公開日: 2021/12/27
更新日: 2022/12/20
「この冬はラニーニャ現象の影響により寒さが厳しくなるかもしれません」。これは、11月~12月にかけて放送された報道番組のなかで多くコメントされたフレーズである。このラニーニャ現象とは、どのようなメカニズムなのだろうか。今回は、この現象が日本の気候に与える影響について見ていく。
気象庁は11月10日、「ラニーニャ現象が発生しているとみられる」と発表。また、同月24日には、『向こう3か月の天候の見通し(12月~2月)』を報告。気象庁異常気象情報センターでは、「気温は東日本で平年並みか低く、西日本と沖縄・奄美で低い。降雪量は東日本の日本海側で平年並みか多く、西日本の日本海側では多い見込み」と伝えた。さらに、12月10日には「ラニーニャ現象が続いてみられる」とも発表している。
このラニーニャ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近からペルー沖にかけて、海面水温が基準値より0.5度以上低くなり、その状態が1年程度続く現象のこと。反対に、同海域の海面水温が高くなることをエルニーニョ現象と言い、それぞれ数年おきに発生する。この2つの現象は、世界中の天候に影響を及ぼすと考えられており、日本では、ラニーニャ現象が発生すると暑夏寒冬に、エルニーニョ現象の時には冷夏暖冬になる傾向がある。
日本の気候に影響を及ぼすメカニズムは、まず太平洋熱帯域で吹いている貿易風の勢力拡大から始まる。ラニーニャ現象はこの風が強まった時に起こり、暖かい海水をインド洋から太平洋熱帯域西部にかけて蓄積させる。水温が高くなると海水の蒸発量は多くなり、東南アジア周辺では積乱雲が活発に発生。すると、それらはユーラシア大陸上空を流れる偏西風を、インドや中国付近で北へと押し上げる。この時、大気には蛇行する性質があるため、日本に向けて南下を開始。その結果、冷たい空気でできたシベリア高気圧が日本側へ張り出すことで寒気が流れ込みやすくなり、平年より寒さが厳しく、雪も降りやすくなると予想されている。
ちなみに、前回は2020年夏ごろから2021年春ごろにかけてラニーニャ現象が発生。2020年12月には、新潟県の関越道で短時間の間に大量の雪が積もったことで大規模な立ち往生が起こり、上り線で1750台、下り線で350台の計2100台が巻き込まれている。この他、除雪作業中の事故も多発している。
気象庁は11月10日、近年の集中的かつ記録的な降雪による被害を受け、現時点までの積雪量と降雪量分布を示す「現在の雪」を「今後の雪」へとリニューアル。これにより、24時間前から6時間先までの予想をチェックできるようになった。
新年のツーリングに出かける人も多いと思うが、最新の気象情報をキチンと確認しておけば、立ち往生などのトラブルを事前に避けられるかもしれない。この冬は、平年以上に寒さ対策を万全にした方がよさそうだ。
1時間毎に推定した現在の積雪の深さと降雪量の分布、及び6時間先までの予測をご覧いただけます。降雪量については、3時間、6時間、12時間、24時間、48時間、または72時間を表示することができます。
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