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【人機魂源】ヤマハモーターサイクルをデザインするGKダイナミックスの現在・過去・未来とは<前編>

公開日: 2024/07/30

更新日: 2024/08/30

世代を超えて賛辞される「デザインのYAMAHA」。美しい名車を生み出し続けるGKデザイングループとはいかなる企業、デザイン集団なのだろう。第1回目は上席執行役員の青木省吾さんにお話を伺った。

ヤマハの対等なパートナーシップは70年に及ぶ

GK(現GKデザイングループ)は1952年に東京藝術大学の小池岩太郎助教授の師事によって創業し、今年で72年目を迎えるインダストリアルデザインの老舗企業である。

GKデザイングループ(現在は国内8社、海外3社)は創業時からヤマハ楽器やモーターサイクル、キッコーマンのしょうゆ卓上瓶や大阪万博のストリートファニチュア(街路設備)、最近では成田エクスプレスや日本科学未来館の地球のディスプレイ、野球選手のヘルメットなど、その企業活動は多岐に及んでいる。我々は日常においてGKGKデザインと思わぬ接点を持ちながら生活している。

ヤマハモーターサイクルのデザインをしているのがGKダイナミックス。1989年に分社化された際に現在の社名に変更された。1955年に製作された名車YA-1から今日に至るまで、我々の知るヤマハモーターサイクルの大ヒットモデルはGKダイナミックスの手によるもの。ここで付け加えておきたいのは、GKデザイングループとヤマハ発動機に資本関係はないということ。このGKとヤマハの対等なパートナーシップは70年に及ぶ。世界中のブランドを見ても、このような事例は珍しい。

「人機魂源(※別表で詳細を提示)というGKデザイン独自の思想があります。なるべく車体や部品をコンパクトな集合体として形成し、人が乗った時に車体デザインを完成させる。大切なのは走るライダーの世界観と疾走するバイクの生命感。人と道具の関係性を追求して身体と精神の拡張から、彩りあるライフスタイルをデザインする…。そんな理念を強く掲げていたのが1980年代後半でした。現在ではモノ(機械)中心からヒト(人間)中心の考え方になってきています。時代の流れの中において人がどうあるべきか、どう変化するのかに重点を置いています」

CMFという表現がある。これは10年以上前にヨーロッパで生まれたデザイン用語のこと。工業製品の表面(サーフェス)を示す。COLOR(色)・MATERIAL(素材)・SINISH(仕上げ)の3つの要素の頭文字をとっている。

「クルマの世界などではCMFと言われるんですが、我々はCMFGという表現を敢えて使っています。GとはGRAPHIC(グラフィック)を示しています。YA-1の頃からヤマハさんはカラーを大切にするメーカーなので、造形とカラーのチームは同じボリュームで仕事をさせていただいています」

ここで思い出されるのがSR400とSEROWである。CMFGの変更をメインに販売を続けたロングランモデル(SRは42年、SEROWは35年)だ。

「小話的になってしまうんですが、SEROWは250へのモデルチェンジ年にイメージカラーのグリーンを敢えて使わなかったんです。色を同じにしてしまうと、旧モデルとの比較の話ばかりになってしまう。全くのニューモデルとして捉えて貰いたいので、スタッフミーティングで『よし、緑はなしでいこう!』と。翌年からはイメージカラーですから、ちゃんと復活させましたけど」(笑)

ロングランモデルのグラフィック変更と、MTシリーズなどにおける独自のアプローチ。ヤマハモーターサイクルが2000年代から他社と迎合しないモデルを数多く発表していることはユーザーも周知であろう。次号はGKダイナミックスが目指す、新たなフェーズについてお届けする。

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