公開日: 2024/06/28
更新日: 2024/07/09
日本自動車工業会(自工会)が2年に1度、実施している二輪車市場動向調査。前号では「新車購入ユーザー調査結果」と「トピック調査結果」について紹介したが、今回は「FGI調査結果」(グループインタビュー)について紹介する。
このFGI調査は、定量調査で明らかになった、ユーザーが抱く二輪車販売店への意識、バイクライフやバイクに対する考え方のほか、EVに対する意識、ニーズ、受容性などを把握するため、ユーザーに直接、話を聞くもの。より深掘りできる利点がある。グループ構成は大型二輪から原付一種までの6グループで実施した。今回は、インタビュー結果のなかから、主要な意見を抜粋し紹介する。
【二輪車に興味を持ったキッカケ】
● 高校時代にテレビ放映されていた番組を視聴した際、女性ライダーを見てカッコいいと思った(2Fさん)。
● 実家で二輪車を保有しており、特に兄の影響を受けた。高校では二輪車を持つ友人が多く、同級生と一緒に合宿で免許を取得した(3Tさん)。
中高年層を中心に、アニメやテレビドラマからの影響も受けている様子。既存ユーザーからの働きかけや影響も大きいようだ。
【販売店の期待度と満足】
● 最寄りの店舗はスタッフの印象が良くなかったので、少し離れた店で購入した。その店はスタッフの対応も良く、ツーリングイベントが充実しているので、そこにも参加している(2Fさん)。
● 店員から話しかけてくれた方が良い(4Bさん)。
● 四輪ディーラーのように、清潔感やくつろげるスペースがあると良い(6Aさん)。
排気量の小さいバイクに乗るユーザーの中には、小売店全体という括りで比較し、綺麗さや親しみやすさなどを求める傾向がうかがえる。
【情報源】
● まず価格比較サイトで確認し、メーカーHP経由でカタログを取寄せ、YouTubeでレビューを確認するという流れ(2Gさん)。
● 雑誌で候補モデルをピックアップした後、メーカーHPやYouTubeで確認。その後、ショップを訪れ、スタッフと話をして試乗を行ったうえで決めた。もし試乗できなければ、教習車と同じモデルを購入したと思う(2Tさん)。
メーカー公式HPなどから正確な情報入手が基本。ユーザー目線での乗り心地や長所短所、カスタムに関する情報、ツーリング情報などについては、YouTubeから入手するのが一般化しているのが分かる。
二輪車販売店へのユーザー意識ユーザーのバイクライフや思考の分析
【用品の購入・志向】
● ツーリング中、鹿と接触し転倒したことがある。救急車で運ばれたが、胸部プロテクターを着用していたため、一晩で退院することができた。プロテクターのないところは擦れていたことから、装着効果を実感した(1Uさん)。
● 胸部プロテクターを着用している。以前は肘や膝もガードしていたが、いまは胸部のみ。夏用のものは高いので購入を躊躇する(2Tさん)。
● 二輪車は悪者扱いされる場面も少なくない。もし事故を起こした際にエビデンスを残したいと思い、ドライブレコーダーを装備した(1Uさん)。
● ドライブレコーダーは、バッテリーの消耗が激しいことや、現保有モデルでの高速道路走行が不可であるため、装備していない(5Iさん)。
● スマホフォルダーを装備し、スマホをドライブレコーダーとして利用できると良い(4Mさん)。
排気量が大きいバイクや長距離を走るバイクほど保有・着用率は高まる。また、非装備者の中には、装備が面倒、夏は暑い、というイメージだけで考えるユーザーが多い。ドライブレコーダー保有の動機は、「事故発生時の客観的証拠を持っておきたい」がほとんどだ。
【保有に関する意向・今後の排気量志向】
● 将来、二輪車を跨ぐことができなくなったら、スクーターへの買い替えを検討する。最近は体力が衰え転倒したバイクを起こせなくなっているため、自立するバイクがいい(2Tさん)。
● 子供ができたら四輪を選ぶかもしれない。二輪車はあくまでも趣味としての位置づけ(5Kさん)。
● 将来的には子育てが終了した後、リターンライダーとして戻ってきたい(5Mさん)。
【バイクレンタル】
● レンタル料が高く、場所も不便であることが多い。事故等で傷がついた場合の費用負担等を考慮すると面倒に感じる。ただ、免許はあるけどバイクは持ってない人にとっては魅力的だと思う(1Uさん)。
● 大型のモデルを買う時にはバイクレンタルサービスを利用し確認したい。子どもが大きくなったら、レンタルして一緒にツーリングを楽しみたい(6Sさん)。
【EV二輪車に対する意識、ニーズ、ユーザーの受容性の分析 購入意向】
● 音が静かで振動がないところは、あまり好きではない。買うとしてもスクーターしか考えられない(1Iさん)。
● 航続距離が短い点に不安を感じる。インフラの整備状況も不十分(2G)。
● ガソリン車が好きなので、EV二輪車の購入は考えてない。発電(火力発電)の際、CO₂は発生するので、EVバイクが環境に良いという議論にも疑問を抱く(4Mさん)。
● EV二輪車への興味はある。ガソリン価格よりは電気代の方が相対的に安価(6Nさん)。
【EV二輪車に対する意識、ニーズ、ユーザーの受容性の分析カーボンニュートラル】
● EV二輪車の評判や販売が芳しくないなか、カーボンニュートラル実現を目指すのであれば、ガソリン車の燃費向上を目指した方が良い(3Wさん)。
● ガソリン車の燃費性能向上やリサイクル活性化等で貢献してはどうか(5Mさん)。
● EV二輪車を今以上にアピールしたほうが良いのではないか(6Tさん)。
カーボンニュートラル貢献手法としては、EV二輪車の普及促進が有効だが、一方で既存モデルの燃費改善や、企業としてのCO₂削減貢献活動などにもより一層取組むべき、との意見が見られる。一方、二輪車の燃費改善には限界があり、かつその効果は、交通部門全体の削減効果と比べても、あまり大きいとは言えない現状を理解する人もいる。
【二輪業界に対する意見】
● 若年層や女性の参入障壁を取り除くべき。特に原付二種。ワインディングロードの走行よりもデジタル化の動向に対応するため、走行性能向上の追求だけではなく乗りやすさ、使いやすさ等も考慮すべき(2Tさん)。
● 旧車に乗りたいのだが、パーツが少なく維持費も高い。現行車よりも旧車のほうが魅力的なので、検討してほしい(3Wさん)。
● エンジンの良さ、乗り心地の良さについては、今後も残してほしい(5Kさん)。
二輪車の魅力をさらに高めてほしいという意見も多い。また、業界やユーザーに対するイメージの向上、二輪車の有用性や魅力について、業界として積極的にアピールすべきとの意見も多数聞かれた。
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