公開日: 2025/02/19
更新日: 2025/02/19
二輪販売店をオープンし、同時にスキーのインストラクター業にも取り組むという、まさに二足の草鞋状態。その後、ジェットスキーでのトーイングサービスもビジネスとして始めるなど、一般的な販売店とは趣を異にする展開。また、6年前には店舗2階に本格的なカフェをオープン。言わずもがなの相乗効果を生んだ。楽しそうに話をする渡部代表だが、そんな同氏の頭の中には、この先のさらなる壮大な計画があった。
「カフェを併設している二輪販売店があります。地域の人から人気が高いので、面白い話が聞けると思いますよ」
ある業界関係者からの話である。アポイントを取り、その数週間後には店内にいた。埼玉県さいたま市岩槻区にあるメカニカルスポーツNABE(渡部芳亮代表 以下NABE)は、中古車販売を主体とする二輪販売店。カフェの併設は、奥様である恵子さんが、かつてパティシエとしてショップを経営していたことが影響している。これについては後述する。
取材時はちょうど看板リニューアルのタイミングであったため、絵的には残念だったが、電光看板と店名の入ったバナーがそれを補っていた。店舗前で渡部代表と看板の話をしていた時、奥様の恵子さんからも説明していただいた。絶妙なバランスで、夫婦二人三脚で店を切り盛りしているのだろう、2人を見てそんなふうに感じた。
渡部代表がNABEを創業したのは、いまから29年前の1996年。学校卒業後、最初はNECのグループ会社で通信機の製造に関する仕事を行っていた。そこで3年間、サラリーマン生活を送り、二輪販売店に4年半勤務。その後、独立した。だが、渡部代表には、バイクとは別に学生時代から興じていた趣味があった。それはスキー。将来的にスキーのインストラクターになる計画を立てていた。ただ、ウィンタースポーツであるスキーは冬場に限定される。そこで、オールシーズン楽しめる屋内スキー場を選択。詳細に記すと長くなるので割愛するが、渡部代表の経営者としてのスタートは、最初から“二足の草鞋”であったのだ。
渡部代表が最初に店を構えたのは、さいたま市見沼区。現拠点からは数キロ離れた場所。ここで10年営業し2008年、岩槻区に移転した。スキーインストラクター業については、徐々にフェードアウトしこの頃には二輪一本となっていた。
NABEのラインアップの中心は中古車。全体の7割が原付一種および二種で、残りの3割がスポーツ系車両。原付が多い理由は、地理的な要因から駅までの足として使う人が多いことが挙げられる。一方、スポーツバイクについては、二輪販売店の少ない近隣市町村からの来店が多いのが特徴。正規ディーラーはあるものの、中古車販売店の件数は少ないことが、その大きな理由だ。
「ウチぐらいの規模の店は小回りが利くのがメリットだと考えています。そこを理解されているお客さんがウチを贔屓にしていただいている。こうしたこともあり、一部、遠方からの需要を除き、実質商圏は、半径十数キロほどだと思います。先日はバイクセンサーを見たというお客さんが神奈川から来店されました。ウチまで1時間半とのことでしたが、こういうお客さんは決して少なくはありません。十分に商圏内といえるでしょう。バイクセンサー経由でのお客さんは、成約となる可能性がとても高い。仕入れた車両を掲載したら、さほど時間をおかずに在庫確認の問い合わせがあります。成約率が高いと販売計画が立てやすいので、助かっています」
新車販売については、基本的にKYMCOが主体。価格設定が比較的リーズナブルでデザイン性に優れているため、多くのユーザーから支持されている、と渡部代表。そのため在庫車はすべて捌け、年内の入荷はなし(取材時)、とのこと。
「クレームが全くないわけではありませんが、3年間のメーカー保証もあるし、何よりもパーツの供給が早い。午後にオーダーを入れ、到着は明後日だろうと思っていたら、翌日には届く。とにかく対応が早いんです。国産メーカーと比べてもそん色ないですね」
ユーザーがKYMCOの購入に至る経緯は、次のような流れが多いという。
「店内でGP125iなどのKYMCO車を見たお客さんは、『カッコいいデザインですね。これもいいな』と興味を持ちます。次にプライスカードに記してある金額が背中を押し、『これに決めます』といった感じで成約となる流れが多いですね。モノがあれば確実に売れるのがいまのKYMCO。入荷は2月頃になるので、今は在庫している国産スクーターを勧めることもあります」
