公開日: 2024/06/07
更新日: 2024/06/17
日本自動車工業会(自工会)は2年に1度、二輪車市場動向調査を行っているが、先頃、2023年度の調査結果が発表された。これは新車購入ユーザーの特性や車両の使用状況、今後の購入や保有の意向などについて調査し、需要の質的変化の見通しに役立てることを目的としている。今回はFGI調査(グループインタビュー)を実施したことで定量、定性両面からユーザー動向が判明した。一部、ポイントを抜粋し紹介する。
二輪車の国内需要は、1982年度の328万台をピークに減少し、2015年度以降は30万台規模で推移。だが、2021年度には40万台に回復した。いわゆるバイクバブルである。2023年5月にコロナが5類感染症に移行した後は、コロナ前の水準に戻りつつある、という意見が支配的。ブームをブームで終わらせないためにも、新たな策が求められる。
こうした状況を踏まえ、今回の調査では、施策のヒントやEV車の認知度向上、普及促進検討のための基礎データを得ることを目的に、二輪車販売店へのユーザー意識、ユーザーのバイクライフや考え方についての分析、EV二輪車に対する意識やニーズ、ユーザーの受容性の分析など、3つのテーマからなるトピック調査を行っている。なお、回答方法は書面およびWeb回答で有効回答数は4554となった。
二輪車の楽しみ方と期待
●レクリエーション実施経験と意向
オンロードユーザーに多い宿泊ツーリングニーズ
レクリエーションの実施経験については、「日帰りのツーリング」の72%が最も高く、次いで「宿泊ツーリング」が36%、「ワインディングロードを走る」が29%となった。実施したいレクリエーションとして最も多いのは「宿泊ツーリング」の35%、次いで「日帰りツーリング」19%で、特にオンロードユーザーは「宿泊ツーリング」のニーズが多いのが特徴。「ミーティング・オフ会」「サーキット体験走行」や「海外ツーリング」「オンロードレース観戦」も多く挙がっている。「日帰りツーリング」は21年より減少しているが、19年度と同程度。「宿泊ツーリング」も21年度から若干下がっているものの、全ての項目の中で最も多い。レジャー志向の強い活動に対するニーズが高まりつつあるようだ。
(二輪車の楽しみ方情報源)
動画や二輪車専門誌、口コミ、SNSが、主な情報源
「動画サイト」が41%、「二輪車専門誌」が22%で「バイク仲間の話」「SNS」がそれに次ぐ。特に「動画サイト」は4割を超えており、モデルの紹介等を動画や個人の印象を交えつつ紹介するコンテンツの人気が高い。男性50代以下とオンロードは動画、二輪車専門誌等の他、「バイク仲間や一般ユーザーのSNSへの投稿やブログ」「その他友人・知人の話」「有名人のSNSへの投稿やブログ」など、口コミとSNS双方の活用が確認できる。
今後の意向
●二輪車乗車意向(継続乗車意向)
20~50代男性およびオンロードユーザーの継続乗車意向高く
二輪車継続乗車意向を見ると、「ずっと乗り続けたい」が52%でオンロードユーザーにその傾向が強い。「あと10年ぐらいは乗る」は27%。男性20代~50代は、「ずっと乗り続けたい」と回答したユーザーの割合が高い。その一方、「10年以内に乗らなくなる」「あと数年でやめるつもり」を合わせた割合が60代で18%、同70代以上では42%に高まる。女性の60代と70代以上も同様。年齢を意識した回答であることは間違いないだろう。二輪車継続乗車意向は前回から1ポイント上昇し、15年度と同水準。趣味として継続的に楽しみたいと考えている層は、わずかではあるが高まる傾向にある。
●今後の上級免許取得意向(取得を希望する免許種類)
大型二輪免許取得意向が高いオンロードユーザー
今後、上級免許取得意向のあるユーザーは27%、前回から3ポイント減少した。取得意向が最も高い免許は「大型二輪」の14%であるが、前回から2ポイント減少。大型二輪免許取得の意向が高いのは、オンロード軽二輪もしくは同小型二輪免許持者であった。また30代女性は「普通二輪限定なし」「普通二輪小型AT限定」の取得意向が高いことも判明した。
トピック調査ではユーザーの消費行動やレクリエーションに対する意識、業界問題に対する考え方などについて、項目ごとに意見を求めたもの。以下、8項目の概要について紹介する。
●「購入先販売店の評価」
メーカー専売店(正規販売店含む)については、「店内の広さ」、「バイク陳列の整然さ」など店舗への評価が高い。一方、「整備・修理などの技術力」への評価が若干低い。
●点検・整備・カスタマイズ
購入した販売店に依頼するケースが最も多く、メーカー専売店、正規販売店における購入ユーザーの入庫率は点検・整備で70%、カスタムで50%と多い。また、依頼理由は「店舗スタッフの対応の良さ」がトップ。メーカー専売店では「メンテナンスパック」をチョイスできることが強みとなっている様子。
●ウェア・ヘルメット
購入は、「二輪車用品専門店」「ネット通販」が中心。重視するポイントはウェア、ヘルメットともに「デザイン」「価格」や「安全性」が上位となっており、ウェアについては機能性を重視する傾向にある。「安全性」についてはオンロードユーザー、男性若年層の重視度が高い。これは70年代後半から80年代にかけてのバイクブームの頃には見られなかった傾向だ。
●イベント参加状況
70%以上のユーザーは、ツーリング等のイベントへの参加経験がないことが分かった。今後参加したいイベントは「二輪車の工場見学」「新車の試乗会」「洋用品、関連機器のイベント」「ライディングスクール」などが挙がっている。
●バイクレンタル
利用経験者は全体の1割程度で、ほとんどのユーザーは未利用。これはちょっと意外な結果である。利用者全体の70%のユーザーが「二輪車購入のキッカケになる」との意識が強く、男女若年層に多く見られる傾向。「複数の二輪車を比較検討できる」ことをその理由に挙げている。購入形態別でも、「新規」「複数所有買い替え」「買い増し」「一時中断・再購入」などを目的とした層の利用が多い。
●新型コロナの影響
二輪車の使途の変化については、従来に比べ「ソロツーリング」「日帰りのツーリング」が増加している。コロナ感染拡大がキッカケとなり二輪車を購入したのは全体の20%。特にオンロード全体の他、オフロード軽二輪ユーザーに多い。具体的な購買行動への影響としては、「購入時期を早めた」という回答が目立つ。意識面では三密回避を理由として挙げている人が多数確認できた。
●EV二輪車への意向
EV二輪車の認知度は2021年度調査からさらに向上しているが、その一方でEV二輪車の乗車経験者は前回調査から増えておらず、また購入検討意向比率も2021年度と同レベル(検討意向比率12%)。EV二輪車の購入を検討するとした場合の条件は、「購入価格の低下」「走行距離の延長」「充電の簡易化・時間短縮」が上位を占めた。
●「三ない運動」
回答者全体の認知率は50%程度。運動が盛んな時期にエントリー層であった50~60代ユーザーの認知率が高い。免許取得や二輪車購入への影響については、認知度と同様、50代ユーザーの多くが「影響アリ」と回答している。
今回の調査では、いままで実施していなかった、FGI調査(グループインタビュー)を行っている。年代別、保有免許、バイク別にグループ分けし、二輪車購入のキッカケなどについて対面でインタビューを実施したもの。これについては7月に紹介する。
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