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整備・点検の入庫先、約3割が購入先以外を選択

公開日: 2024/08/26

更新日: 2024/08/26

自工会が4月に公開した『2023年度 二輪車市場動向調査』のなかに『点検・整備の入庫先』に関する興味深いデータがある。ユーザーと継続した付き合いができれば、乗り換えや増車などの需要が期待できるだけに、入庫先としてどこを選んでいるかは気になるところ。集計データのほか、ユーザーの実際の声もいくつか紹介する。

バイクを購入した中古車取扱店に点検・整備で入庫するのは半数以下の45%

■グラフ1/購入二輪車の整備・点検の入庫先 出典:自工会『2023年度 二輪車市場動向調査』
■グラフ1/購入二輪車の整備・点検の入庫先 出典:自工会『2023年度 二輪車市場動向調査』

「親子三代にわたり、ウチでバイクを買っていただいているお客さんが何人かいます」

老舗販売店であれは、たまに聞く話である。これはユーザーと信用・信頼に基づく良好な関係性を築き、購入後のアフター面においても継続的な付き合いができているという証でもある。単発的に買ってもらうだけでは、3代にわたって顧客でい続けて貰うことは難しいだろう。

ユーザーから選ばれる店になるための取り組みについては、取り上げる機会も多いが、それとは逆の視点、つまりユーザーが店を選ぶ基準は何なのか。それを知ることも重要な要素である。そのヒントとなるのが、自工会が4月17日に公開した『2023年度 二輪車市場動向調査』の『点検・整備、カスタマイズ』に関するデータ(グラフ1)。

これは、購入先に点検や整備で入庫しているかどうかをまとめたもので、結論から言えば約7割のユーザーが購入先に持ち込んでいるが、残りの約3割は購入した店とは別のところに持ち込んでいる。

業態別に見ると、メーカー専売店で購入したユーザーは77%と8割近くが購入先に入庫しているが、中古車取扱店は45%と5割を切っており、業態によって大きな差があることが分かる。

中古車取扱店を詳しく見ていくと、「購入先に入庫」が45%、それとほぼ同じ41%が他の中古取扱店に持ち込んでいる。新車であれば、どこの店で買ってもモノは同じ。しかし、中古車は一物一価。2つと同じモノはない。走行距離だったり、年式だったり、使われ方だったり、全てが違う。これは推測の域を出ないが、ネットで欲しいバイクを探したけど近くの店には在庫がない。でも、遠方の全く知らない店には、自分の希望に合致したバイクがある。そうなると、その店で購入するという人も少なくはないだろう。

そうしたユーザーが、点検や整備のために、購入した店に行くだろうか。もちろん距離にもよるだろうが、おそらく近くの店に依頼するものと思われる。それが、中古車取扱店の購入先以外に入庫の割合が高くなっている理由のひとつであると考えられる。

「お店の人の対応が良い」を入庫理由にあげたのは、中古車取扱店で購入したユーザーの6割

■グラフ2/入庫先選択理由(複数回答)、■グラフ3/購入先に入庫しなかった理由(複数回答)
■グラフ2/入庫先選択理由(複数回答)、■グラフ3/購入先に入庫しなかった理由(複数回答)

前段の、中古車取扱店の「遠くで買って近くで点検・整備」という推測のヒントとなったのが、グラフ2の『入庫先選択理由』。入庫先別で購入先と購入先以外を比較すると、購入先の中古車取扱店は「訪ねるのに便利な距離」が27%なのに対し、購入先以外だと40% 。同項目において、その他を除けば、購入先と購入先以外で最も差が開いている。

そして、冒頭で『信用や信頼』に触れたが、そこにつながるものと推測されるポイントが、「お店の人の対応が良い」という項目。購入先の中古車取扱店ではそこが最も高く61%。項目別で見ると、購入先も購入先以外も順位にさほど違いはないが、購入先の中古車取扱店に注目すると、「お店の人の対応が良い」が飛び抜けて高いのが分かる。他の項目の倍以上なのだ。

モノを売って終わりでは、冒頭でも記した、3代にわたって顧客でい続けてもらうことへの期待は至難の業だろう。しかし、接客応対で好印象を与えることができれば、継続した付き合いにつながるかもしれない。

最後に、『購入先に入庫しなかった理由』(グラフ3)。業態別による大きな違いはないが、メーカー正規販売店「お店の人の対応が良くない」が11%と他に比べて高いのがやや気になる。どのような対応が「良い」と判断されるのか。また、逆に「良くない」と判断されるのか。これは、これからさらに店やユーザーからの話を聞き、分析していきたい。

ユーザーの声を紹介!

