公開日: 2024/10/28
更新日: 2024/11/14
前回大好評だった「250ccオフロードバイク足つき比較」に続き、第2弾企画「250ccアドベンチャーバイク足つき比較」! 今回もユーメディア湘南オフロードワールド様にご協力いただき、バイクジャーナリストの小林ゆきさんが人気車種の違いや特徴をご紹介!
“アドベンチャー”という呼び方は割と新しく、2000年以降から言われ始めました。その特徴はオフロード車の中でも少しタンク容量が多かったり、スクリーンがついていたり、荷物が積みやすいように大きなパニアケースなどを後ろまたは横に付けられたり、そういうバイクを“アドベンチャー”と呼んでいます。
まず、同じアドベンチャーの中でもエンジン形式の種類として、単気筒や1気筒、空冷、水冷、油冷などがあります。それぞれの特徴として、単気筒はドコドコと鼓動を感じ、2気筒になると少し滑らかに回転が上がっていって高速走行でも楽なのが人気だったりします。空冷は要するパーツ点数が少ないですから、メンテナンス性やランニングコストという意味では一番お安いかなというところでしょうかね。水冷はやはりエンジンを高性能にするために付いているので、エンジンのパワーが出しやすいのが特徴です。油冷に関しては、新たに開発されたエンジンモデルの一つなので、すごくコンパクトでエンジンの重さを軽くできるという利点があったりします。
エンジン型式だけでもこんなに違うんだっていうのがお分かりいただけたでしょうか。なので、これからどんな風に乗りたいというので選んでいただくといいんじゃないかなと思います。
さて、もう1つ大きな違いが「タイヤ」です。ざっくり言うと“オフロード寄りのアドベンチャー”、そして“オンロード寄りのアドベンチャー”の2系統にわかれます。オフロード寄りのアドベンチャーである「ツーリングセロー」「CRFラリー」はタイヤがイボイボしていて林道で地面を食っていくわけですが、皆さん考えてください。林道に行くまで大体オンロード走っていきますよね? 高速道路を走った時に走りやすく疲れにくいのがベルシスやVストロームなどのオンロード寄りアドベンチャーになります。
オフロードタイヤの場合、大きい方ものだと21インチ。対してVストロームなどのオンロードよりのタイヤは前後17インチ。そしてベルシス、VストロームSXは前後19/17と、ややオフロード寄りではあるんですが、タイヤの種類はオンロード寄りというような設定になっております。普段はアスファルトの上をツーリング、峠道なんかをツーリングするけれども、ちょっと気が向いたら林道行きたいよって方はVストロームやベルシスタイプを。そして、結構林道走りたいよという方はツーリングセロー、CRFなどのイボイボタイヤ、または台形ホイールのバイクを選ぶといいのではないでしょうか。
オフロード車の宿命がやはりシート高の高さ。林道やガレ場に行っても、エンジンに岩や石ころが当たらないように、あるいは丸太を越えたりするために地上高を上げてあるのがオフロード車なんですよね。またガレてるところに行くので、オンロードバイクよりサスペンションのストロークがかなり長く設定されており、それもシート高が高くなっている理由の一つです。私の身長は160cmの手足短め。皆さんが気になる足つきの不安というのは、実は足がつくかつかないかではなく、車体を支えきれるかどうか・支え切れなくて立ちゴケしないかどうかの不安だと思います。なので、大きい車両に乗る際に私がいつも確認しているバイクを起こす時の重みに注目してインプレ比較していきます!
・ホンダ「CRF250ラリー」
シート高830mm、乾燥重量が153kgです。私の腰の位置ぐらいにシートがあるんですけれども、乾燥重量が153kgということでハンドルを持ってバイクを直立させるのに難なく起こせるかどうかということなんですが、全然重くないしサスペンションがよく動きますね。なので、実際のシート高よりもまたがってしまえば沈みそう。
ではまたがってみましょう。皆さんまたがる際はしっかり片足で支えられるかどうか、シートの幅を気にしてみてください。では行きます! まずサイドスタンドのまままたがってみますが・・・・いけちゃうんですよね! 左足はつんつんなんですけれども、右足はステップに乗っかっていて、車両がすごく軽く感じられます。では直立させますが、あんまり腕に力を入れてなくてもしっかり立てられます。多分初心者さんでもコツさえ掴んでしまえば不安はないと思います。続いて、大事なサイドスタンドが払えるかどうか。CRFの場合はバネに足が引っかかるのですがバネが硬くてなかなか払いづらい・・・。でも出すのは楽ちんです!
