公開日: 2021/07/29
更新日: 2022/09/06
千葉県野田市の清水公園で6月19日、ヤマハ・ライディング・アカデミー「大人のバイクレッスン」の女性限定レッスンが行われた。当日はあいにくの雨模様となったものの、この日が公道デビューという3名を含めた13名のバイク女子たちが、バイクの基本操作からツーリングを経験。まるまる1日、走りのイロハを学んだ。
ヤマハが現在のメニューで2015年から実施しているヤマハ・ライディング・アカデミー「大人のバイクレッスン」(以下、YRA)。これは、初心者やリターンライダーなど、二輪免許の取得はしているが、バイクに乗るのが少し不安だったり、しばらく運転から遠ざかっていたりする、運転に自信のないライダーを対象としたライディングスクール。
他に類を見ない大きな特徴は、メニューが多彩なこと。大きく分けると、オンロード、オンロード・レッスン&ツーリング、オフロードの3つ。このうち、オンロード・レッスン&ツーリングには、「親子二世代限定」「女性限定」「平成生まれの若者限定」などのコースが用意されている。
例えば、「平成生まれの若者限定」のコースを選択した場合、参加者はほぼ同年代の人たち。育った時代背景がほぼ同じなので、話しやすい、話が合う、バイク仲間を作りやすいなど、限定レッスンならではのメリットがある。「女性限定」も同様。同性ならではの、共通した話題、共通したバイクの悩みなどもあるだろう。メニューを多彩にすることで、老若男女問わず参加しやすい環境が作られているのだ。
2021年のYRAは3月からスタートしており、6月19日には、千葉県野田市にある清水公園第5駐車場にて、YRA「女性限定」レッスン(オンロード・レッスン&ツーリング)が開催された。
あいにくの雨模様となったが13名がレッスンに参加。このうち3名が、なんと、この日のツーリングで初めて公道を走るのだという。これには少々驚いた。
一部のライディングスクールのなかには、常連と思しき人が多く参加し、まるで体の一部のようにバイクを扱うような人もそれなりにいたりする。だが、今回のYRAはその対極に位置するものとなっており、参加者は、レッスン日に初めて公道を走る人、バイクに不慣れな人など、ほとんどが初心者だ。敷居が低く気軽に参加できるライディングスクール、それがYRAなのだ。
前述の通り参加者は13名。ヤマハの主催するライディングスクールなら、参加希望者も多いだろうし、もっと参加者を増やしても良さそうだが、あえてそうしない理由があった。
「YRAのレッスン&ツーリングは、毎回15名ほどの参加者です。その理由はレッスン用車両が20台(整備中、スペア、インストラクター用含め)しかないことと、それ以上の参加人数になると、参加者一人ひとりに合わせたアドバイスができなくなるからです」(ヤマハ)
車両台数のほか、今回の会場となった清水公園の面積で考えると、例えば人数を倍の30 名にすると、コース内が混雑するものと思われる。一人ひとりの距離感を保つにも、15名前後というのは、ちょうどいい人数であることが、レッスンを見ていて感じられた。前が詰まるなどの窮屈さがなく、一人ずつ走る場合でも、待ち時間が少ない。
参加者に対し、インストラクターの人数が多いのも、YRAの一つの特長だ。
「レッスン&ツーリングでは、最低でも6名のインストラクターを配置しています。3グループでツーリングに行く場合、先導とスイーパーが必要なことがその理由です。この6名のほかに、個別担当として2名のインストラクターを用意しています」
この日、転倒者が一人出たが、その参加者は他の参加者と別行動になり、一人のインストラクターが付きっきりでレッスンを行っていた。インストラクター一人に対し、参加者の人数が多くなると、このフォロー体制をキープするのは難しくなるはずだ。その意味でも、15名というのは、適切な人数だと言える。しかし、ヤマハが主催するライディングスクールだと、希望者は多いものと思うが、実際のところ、参加できる15名に対する希望者の倍率はどれくらいなのだろうか。
「この日の女性限定レッスンの倍率は5倍ほどでした。翌日(6月20日)にも、同じく清水公園でレッスン&ツーリングを行いましたが、10倍以上の希望者がいらっしゃいました」
では、レッスンでは、どのようなことが行われているのか。最初のレッスンでは、ギアを1速に落とし、クラッチをつないで前に進む。教習所の1段階でやることだ。「バイクに不慣れな人もいるから、このような感じで進めるのかな」と見ていると、レッスンが進むにつれ、レベルも上がっていく。
「レッスン内容は、4段階に分けていて、第1段階ではクラッチとアクセル操作でゆっくりと進む(車速の調整)。第2段階では、車速が調整できる様になったら足を着きながらなるべく小さく曲がる。第3段階では、ステップに両足を載せて、アクセル、クラッチ、リヤブレーキを使いながら小さく曲がる。第4段階では、2速ギアで少しスピードを上げて半クラッチを使用しながら小さく曲がる(オプション)。これらのことを、学んで頂きます」
レッスンは午前の部、昼食を挟んで午後の部となっており、午後になると、最初にしたクラッチをつないで前に進むというレベルではない。幅5mほどだろうか。その幅でUターンする内容も組み込まれていた。
「それは『低速バランス走行』ですね。皆さんが苦手なUターンの練習とも伝えております」
足は下についてもいいのだが、ハンドルをちゃんと切らないと曲がれない幅。ベテランライダーでも、片側1車線の道でのUターンは苦手という人は少なくない。雨の中なら、なおさらだ。それを参加者たちが、次々とこなしていく。
もちろん、『こなせる』には理由がある。新しいレッスンに進む前に、どういうことをやり、どう操作するのかを説明するのだが、それがとても理解しやすい。
「説明する時は専門用語を使わず、分かりやすい例えを用いて説明しています。また、分からないことがあったら必ず質問してくださいとも伝えています。走行では、発進時、慣熟走行時にアクセル、クラッチ、ブレーキ操作が丁寧に行われているかどうかを特に重視しています。理由はその後のレッスンで暴走や転倒に繋がるからです」
説明が分かりやすいことに加え、実際の走行でも無理をさせていない。低速バランス走行において、「曲がりきれない時はオーバーしても良い」と伝えていた。できなくても良いのだから、体に変な力が入ることもない。結果、ベテランライダーでもイヤがるUターンを、バイクに不慣れだった参加者たちがわずかな時間でこなせるようになったのだ。
一通りレッスンが終わったら、片道10㎞ほどのツーリング。その後、トークタイムが設けられ、バイクでの夢を一人ずつ発表した。ここで参加者の声をいくつか紹介する。
「基本の技術をじっくり学べた。ひとりで公道デビューするのが怖かったけど、今回のレッスンで公道を走れて良かった」
「教習所ではなかなか教えてもらえなかった乗り方のヒントを、たくさん教えてもらえた」
「何とかツーリングできるまでになった」
「忘れていたことや、いつの間にか乗り方に癖がついていたことに気づけた」
「改善点など、個人個人に合わせて具体的に指導していただけた」
丸一日、YRAを見ていたが、ぎこちなかった発進が滑らかになったり、コーナリング時の視線がちゃんと行き先を見るようになったりと、参加者全員のライディング技術が向上しているのを、そこかしこに感じられた。
今、バイクはパーソナルな乗り物として注目されている。今後もこの流れを維持していくためにも、YRAのような安全運転の啓蒙活動は二輪業界の取り組むべき最重要課題の一つだ。
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