左からN・Aさん、E・Aさん
左からN・Aさん、E・Aさん

ここまでは項目の選択による回答だが、実際、ユーザーは点検や整備の入庫先をどう決めているのか。6人に話を聞いた。

N・Aさん 40代・会社員・埼玉県
愛車:BUELL LIGHTNING X1


長崎で買ったので点検などは家の近くにお願いしています
点検や整備は、買った店とは違う店で対応してもらっています。自宅は埼玉なのですが、買ったのは長崎の店だったので。どうしてもビューエル・ライトニングX1に乗りたくて、探して探して探しまくって、やっと見つけ、九州から運んでもらいました。今となってはあまり見ないバイクなので、本当なら買った店にお願いしたいのですが、あまりにも遠くて行けません。近くの店をいくつか回り、ビューエルを見てくれる店にお願いしています。

自分でもオイル交換などできることはやっています。ある程度いじれるようにならないと、ツーリング先で何かあった時、知らない店にいきなり駆け込んでも「ウチじゃ無理」とか言われたりするので。

E・Aさん 40代・埼玉県
愛車:HONDA REBEL250


ホンダのバイクはホンダに見てもらうのが一番!
買った店は家から少し離れているのですが、初めてのバイクだし、どこに頼んでいいのかも分からないので、購入したお店に全てお任せしています。やっぱり、ホンダのバイクはホンダのお店で見てもらうのが一番かな、と。バイクにはまだまだ慣れていませんが、夫(ビューエル)と片道100kmないような日帰りツーリングを楽しんだり、バイクに乗っている女性の友だちと一緒においしいものを食べに行ったりしています。

もう少し乗るのに慣れてきたら、ハンドルやマフラーを社外品にするなど、ちょっとカスタムしてみようかなと考えています。それも、買ったお店に相談しようと思っています。

T・Nさん 50代・会社員・埼玉県
愛車:HONDA PCX125


近くに安心してバイクを任せられる店を見つけました!
購入した店は家から1時間ほどのところ。予算や年式などの希望に合ったバイクがあったので、そこで買いました。ただ、そのお店、対応はいいのですが、見積もりとかは全くなく整備の腕も「?」でした。なので、軽い整備は基本的に自分でやっています。

先日、家からさほど遠くないところに雰囲気のいい店を見つけたので、立ち寄ったのですが、スタッフも話しやすく話題も知識も豊富でした。「ここなら安心して任せられるかも」と直感的に思ったので、この先、専用工具や特殊工具が必要な整備が発生したら、その店に頼むつもりです。

nicoringoさん(左)
nicoringoさん(左)

H・Sさん 50代・会社員・東京都
愛車:HONDA Vツインマグナ


希望に合うバイクを探していたら遠くの店に…
マグナが欲しくて探していたのですが、自分の条件に合ったバイクは少し離れた店にしかなかったので、そこで購入しました。その店はバイクでも1時間以かかるところにあるので、点検や整備は近くの店にお願いしています。ただ、それは自走できる場合で、自走できなくなるようなトラブルが起きた時は、購入した店に持ち込んで見てもらおうと思います。

点検や整備をお願いしている店は、修理費が明朗かつ安価。それでいて純正部品以外も選択できる、というこちらのワガママに応えてくれる店です。言ってみれば「使い分け」ですが、バイクに乗り続けるには、こういう店に出会うことも大切だなと実感しています。

N・Aさん 40代・会社員・東京都
愛車:YAMAHA NMAX125


点検や整備は社外パーツにも詳しいバイク用品店にお任せ
ヤマハの店で購入しましたが、点検や整備はバイク用品店にお任せしています。理由は社外パーツの情報に詳しくて相談に乗ってもらえるからです。アクラポビッチのマフラーを入れたくて、いろいろ聞いた時に、バイク用品店の人のほうが色々な情報を教えてくれました。

もちろん、たまたまそういう人に当たっただけなのかもしれませんが、やっぱり、そういうスタッフと出会えるというのは、バイクライフを楽しむ上で重要なことだと思います。ただ、大きなトラブルの時は、購入したお店に頼むんじゃないかな。そこはやはり、ディーラーとして技術面で信頼していますので。

nicoringoさん 40代・佐賀県
愛車:YAMAHA YZF-R25


簡単なメンテとかはバイクに詳しい人にお願いしてます
最初のうちはお店にお願いしていましたが、今はバイク乗りの知人にメンテナンスやカスタムを頼むことが増え、バイク屋さんに行くことは以前に比べると少なくなりました。バイク仲間との日帰りツーリングでちょっと休んだ時に「クラッチが少し遠い」とかの話をしていたら「見てあげる」と言われたことがキッカケ。

ツーリングの時などに「マフラーを変えたい、こんなのがいい」とか気軽に相談できるし、「チェーン、チェックしてる?」などの指摘やアドバイスもしてもらえるので助かっています。



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