かつてはその逆が多かったと思うが、いまはそのようなことは一切なくなった。国産車と比肩できるクォリティの高いバイクだと渡部代表は説明する。
販売については、新車は基本的には定価。車種にもよるが、供給体制もかつてのような状況にはないため、大幅な値引き販売という概念は覆りつつある。ある意味、正常な状況に戻ったと考えられる。また、同店では、過去に展示車等で新車登録されたが未走行の車両については、それを明らかにしたうえで、新車同様の扱いで販売している。
店舗在庫のない中古を希望するユーザーについては、オークションで予算の範囲内で探す。普通は仕入れ値を開示することはないが、例外的に是が非でも落札して欲しいという要望があり、予算を上回ってもいいという場合に限り、落札価格を開示している。そして、手数料や利益を含めた価格の上乗せ分について説明し理解を得る、というやり方だ。
こうした注文買いは、そのほとんどが軽二輪以上で多くは趣味利用のため、そこにはユーザーの「乗りたい」という強い意志が感じられる。だが原付の場合、乗れればいい、という考えのユーザーが多いため、注文買いは少ない。在庫車から選ぶケースが多いが、こうしたユーザーはバイクを雑に扱っているのかというと、決してそんなことはない。それは、渡部代表のあるひと言が関連する。
「乗り潰すことだけは避けるようお願いしています。メンテナンスも何もせずに乗っていると、必ず調子は悪くなります。壊れてから直すと必要以上に修理費が掛かってしまうこともあるので、定期的に見せていただくようお話ししています。入庫で多いのはオイル交換ですが、点検そのものは無料なので、それもお伝えし、前回の交換以降の走行距離や経過時間を考慮し、必要か不要かを伝えています。キチンと説明し理解が得られると、定期的に来てくれます。点検を受けたうえでのトラブルであれば、保証対応が可能なことを伝えるのが効果的ですね」
オイル交換にまつわる話として、2サイクルバイクから4サイクルバイクに乗り換えたユーザーに関する事例がある。4サイクルなのに、オイルを継ぎ足していたというのだ。
「クーラントのリザーバータンクにオイルを補充していたんです。なぜ分かったのかというと、オイル交換ではなく別件で来店した時、オイル交換実施の時期がとっくに過ぎていたので聞いたところ、「継ぎ足している」との回答。不安に思い、どこに足しているのか聞いたら、それがなんとリザーバータンクでした。つまり、エンジンオイルがラジエーター内を循環していたのです。お客さん曰く、『全く減らないんです』。この状態でいると、詰まった場合、冷却できなくなることを伝え、全部抜いてフラッシングを行いオイルも交換しました。そのお客さんは、理解してくれましたが、実はこういうお客さんは、決して少なくないんです。『燃料が減らない。どこかおかしいのでは』『燃料計が壊れている』というものから、『4ストって何?』という人まで様々です」
バイクに乗っていれば、大概の知識は備わっている、というわけではない。こうしたユーザーも含め、新規客はユーザー全体の6割を占める。あとは代替えだ。新規ユーザーの比率が多いということは、その人数だけ毎年、新しい出逢いがあるというわけだが、時代の変化とともに、ユーザー意識も確実に変わっているものと考えられる。これに関する見解についてはどうか。渡部代表が二輪販売の仕事に就いた頃と比較し最も大きく変わったと感じるのは、「ユーザーとの関係がドライになった」ということ。
かつては店の雰囲気もアットホームで店とユーザーとの❝距離”が近かったという。けれども最近のユーザーはクール。近くまで来たので寄ってみた、という人はかなり少なくなっている。つまり、用事がないのに店に来るのが昔のユーザーで、用事がないとあまり来ないのがいまのユーザーなのだ。
これには新車の大型バイクを販売できなくなるという排気量制限が設けられたことも影響している、と推測する。
「お客さんに対しては、他で買った大型バイクでもウチで見ることはできますよ、としか言えなくなりました。古くからの常連さんは、なぜ仕入れを起こせないのかを説明すると納得してくれるし、またそこから紹介も生まれます。でも、全体的な流れとしては、新車はメーカーのディーラーで購入、といった認識ができつつあるのかもしれません」
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