公開日: 2022/07/29
更新日: 2022/09/06
コロナ禍により、免許取得者数の増加がたびたびニュースになっている。毎年、警察庁が公開している『運転免許統計』にもそれが表れており、特に女性の伸びが著しいことが分かった。2021年、普通二輪・大型二輪における女性の交付件数は前年比で3割以上、コロナ禍前の2019年と比べると4割以上もの大幅増となった。そのようななか最近、女性をターゲットにした取り組みに注目が集まっている。
一昨年頃からたびたび報じられていたのが教習所の混雑ぶりについて。バイク人気の高まりとともに、免許を取得する人が増加。「教習所が混んでいて予約が取れないどころか、入校すらできない」というものだった。
今ではさほど待つことなく入校できるようだが、それでも現在、教習所に通っているAさんは「前回の教習は6月22日。次の教習は7月15日です。教習の間隔がかなり空くので、バイクの感覚を忘れてしまうんです」と話す。Aさんは50代の男性。30代までホンダ・MVX250に乗っており、コロナ禍を機にモンキー125を購入したリターンライダー。モンキーで走るうちにバイクに乗る楽しさを思い出したことから、大型免許の取得を目指し、教習所に通っている。
では、実際のところ、二輪免許を取得している人はどれだけ増えているのだろうか。警察庁では毎年、『運転免許統計』を公開しているが、それを見ても免許証の交付件数が増加しているのが分かる(表1、2、3参照)。
表の説明をしておくと、『新規運転免許証交付件数』というのは、これまで二輪や四輪の免許を持っていなかった人に免許証が交付された件数。
表2の『併記免許証交付件数』は、何かしらの免許証をすでに所持している人の免許証に、新たに取得した種類が併記された件数。例えば、普通自動車免許を持っている人が、大型二輪免許を新たに取得した場合には、『併記免許証交付件数』の大型二輪にカウントされる。
普通二輪・大型二輪ともに交付件数の増加傾向が見られるようになったのは、2018年あたりから。特に伸長著しいのは女性。2021年はそれが顕著に表れており、普通二輪・大型二輪ともに前年比30%以上のプラス。コロナ禍以前の2019年と比較するとさらに伸びは大きく、40%を超えるプラスとなっている。
人数的には、男性のほうがまだまだ多い。しかし、2019年、2020年ともに女性の占める割合は14%ほどだったのだが、2021年には約16%に上がっている。データは件数なので人数ではないのだが、単純計算して人数に当てはめると、2021年に二輪免許が交付された人の約6人に1人が女性。看過できない割合となってきているのだ。
免許証交付件数における女性の割合が高くなってきている現在、女性をターゲットにした取り組みを目にする機会も増えてきている。
その一つが、MOTO TOURS JAPANの開催している、女性ライダーの公道デビュー&リターンを応援する『デビュー応援ツアー』。その名の通り、対象となっているのは、免許取得後初の公道デビューや久々にバイクに乗る女性ライダー。
モトツアーズジャパンは、レンタル819を運営するキズキレンタルサービスを含むキズキグループの旅行部門。その同社が主催するツーリングなので、自分のバイクを持っている必要はなく、参加費用の中にレンタルバイクやバイク保険、宿泊費なども含まれている。ツーリングにはアテンダントや女性スタッフが同行するほか、サポートカーも帯同。トラブルが起きた際にも安心のサポート内容となっている。また、定員は6名。大人数だと全員にスタッフの目が行き届きにくい場合も出てくることがあると思われるが、少数開催なので、その点においても心配はない。
このデビュー応援ツアーは、参加者のレベルに応じて『レベル1』『レベル2』が用意されている。よりビギナー向けがレベル1、少し運転に慣れている人向けなのがレベル2。2022年は4月から開催されており、10月までの間にレベル1、レベル2、合わせて4回の開催を予定。この8月にも、レベル1のツアーが開催される。
そして、もう一つ紹介したいのが、ヤマハが主催するライディングスクールであるヤマハライディングアカデミー(YRA) の『大人のバイクレッスン』。2022年は、オンロードのレッスンが23回、オフロードのレッスンが9回、開催予定となっている。