・「CRF250ラリーS」
シート高が885mm、乾燥重量153kgです。
これは難関ですね(笑)。もう私のウエストよりもシートが高いんじゃないかな。これはまたがった後にサイドスタンドを払えないのですが、まずサイドスタンド状態でまたがってみます・・・またがるというより足を掛けている状態ですね。もちろん足はステップにつきません。乗り込んでしまうと足がブラブラして支えられないのでこのまま起こせないですね。こういう時はサイドスタンドを払ってから乗るんですが、これもコツがあって、ハンドルを右に切るとちょっとシート高が低くなったり、支えやすくなったりします。
では足を踏み変えるんですが・・・・・・すごく滞空時間が長いですね、もう一回やってみますか(笑)? 足はほとんどついていなくて、バランス感覚だけで足の踏み替えをやりましたので、身長160cmで足が短めの人が、普段これを乗りこなすのは厳しいかなという気がいたします。大体170cmぐらいあれば何とかいけるかな? といったシート高です。
・YAMAHA「ツーリングセロー250」
シート高830mm、乾燥重量が133kgです。私が普段乗っているGPz900Rでもシート高が790mmしかないので、それより4cmも高いのかと思うと随分大きいなというのと、やはりオフロード車ですから、ハンドル位置が結構高いですね。そしてこちらは空冷なので乾燥重量133kgと軽いんですが、実際に起こしてみると・・・・いや結構重い(笑) 普通のセローに装備が上側に付けられているので、重量物が上にあるなという感覚があります。
では、まずはサイドスタンドのまままたがってみますが、これは難なく真ん中に座れました。またがったまま車体を起こすのも、シートがスリムでハンドルステムと座っている位置がだいぶ短く感じるので、いきなりコンパクトなバイクに乗っているみたいです。足を踏み替えてみますが・・・・両足はつかないんですけど、片足だと親指の母指球がしっかりつきます。ではサイドスタンドを払ってみますが、スタンドの先にしっかりつま先が届くので出し入れが楽ちんです。
・SUZUKI「Vストローム250」
シート高800mm、乾燥重量191kgです。唯一前後17インチということで、かなりオンロードに近くてシート高も800mmとだいぶ低いです。横に並んでも私の腰骨よりも下にシートがあります。とはいえ、エンジンが水冷2気筒と全体的に重いんですね。また今回フルパニヤ状態になっておりますので、それを加味しながら車体を起こしてみますが・・・あれ!? 先程のセローとあまり変わらない重量感。このぐらいあって当然だよねって感じがしますけれども、恐らく重量バランスが低めにできているんだと思います。
ではまたがってみますが、シートがかなり細いですね。またがっているだけで、とりあえず片足がべったり付いています。そのまま車体を起こすのもすっと楽に起こせます。やはり重心がだいぶ下にあって扱いやすい。足の踏み替えも重心位置が下にどっしりあるので安定感があります。そしてサイドスタンドですが、ツノがしっかり出ているので、これを利用すれば難なく払える・・・! と思ったらバネは硬い。もしかしたら車両の個体差かもしれないですね。
・SUZUKI「Vストローム250SX」
シート高835mm、車両重量164kgです。単気筒なのでやはり車重は軽くなりますね。シートを上から見ると幅が結構広いので、長距離ツーリングが大分楽なんじゃないかなと思います。タンデムシートも広くなっているので、それを見越したシートになっているのかな。では直立させますが・・・・あれ? こんな重かったっけ? タンク位置が高い分、重量感がありますね。
ではまたがってみますが、意外と本格的なオフロード走行のポジションです。左側にオフセットしてないと足がつきません。ここから足を踏み替えていきます。では右側に踏み替えますが・・・一瞬足が付かない時間があるので初心者の皆さんはぜひバランスボールを使って体幹を鍛えるといいと思います(笑)。サイドスタンドはツノが出ているのですが、片側にオフセットしていないと立っていられないので届くのかな・・・そういえば以前試乗会で乗ったときに届かなかった気がします。はい、届かないですね(笑)。この場合はツノを自分の体格に合わせて改造してもらうといいんじゃないかなと思います。
・KAWASAKI「ヴェルシス250」
シート高815mm、乾燥重量175kgです。見た目が本当に250cc? っていうぐらいボリューム感があります。タンク容量も17Lということで、他の250ccバイクよりも随分入りますね。では車体を起こしますが、17Lタンクがこんな高い位置に付いているとちょっと重いかな・・・? あんまりガソリンが入ってる音はしませんが、腕だけだとやや重いので腰をシートの横に付けて全身で起こします。
続いてサイドスタンドのまま、またがってみましたが意外と真ん中に座ってもギリギリ片足のつま先がつきますね。ヴェルシスも重心位置がだいぶ低めにあるので、どっしりと安定した感じがします。では足を踏み替えますが、シートが丸っこいので足がつかない時間はありますけれども、しっかり真ん中に重心を取ってあげることで安定します。サイドスタンドは随分下の方にツノがついていますが、バネがすごく軽いので、私の短足でも何とか出し入れすることができました。
ということで、簡単ではございますが色々比較をしてみました! まだまだ言い足りないところたくさんあるんですけど、例えば正立、倒立フォーク、キャスターなどもハンドリングに大きく影響していきます。
今回オフロードワールドさんに場所をお借りしましたが、林道にたくさん行ってみたいという方はオフロード寄りの車両を、そしてあんまりオフロードに行かないけどスポーツバイクを連携するよりは楽だよねっていう意味で選ぶ方はオンロード寄りのバイクを選ぶといいかもしれません。これから初めてバイクを買う際や久々に乗る際には是非実車に触れて選んでいただきたいですね!
今回は250ccアドベンチャーバイク足つきインプレ比較でした!
●撮影協力:ユーメディア湘南 オフロードワールド様
【小林ゆきさん略歴】
横浜育ちのバイクブーム世代。バイク雑誌の編集者を経て、現在はフリーランスのライダー&ライター。バイクを社会や文化の側面で語ることを得意としている。愛車は総走行距離25万kmを超えるKawasaki GPz900RやNinja H2など10台。普段から移動はバイクの街乗り派だが、自らレースに参戦したり鈴鹿8耐監督を経験するなど、ロードレースもたしなむ。ライフワークとしてマン島TTレースに1996年から通い続け、モータースポーツ文化をアカデミックな側面からも考察する。
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