公開日: 2021/12/28
更新日: 2022/09/06
東京都は昨年12月4日、5日の両日、東京都千代田区の「東京国際フォーラム」で、「EVバイクコレクション in TOKYO 2021」を開催した。これは、東京都が主催する初めてのEVバイクイベントで、2日間にわたって、有名人のトークショー、EVバイクによるトライアルショー、EVバイク試乗会などが行われたほか、ホンダやヤマハなどのメーカーからはEVバイクの数々が展示された。
カーボンニュートラル、脱炭素、SDGs(エスディージーズ=サスティナブル・デベロップメント・ゴールズ)など、地球環境に関わる言葉を、ここ数年で頻繁に見聞きするようになってきた。
東京都でも2019年12月に、2050年CO2排出実質ゼロに向けた「ゼロエミッション東京戦略(以下、ゼロエミッション東京)」を発表。2021年3月には、「ゼロエミッション東京戦略2020 Update & Report」を策定した。このゼロエミッション東京に掲げられた目標の中に、二輪業界に大きな衝撃を与えた内容が盛り込まれていたのを覚えているだろうか。
ICE( インターナル・コンバッション・エンジン= 内燃機関。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを指す)を搭載した二輪車の新車販売を2035年までとし、それ以降は、都内で販売される二輪車の新車は100%非ガソリン化する、というものだ。
もちろん、目標なので、それに向けた取り組みを行なっていくというものである。今現在は、47都道府県あるうちの、一つの自治体の動きに過ぎないのだが、東京は日本の首都であり、世界でも有数の大都市。その東京が舵を切れば、やがては全国的に広がりを見せていく可能性も考えられるだろう。
その、ゼロエミッション東京の実現に向けた一つのイベントが2021年12月4日(土)と5日(日)の両日、東京都千代田区にある「東京国際フォーラム」で開催された。「EVバイクコレクション in TOKYO2021(以下、EVバイクコレクション)」だ。
主催は東京都環境局で、EVバイクのイベントを東京都が開催するのは、これが初となる。時節柄、入場制限(事前あるいは当日、参加登録が必要。入場前の体温チェック、会場内マスク着用など)はあったが、入場料は無料で誰でも見に行くことができた。
バイクに関するイベントとは言っても、「東京モーターショー」「モーターサイクルショー」などの大規模イベントを見慣れた目で見ると、規模は小さい。国内外の企業が車両展示をしていたが、出展していたのは、ホンダ、ヤマハ、カワサキ、BMW、KTMジャパン(KTM、ガスガス、ハスクバーナを出展)、プロト、aidea(以下、アイデア)、トヨタ車体(四輪モデル「COMS(コムス)」を展示)と10社に満たない。それでも、話題性の高いトピックはもちろんあった。
その一つは、カワサキ。昨年10月に川崎重工業から二輪部門が分社化されて「カワサキモータース株式会社」となり、事業方針説明会が行われた。その中で、カーボンニュートラルや電動化に関することに触れていたが、EVバイクコレクションに、話題の電動モデルを2台展示。それが、2019年のEICMA(エイクマ)で公開されたEVモデル「EVプロジェクト」と、クラウドファンディングで応援を募った電動三輪車「ノスリス」。
もう一つ、大きなトピックはアイデア。同社の電動三輪バイク「AAカーゴ」は、日本郵便、日本マクドナルド、DHLジャパンなどに導入されるなど、多くの実績を誇っているが、同車のコンセプトをさらに発展させた四輪輪モデル「AA-i」を世界初公開した。AA-iは、二輪のコンパクトサイズに、四輪ならではの安心感や快適性をプラスした電動モビリティ(囲み記事参照)。これと、AAカーゴを展示した。
このほか、ホンダは「BENLY e:」「GYRO e:」「GYROCANOPY e:」のビジネスe:スクーターシリーズ、ヤマハは電動スクーター「EVINO」、電動トライアルバイク「TYE」、電動アシスト自転車「YPJMTPro」、BMWモトラッドは「BMWCE 04」「Cevolution」、KTMジャパンは「KTMSX-E5」「EE5( ハスクバーナ)」「MCE5(GASGAS)」、プロトは「GOCCIA(ゴッチア)GEV600」、トヨタ車体は「COMS」を、それぞれ展示した。
ステージでは各種ショーが行われたが、観客を驚かせたのは「EVトライアルショー」ではないだろうか。
一般の人にとってEVバイクというと、電動キックボードなど、あまりパワーがなくてスピードの出ない、ラストワンマイルの乗り物を想像する人が多いだろう。しかし、ウィリー、ジャックナイフのほか、身長以上の高い障害物を乗り越えるなど、今のEVバイクはここまでできる、という“潜在能力”を知らしめていたのだ。このショーは、4日・5日の2日間にわたり行われたので、EVバイクへの認識を改めた人もそれなりにいたものと思われる。
4日には、YouTuberの「フワちゃん」によるトークショーを開催したが、これにスペシャルゲストとして登場したのが、小池百合子東京都知事。革ジャンを羽織って登場した小池都知事はフワちゃんとトークをする中で、
「東京都の目指す未来、何年ぐらいにはこうありたい、というビジョンを描くことによって、今、何をしなくちゃならないとかが割り出されるわけです。2050年にはCO2の排出は実質ゼロということで『ゼロエミッション東京』というネーミングで取り組んでいます」と語った。
また、EVバイクのメリットや、気候変動に対してみんなのできることなどについても説明した。トークショーの途中で小池都知事は退出したが、その後もフワちゃんが観客を巻き込んで、EVバイククイズを会場全体で楽しんだ。
5日には、慶應大学教授の宮田裕章さんによる基調講演「ポストコロナ時代の持続可能な社会に向けて」も開催された。このほか、2日間ともに、出展者プレゼンテーション、実験を通して化学の面白さを伝えるサイエンスショーなどが行われた。
これらのショーは、EVバイクコレクションのサイトに動画があるので、すべて見ることができる。
前述したように、規模はそう大きくはない。だが、東京都として何に取り組んでいるのか、それを伝える機会を作ったことがポイント。こうしたイベントを通して、EVバイクへの理解、ひいては二輪車への理解が進むことを期待したい。
EVバイクコレクション in TOKYO 2021
https://evbike.tokyo/index.php#
「EVバイクコレクション in TOKYO 2021」が行われた昨年12月4日・5日、aidea株式会社(以下、アイデア)が世界初公開としてお披露目したのが、四輪の電動モビリティ「AA-i」。4日には、アイデアのマーケティング部・成田裕一郎さんによる出展者プレゼンテーションも行われた。
このAA-iは、ミニカー登録なので、二輪車免許を持っていなくても、普通自動車免許があれば乗ることができる。
大型スクリーンとルーフを備えており、雨でも濡れにくい。4つのタイヤが独立して上下するため、悪路や段差もスムーズに走ることができる。パワーロスを軽減するインホイールモーターの採用、などの特長を持つ。
サイズは全長2020mm、全幅700mm、全高1700mm。最大積載量は90kg。一充電走行距離は、30km/h定地走行値で123km、60km/h定地走行値で73km。充電時間は100Vで12時間、200Vで6時間。EVバイクコレクション開催時点では、発売時期や価格は未定。
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