公開日: 2022/02/23
更新日: 2022/09/06
日本自動車工業会は1月27日、今年初となる記者会見を開催し、2022年の重点テーマについて発表した。冒頭、豊田会長は、「今年、2年ぶりに開催されたオートサロンでは、パーツメーカーがカスタマイズやクルマの新しい楽しみ方を提案しており、そこに多くのクルマファンが集まっていた。まさに『クルマ好きのためのお祭り』だが、現場で実感したのは、多くの仲間がつながり、支え合いながら成り立っているのが自動車産業だということ」と、「原点」を肌で感じたことを明らかにした。
続いて同氏は、記者会見の前に行われた年明け1回目の理事会で、自動車業界の今年の重点テーマについて議論が展開され、5つのテーマを設定したことを発表した。
これらのテーマの中で、根幹となるのは「成長と分配」。これは岸田総理も政策の中心に据えていることでもある。自動車産業は従来、すべてのステークホルダーへの還元や分配を促進し、コロナ禍の2年間で雇用を22万人増やしているという実績がある。平均年収が500万円とすると、家計に1兆1000億円のお金を回した計算となる。近年の平均賃上げ率は2.5%と全産業トップの水準にあり、自動車メーカーの12年間の累計納税額は10兆円、株主還元は11兆円となる。従業員のみならず取引先、株主など幅広いステークホルダーに持続的に還元をしている、と豊田会長は説明する。
これをさらに広げるためには、その「パイ」を増やしていくこと、つまり成長が必要となる。成長とは、一部が富を独占するのではなく、その果実が広く行き渡り、多くの人の幸せにつなげていくために必要なもの。では、その成長をどのように実現するのか。これについて豊田会長は、こう語る。
「バブル崩壊以降、日本の経済成長は停滞し、先が見えないデフレ社会の中で、金融資産や個人貯蓄、様々な『保有』が滞留している。これを動かし、大きく回していくことが求められる。カギとなるのは『保有の回転』。いま日本には、8000万台の保有母体があり、この平均保有年数は非常に長期化しており、現在15年以上。これが10年で回るようになれば、市場規模は現在の500万台から、800万台となるのです」
これにより自動車出荷額は7.2兆円増え、新たな雇用が生まれ、バリューチェーン全体にもお金が回るようになる。税収も、消費税1%分に相当する2.5兆円の増収となる。
二輪についてはどうか。日髙副会長は、二輪は2021年暦年で対前年113%という高い成長を成し遂げ、原付一種、二種、軽二輪、小型二輪すべてのセグメントにおいても前年実績を上回った。密を避ける移動手段、密を避けたレジャーとしての有用性が認められた、としたうえで、次のように語った。
「必要なのは、若い人がライフサイクルを通じて二輪を楽しんでもらうための様々なファン作りだ。そのためにはより多くのライダーに、安全に楽しんでもらい、利便性向上に向けた取り組みが求められる。これについては現在、モトインフォを通じて自工会で展開しているが、これをさらにアピールしつつ各種モータースポーツ、エキシビションなどを多く情報発信していくことが求められる。ワンクリックでアクセスできるモトインフォを積極活用していく」
一方、かねて話が出ていた、ソニーがEV車生産を開始する件については、「新たなプレーヤーが加わることで、切磋琢磨する。新たなモビリティを開発することで、社会全体の活性化にもつながるので、歓迎したい」(三部副会長)。豊田会長は、「自動車産業に本格参入するのであれば、自工会にも加盟されるのでは。お待ちしています」と語った。
先にも述べたように、5つのテーマにおける最重要課題は「成長と分配」。今年はこの実現に向け取り組む最初の年となる。
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