YRAのオンロードレッスンには、女性をターゲットにした『女性限定オンロードレッスン&ツーリング(以下、女性限定レッスン)』がある。今年は6月11日(土)に、千葉県野田市の清水公園・第5駐車場で女性限定レッスンが開催されたので、取材に向かった。
モトツアーズジャパンのデビュー応援ツアーと同様に、ターゲットとなっているのはバイクに不慣れな女性。免許取得後ほとんどあるいは全くバイクに乗っていない、以前乗っていたがしばらくバイクから遠ざかっている、自分のバイクを所有しているが操作に不安がある、そのような女性がターゲットだ。使用する車両はトリッカー。バイクのほか、ヘルメット・グローブ・ウェア類やプロテクターなどが用意されているので、手ぶらで参加できるライディングスクールなのだ。
当日は19歳から51歳まで15人の女性が参加。女性限定レッスンは様々なレッスン課題の後に、往復30分程度のプチツーリングが組み込まれているが、実際、参加者の中には、このプチツーリングが初めての公道走行という人も数名いた。
15名の参加者に対し、インストラクターが8名。2人の参加者に対して1人のインストラクター、という割合だ。参加者がインストラクターからアドバイスを受けている時も、ほかのインストラクターが残りの参加者を見ていられるので、テンポよくレッスンが進む。そして、テンポよく進むから、参加者は今覚えた感覚を忘れないうちに次のステップに進むことができる。
レッスンの開催場所は駐車場なのだが、大きなメリットとして感じたのは、コースを作るコーンの配置が自由なこと。習得してもらいたい技術に応じたコース設定が可能なのだ。レッスン中にスタッフが次のコースを作っていくので、ここでもスムーズに次のレッスンに進める。
レッスンは、クラッチをつないで発進という基本中の基本から始まる。見ていて「この状態の人たちがわずか数時間のレッスンでプチツーリングができるのだろうか」と不安を感じていたが、レッスンが進むうちに、撮影するカメラのファインダー越しにも、参加者の顔つきが変わっていくのが感じられた。徐々に不安な感じが薄れていき、こわごわと行っていた操作も開けるところは開ける、止まるところは止まるという、メリハリの効いたものになっていった。
さらに、女性限定レッスンで驚いたのは、初心者レベルのレッスンで終わらないところ。幅4~5mだろうか、そのなかで低速でUターンする小旋回。これは、ある程度バイク歴のある人でも苦手な人は少なくない。それを、何時間か前までクラッチ操作すらぎこちなかった人が次々とクリアしていく。インストラクターが多く、コース設定が自由な駐車場という2つのメリットから、小旋回のコースを5つ設置。旋回に失敗してもすぐにアドバイスがもらえ、その最中にも違うインストラクターがレッスンを進めていく。そのため、参加者は何度も課題にトライすることができる。
女性限定レッスンは人気が高く、この日のレッスン参加希望者の倍率は6倍以上だったという。カリキュラムとサポート内容を見れば、それも納得。
最後に参加者は、ライダーとしての夢をスケッチブックに書いて発表。スタート当初の緊張した面持ちとは違って、笑顔があふれていたのが印象的だ。参加した人のコメントをいくつか紹介しておく。
「1回ごとにその場で解説をしてくれるので聞いてすぐ実践できるのが良かった。ジェスチャー付きで分かりやすかった」
「不安ばかりで公道に行けない! と思っていたが、ツーリングに行きたい! と思えるようになった」
「できたことはたくさん褒めていただいた。一から丁寧に教えていただき本当に感謝です。もう少し練習して楽しく安全に乗りたい!!」
免許証交付件数における女性の割合が増えてきている今、女性をターゲットにした取り組みでバイクに触れる・乗る機会の創出は、販売店でも注力すべきポイントの一つだと言えよう。
■『デビュー応援ツアー』URL
https://www.mototoursjapan.com/ja/event2022/debut.html
■『ヤマハライディングアカデミー(YRA)』URL
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/yra/
人気記事ランキング