公開日: 2024/07/30
更新日: 2024/08/26
一律の料金設定で「整備はコレ」というのも店の方針として当然ありだが、それぞれのニーズに合わせて柔軟な対応ができるメニューを用意する、というのもひとつの考え方だ。
「BDSバイクセンサーなどを通して、九州や四国など遠方のお客さんに販売することが今や普通になりました。また、ネットの個人売買に慣れている人が増えたためか、現状渡しのような車両を求める人も増えてきています」
こう話すのは関東の販売店A。この店の本音としては、何かトラブルがあった時にフォローができるよう、あまり遠くのユーザーには売りたくないというもの。ただ、ネットに載せるとすぐに買い手がつくような人気車種やレアなものだと、近隣以外からも問い合わせが来る。その時、できるだけ不安(機械モノなので100%大丈夫ということはない、という意味)なく乗れるよう、なるべくベストなコンディションで届けたい。そのためしっかりと整備したいということを伝えると「整備はしなくていいです」と言われるのだという。
当然、整備をするかしないかでユーザーが支払う金額は変わってくる。しないほうが、もちろん安い。基本、現状渡しの個人売買サイトを見てみても、一般的な中古車相場よりも割安感のある価格設定となっていることが多い。「とりあえず、何でもいいからバイクを安く手に入れたい」という人なら、現状渡しを望むのも分かる。
では、「整備しないでいい」という人は、安ければなんでもいいという人なのだろうかというと、それは分からない。中には整備の心得があり、自分でレストアしたいからベース車両が欲しいという人もいるだろう。実際、個人売買サイトでボロボロのベース車両を手に入れ、時間をかけて自分でコツコツとレストアし、ピカピカに仕上げて乗っているという人もいる。
ただ、店としては販売する以上、なるべくバイクにトラブルが起きないようにしたいもの。現状渡しを条件に販売しても、トラブルが起きれば「〇〇で買ったバイクのエンジンがかからなくなった」などとSNSで書かれてしまうこともある。
では、どうするか。ここで、ある店の取り組みをベースにしたアイデア「ステップごとの整備メニュー」を提案する。
これは、冒頭の店とは違う店で聞いた話。
「ネットに掲載した段階だと細かい整備はしておりません。商談がまとまったあと、納車できる状態に仕上げます。基本的な整備料金や項目はありますが、お客さんの要望に合わせて、そこから増減します」
整備項目はこれで料金はこう、というのではなく、現状渡しに近い状態を希望される場合は、項目を減らして料金も安くするという感じだ。これを体系化して整備メニューにする、というのが提案内容。
例えば、段階別にステップ1、ステップ2、ステップ3のように分ける。ステップ1なら『ココとココ』、ステップ2ならステップ1に整備項目をプラスして内容を充実。ステップ3ならステップ2にさらに整備項目を加えて内容を一層充実させるという具合だ。
このように分けることで、要望に合わせた整備メニューを提案できる。ただ、その場合、『ステップ1だとココは整備しないので、〇〇のような問題が起きる可能性がある』ということを、言葉と書面でリスク面を伝える必要がある。ユーザーから理解を得ていないと無用なトラブルに発展する可能性があるので、そこはしっかりと押さえておかなければならない。
前述したように、『安ければ何でもいい』という人もいれば、『レストアのベース車両に』という人、ほかにも『整備料金がプラスされると、予算をオーバーしてしまう』という人、逆に『安心して乗りたいのでしっかりと整備された車両が欲しい』という人もいるだろう。一律の料金設定で「整備はコレ」というのも店の方針として当然ありだが、それぞれのニーズに合わせて柔軟な対応ができるメニューを用意する、というのもひとつの考え方だ。
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