公開日: 2024/08/30
更新日: 2024/09/09
世代を超えて賛辞される「デザインのYAMAHA」。美しい名車を生み出し続けるGKデザイングループとはいかなる企業、デザイン集団なのだろう。2回目は動態コンテストデザイン部(兼)経営企画部の坂田功さんにお話を伺った。
「モーターサイクルだけが過剰に進化しても意味がないんです。人間は変わらないので。人もテクノロジーで進化すればいいんですけど、そうはならない。では何が重要かというと、モーターサイクルが生み出される過程や、そこに込められた想いです。お客様が『一緒に考えたい・作りたい』と熱望する未来が必ず来ると思うんです」
GKデザインはオンラインサロンを開き、「作る側」と「使う側」の垣根を超えた活動を展開している。
そのワークショップで製作されるのは車椅子専用の雨具や義足カバーだ。
「義足カバーなら、普通は足に似せた代替品を作るという発想になります。しかし『自分は足を失ったけれど、失った足を超えるモノが欲しい』という意見も多いです。使い手の話を聞かないと、本当に求められているものは見えない。このように「作りたいもの・欲しいものを作る」という発想で生み出された商品には愛着が湧きますし、無駄なものが無くなるんです」
モノが溢れる消費社会では、決められたサイクルの新商品を、受動的に購入する循環にユーザーがはまってしまう。モーターサイクルに限らず「商品開発のプロセスにまでユーザーが関心を抱き、本当に欲しいものだけを手に入れる」全ての工業製品がいずれはそのフェーズに入ると坂田さんは予測する。
「日本市場では相変わらず排気量ヒエラルキーが存在しています。例えばMT-09とMT-07なら、やはり大きい09を勧められる。YZF-R1を頂点とするRシリーズは、作り手が無意識にイメージを踏襲しすぎて仕上げてしまい『R1の小型版?』とユーザーは感じているかもしれない。勿論、そういった商品が人気という側面はあります。でもこの先コンテンツで画一化しないで、排気量毎の魅力をしっかりプロモーションする工夫が必要になってくるかもしれません。私は現在YZF-R25を所有していますが、小排気量ならではの楽しさが間違いなくあります」
日本市場ではいわゆるアーカイブモデルがヒットする傾向がある。しかしヤマハは他メーカーに影響されず、独自の路線を堅持している。
「良い意味で我々は無責任に1人のモーターサイクル好きとして、発言します。そんなエンジニアさんとのセッションが楽しい。デザインと機能のせめぎ合いで、時に大喧嘩になることもありますが、別会社なので問題になりません(笑)。過去の名車をリスペクトしたアーカイブモデルは個人的には好きですし、否定はしませんが、『アレに似ているから欲しい』と思われたくないデザイナー心理はあります。コミュニティのカタチが世代で決まってしまうと、新しい世代のユーザーが取り込めていないように感じています」
GKデザインのデザイナーは、比較的20代がモーターサイクルに興味を持ち、免許を取得している。
「決して若者はモーターサイクルにネガティブなイメージを持っていません。だからこそ、小排気量の魅力を上げて敷居は下げなければいけない。明解なコンセプトやマーケティングが必要です。MTシリーズは『日本からやってきたミステリアスなモーターサイクル』といったマーケティングが、ヨーロッパで好評を博しました。彼らにはメイド・イン・ジャパンをもっと誇っていいとよく言われます」
現在、GKダイナミクスではモーターサイクルのデザインに加えて、バーチャル空間の中でライディングウェアのイメージを模索中であるという。そんな未来への第一歩として、KADOYAとのコラボレーション「ココロ・クスグレ」という企画のTシャツが話題に。
近い将来、GKダイナミクスからモーターサイクルと同時にライディングウェアが発表される日が来るかもしれない。
「理想的なモーターサイクルとして思い描くのは『イヴ』(前編参照)のイメージです。自分とモーターサイクルが一体化している未来。肉体との接点に新素材を使うとか、インターフェイスでライダーの意思を反映するとか、今は未知の領域です。密接に人と機械が繋がる世界をGKデザインでは人機魂源、と表現しています。そんなモーターサイクルの『カタチ』を我々は今後も追及していきます」
人気記事ランキング