公開日: 2024/09/30
更新日: 2024/10/07
国民に対しマイナンバーカード(以下、マイナカード)の普及を進めるデジタル庁は、カードに内蔵されたIC チップをスマホで読み取る本人確認アプリ「マイナンバー対面確認アプリ」を事業者・自治体向けに開発し8月20日、無償提供を始めた。近年、対面で本人確認をする際、マイナカードの券面を偽造して利用する詐欺被害が相次いでおり、防止策として7月より開発が進められ、今回提供されることとなった。
同アプリは、事業者・自治体が所持するスマホにダウンロードし、店頭や窓口などで活用することを想定しており、対象は本人確認を必要とする金融機関や古物商などの民間事業者や自治体となる。
このアプリでは、スマホのカメラと光学文字認識機能を使い、提示されたマイナカード券面にある生年月日や有効期限、セキュリティコード、ICチップを読み取ることで、スムーズに本人確認を行うことができる。また、日時とカードの有効期限、セキュリティコードが記録としてアプリに保存されるため、確認時の正確性と効率性が向上している。プライバシーについては、個人情報や顔写真がスマホに保存されることはないため、安全に利用することが可能だ。
アプリはiOSとAndroidの両方で利用でき、電波の届かない場所で使用することも可能。ダウンロード数は初日時点で、すでに1万件を超え、一部のリサイクルショップなどでは導入を開始しているほか、銀行の口座開設でも利用が検討されている。
今回のアプリ開発に至った経緯には、偽造マイナカードによる詐欺被害がある。5月6日、大阪府八尾市の松田憲幸市議(43)は自身の公式HPで、4月30日に受けた詐欺被害について公表した。犯人は、偽造カードを用いて松田氏になりすまし機種を変更すると、そのスマホを利用し勝手に金銭を使用。225万円のロレックスの腕時計がローンで購入されるなどの被害が判明した。
マイナカードを利用した詐欺は偽造だけにとどまらない。国の関係省庁や地方自治体などの職員を名乗る人物が、電話や手紙、訪問でマイナンバー関連の手続きと騙り、口座番号や個人情報などを聞き出すといった詐欺も全国で発生。各自治体や総務省では注意を呼び掛けている。
2016年から導入されたマイナカードだが、7月末時点の保有数は約74.5%と、いまだ国民全員に普及できていない状況だ。そんなマイナカードは保険証としての役割もある。現行の保険証は12月2日をもって廃止されるが、「マイナ保険証」の利用率は7月時点で約11.13%と、国民の生活に浸透していないのが現状。最長1年間は現行の保険証を使用できるが、「マイナ保険証は必須になるのか」など、利用に関する疑問の声も上がっており、周知不足が伺える。
国民のマイナンバー政策に対する不信感はいまだ大きい。そんな中登場したマイナンバー対面確認アプリは、偽造カードか否かを正確に判別可能なため、不正利用や詐欺などに対する不安を和らげることが期待できる。今後も、国民の声に耳を傾け、安全性や利便性を向上させていくことが、マイナカードの普及を目指すデジタル庁の課題となっている。
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