるか。販売店としては、アンテナを張り巡らせて気にかけておくべきだろう。
小型二輪クラスは1割弱のマイナス。決して小さいマイナスではないが、過去10年の中では2番目の数字だ。これもまた、決して悪い数字ではないのだ。
だからこそ、今年の動きが今後を占う上で重要となる。このまま横ばいで推移していくのか、右肩下がりになるのか、はたまた右肩上がりになるのか。まだ5月までのデータだが、全軽自協の発表している小型二輪の新車販売台数が1月から5月までの累計で3万9296台。前年同期比10.8%のプラスだ。10万台以上を記録した2022年の同時期が4万1636台、昨年同期が3万5841台。2022年に近いが、なんともまだまだどっちに転ぶか微妙な数字だ。
小型二輪クラスには、普通二輪免許で乗れるクラスと、大型二輪免許が必要なクラスがある。昨年、この普通二輪免許クラスに、ハーレーダビッドソンやトライアンフなどが参入。それらがユーザーにどう評価され、どう受け入れられていくか、それもひとつのポイントになるだろう。また、ハスクバーナやロイヤルエンフィールドなど普通二輪免許クラスで実績のある海外ブランドも多数ある。選択肢が増えることで活性化すれば、2022年同様に10万台ライン突破も見えてくる。
さて、前述したように原付二種が好調だが、その背景にあるのはツールとしての使われ方の変化だろう。今や、原付二種で下道ツーリングは珍しくはない。むしろ、頻繁に見かける。それと同じように、通勤や通学など移動の足としてだけではなく、趣味としてバイクを楽しむ。そのような事例を紹介する。
還暦を迎えた二人の男性ライダーに出会ったのは、東京郊外のコンビニエンスストア。二人はラーメンツーリングの途中だという。一人は、20代の頃にカワサキ『バリオス』に乗っていたT・Nさん。仕事で海外に赴任したのを機にバイクを降りたが、数年前に会社を早期退職して介護関係の仕事に再就職。それをキッカケにバイクにリターンし、今度は原付二種のホンダ『PCX』に乗り始めた。
「最初のうちは、家と会社の往復。通勤の足でした。でも、乗っているうちにやっぱりバイクが楽しくなり、友人とラーメンツーリングに行ったりしています。高速使って喜多方とか佐野とかに行くのもいいかもしれませんが、そこまでやると完全なツーリングで気楽じゃなくなっちゃう。高速には乗れないけど、半径20~30kmくらいの気楽かつ気軽なプチツーリングでバイクを楽しむには、125ccぐらいがサイズもスピードもちょうどいい。翌日に疲れも残りませんしね(笑)」
もう一人は、ホンダ『Vツインマグナ』からホンダ『ズーマーX』に乗り換えたH・Sさん。
「家が小平市(東京都)なので奥多摩とかが近いこともあり、マグナに乗っていた頃からたまに走りに行っていました。でも、マグナだと億劫なんですよね、クラッチやギア操作とか。もっと、のんびりと気楽に走りたい。かといって、原付一種スクーターだと制限速度は遅いし、二段階右折も面倒くさい。それで原付二種を探していて、見つけたのがズーマーXでした。コンパクトで取り回しがラクだし、エンストもない(笑)。ただ、ボディの大きなスクーターとは違い、足を伸ばして乗ることができないので長距離を走るのはきつい。また、登坂能力もマグナのようにはいかないので、奥多摩や有間ダム、多摩川の河原とか近場中心に晴れた日限定でプチツーリングしています。あと、保険がクルマと一緒にできるので、経済的にも助かっています。その分、ラーメンを食べに行った時にチャーシューを追加したりしています(笑)」
還暦を迎えても、スズキ『ハヤブサ』などビッグバイクを楽しむ人はたくさんいる。でも、そういう人ばかりではない。二人のライダーからも分かるように、気軽にバイクを楽しみたいという人に原付二種クラスは最適なのかもしれない。昨年末あたりには、ヤマハが『XSR125』『MT-125』を投入。原付二種の選択肢がどんどん増えている、大きなバイクに乗る人にセカンドバイクとして提案するのもいいだろう。
原付一種を追い抜き、トップシェアとなった原付二種の可能性はまだまだ広がりを見せている。しばらくこのクラスの好調さは続きそうだ。
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